結論から: 厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和6年10月1日現在)では、就労定着支援事業は1,885か所(前年比+76、令和2年比で約32.7%増)、利用実人員は18,499人(前年比約12.4%増、令和2年比で約45.4%増)です。従事者は常勤換算2,965人で、このうち就労定着支援員が1,377人と、令和2年(740人)から約86.1%増えました。数字だけを見ると拡大が続いていますが、1事業所当たりの従事者は約1.57人と小さな体制が中心で、利用者の入口は他の障害福祉サービスの先にあります。法令上の細かい条件や報酬は今回は原本を取得できず「要検証」としているため、開設や営業の前に必ず公的な一次情報でご確認ください。

就労定着支援を「就職支援」と同じに見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。障害福祉サービスの就労系では、就労移行支援が一般就労に向けた訓練と就職活動を、就労継続支援が働く場の提供を担います。就労定着支援は、その先の「雇用された後」を支える別の区分です。

厚生労働省の概況の用語の説明は、就労定着支援を、生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を利用して通常の事業所に新たに雇用された障害者の就労の継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行うもの、と説明しています。

この定義から読み取れる経営上の特徴は2つです。第1に、利用者は他のサービスを利用して就職した人が出発点で、自社が直接集める対象ではなく、就労移行支援などの出口と接続して初めて成り立つ点です。第2に、支援の相手が利用者本人に加えて雇用先の企業や医療機関にも広がり、連絡調整が仕事の中心になる点です。なお、就労移行支援の事業者には、就職日から6月以上の相談等の支援の継続と、就労定着支援の希望者への連絡調整が基準省令で定められていることを、就労移行支援の記事で整理しています。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。

  • 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 令和2年1,421か所、令和3年1,522か所、令和4年1,678か所、令和5年1,809か所、令和6年1,885か所です。令和2年から464か所(約32.7%)増え、令和6年の前年比は76か所(4.2%)増です。令和2年は、令和元年の1,251か所から170か所(13.6%)増えていました。年ごとの増加幅は、令和3年+101、令和4年+156、令和5年+131、令和6年+76で、令和6年は直近で最も小さくなっています(当社計算)。
  • 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): 令和2年12,723人、令和3年14,077人、令和4年15,691人、令和5年16,460人、令和6年18,499人です。令和6年は前年より2,039人(約12.4%)増え、令和2年からは5,776人(約45.4%)増えました。事業所数の伸び(令和2年比約32.7%)より、利用実人員の伸び(約45.4%)のほうが大きくなっています。
  • 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計): 令和2年1,866人、令和3年2,037人、令和4年2,234人、令和5年2,478人、令和6年2,965人です(前年比+487人・約19.7%、令和2年比+1,099人・約58.9%)。令和6年の内訳(画像で目視確認)は、サービス管理責任者1,373人、就労定着支援員1,377人、その他214人で、地域生活支援員は調査職種外で「…」と表示されています。
  • 就労定着支援員の増え方: 令和2年740人、令和3年814人、令和4年886人、令和5年991人、令和6年1,377人です。令和6年は前年から386人(約38.9%)増え、令和2年からは637人(約86.1%)増えました。従事者総数に占める割合は、令和2年の約39.7%から令和6年の約46.4%へ上がっています(当社計算)。
  • 1事業所当たりの規模感(当社計算の参考値): 利用実人員を事業所数で割ると、令和2年約8.95人、令和6年約9.81人です。従事者総数を事業所数で割ると、令和2年約1.31人、令和6年約1.57人です。利用実人員を就労定着支援員で割ると、令和5年約16.6人、令和6年約13.4人です。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員と従事者数は詳細票からの推計値です。利用実人員は9月中、従事者数は10月1日現在で時点が異なります。上の「1事業所当たり」「就労定着支援員1人当たり」は、統計の数字を単純に割った当社の参考値であり、法令が定める配置の基準とは関係がありません。また、就労定着支援の利用延人数や利用日数は、概況では表章記号「・」(統計項目のあり得ない場合)で示され、数値がありません。利用の頻度や期間は、この統計からは分かりません。

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就労定着支援事業所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字を踏まえ、経営課題を整理します。法令や報酬の細かい条件は今回確認できていないため、数字から読み取れる範囲に絞り、断定を避けます。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①事業所は増え続けているが、増加幅は縮み、事業所間の競合が意識される局面に入りつつある

事業所数は令和2年の1,421か所から令和6年の1,885か所へ増えましたが、年ごとの増加幅は令和4年の156か所をピークに、令和5年131か所、令和6年76か所と縮んでいます。増加の勢いが落ちたことが、今後の需要の頭打ちを意味するのか、事業所の新設が一巡したにすぎないのかは、統計だけでは分かりません。ただ、利用実人員の増加(令和6年は約12.4%)が事業所数の増加(約4.2%)を上回っているため、全国平均で見ると1事業所当たりの利用者は増えています(約9.1人から約9.8人)。地域ごとの需給や、自社の周辺にある就労移行支援・就労継続支援の事業所数との関係は、都道府県などの公表資料で確認する必要があり、要検証です。

②利用者の入口は他のサービスの先にある:出口の事業所との連携が集客に直結する

就労定着支援の対象は、他の障害福祉サービスを利用して通常の事業所に新たに雇用された障害者です。令和6年の就労移行支援の利用実人員は43,383人で、就労定着支援の利用実人員18,499人は、その約0.43倍(当社計算)にあたります。ただし、就労継続支援や生活介護などの利用者も対象に含まれ、就労移行支援の利用者のすべてが就職して就労定着支援を使うわけではないため、この比率を「利用率」や「転換率」と読むことはできません。実際にどの事業所の紹介が何割か、他のサービスを運営する法人が自社内で紹介しているのかは、統計からは分からず、要検証です。確かなのは、自社の利用者が、就職先の紹介元である他の事業所との関係に左右されやすい構造だという点です。

就労移行支援の事業者には、就職日から6月以上の相談等の支援の継続と、就労定着支援の希望者への連絡調整が基準省令で定められています(詳細は就労移行支援の記事で整理しています)。紹介元の事業所がどう引き継ぐかは、利用開始の時期に直結するため、紹介元との連絡の窓口や頻度を設計しておくことが、自社の事業の安定に関わります。

③小さな体制が中心:1事業所当たり約1.6人で、欠員や退職の影響が大きい

令和6年の従事者は、1事業所当たり平均で約1.57人(当社計算)です。令和2年の約1.31人からは増えましたが、複数の事業を行う事業所は事業ごとに計上されるため、実際の体制の姿は事業所によって異なります。それでも、全国平均が1〜2人規模である以上、1人の欠員や休職が、利用者への支援の継続に直接影響する可能性があります。サービス管理責任者と就労定着支援員が別の人員として数えられている点(令和6年は1,373人と1,377人)も、小さな体制で兼務や配置をどう組むかという課題を示唆します。法令上の兼務の可否や配置の基準は今回確認できておらず、要検証です。

④就労定着支援員の確保が拡大の中心:令和6年は前年比で約38.9%増

従事者のうち就労定着支援員は、令和6年に前年から386人(約38.9%)増え、従事者総数に占める割合も約46.4%に上がりました。就労定着支援員は、概況の職種区分に独立した列として設けられた職種ですが、必要な資格や経験の要件、具体的な業務の範囲は今回の調査では確認できていません。人材の採用と育成が、事業の拡大のボトルネックになる可能性はあるものの、統計だけからは因果は言えません。自社の地域で就労定着支援員の求人がどの程度出ているか、他の福祉職との賃金差はどうかといった点は、求人サイトやハローワークの公開情報で確認する価値があります。

⑤企業・医療機関との連絡調整が業務の中心:関係づくりが成果と継続性を左右する

概況の定義では、就労定着支援は、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うことが明記されています。事業所の側から見ると、支援の成否は、就職先の企業との関係や、主治医などの医療機関との情報共有のしやすさに左右されます。雇用された人が就職先で困りごとを抱えたとき、誰がどのタイミングで企業に連絡するのかという運用の設計と、記録の残し方が、事業の質と継続性の鍵になります。個人情報の取扱いの同意の取り方や、企業への報告の頻度、様式は、事業所ごと・自治体ごとに異なる可能性があり、要検証です。

⑥報酬・利用期間・指定の要件は今回確認できていない:開設や営業の前に原本確認が必須

就労定着支援の報酬の仕組み(基本報酬、成果に応じた加算の有無など)、利用できる期間の上限、人員・設備・運営の基準、指定の要件は、法令や告示、通知で定められています。しかし、今回の作業環境からは法令検索サイト(e-Gov)にアクセスできず、原本を確認できていません。そのため、本記事では法令や報酬に関わる数字や期間を一切書いていません。収支差率や定着率、就職先の企業数、利用終了後の進路といった、経営判断に必要な値も、今回の統計(社会福祉施設等調査)には含まれていません。これらは厚生労働省の障害福祉サービス等経営実態調査や、各自治体の指定の案内など、別の一次情報で確認する必要があり、要検証です。

商談前に見ておきたい就労定着支援特有の公開情報

就労定着支援の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。

  • 運営法人と併設事業: 就労移行支援や就労継続支援、生活介護、自立訓練、自立生活援助(利用者の居宅を訪問して支える別区分)を併せて運営していると、自社内に紹介元を持てる一方、人員や記録の管理が複雑になります。都道府県などが公表している指定事業所の一覧と、事業所の紹介ページで確認します。
  • 利用者の紹介元と就職先の説明: 紹介ページや運営規程に、どのサービスの利用者を対象とするか、就職先の企業とどう連携するかがどう書かれているか。
  • 職員の人数と求人: 就労定着支援員、サービス管理責任者の人数と募集の有無。小さな体制では、求人の有無が配置の余裕のサインになる場合があります。
  • 企業・医療機関との連絡の方法: 企業への訪問や面談の頻度、記録の取り方、本人の同意の取り方が、紹介ページや公表資料にどう書かれているか。
  • 記録と請求の事務: 支援の記録、企業との連絡履歴、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
  • 公表されている自己評価や実績: 事業所が定着率などの実績を公表している場合は、その算出方法と期間を確認します(定義が事業所ごとに異なる可能性があり、要検証)。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

就労定着支援の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、就労定着支援事業が1,885か所です。前年(1,809か所)から76か所(4.2%)増え、令和2年(1,421か所)からは464か所(約32.7%、当社計算)増えています。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。

就労定着支援とは何ですか?

厚生労働省の概況の用語の説明では、生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を利用して、通常の事業所に新たに雇用された障害者の就労の継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行うものとされています。対象となる人の細かい要件や、支援の頻度・期間は、法令や通知で定められる部分があり、今回確認できておらず、要検証です。

就労定着支援の利用者や従事者は、どのくらいいますか?

令和6年9月中の利用実人員は18,499人(前年比約12.4%増、詳細票の推計)です。令和6年10月1日現在の常勤換算従事者数は2,965人で、内訳は、サービス管理責任者1,373人、就労定着支援員1,377人、その他214人です(詳細票の推計。地域生活支援員は調査職種外)。複数の事業を行う事業所は事業ごとに計上される点にご注意ください。

就労定着支援員は、どのくらい増えていますか?

令和2年の740人から、令和3年814人、令和4年886人、令和5年991人、令和6年1,377人と増えています。令和6年は前年より386人(約38.9%)増え、令和2年からは637人(約86.1%)増えました(当社計算)。従事者総数に占める割合も、約39.7%から約46.4%へ上がっています。

就労定着支援には、法令上の人員の基準や総量規制はありますか?

今回、法令検索サイト(e-Gov)から原本を取得できなかったため、就労定着支援の人員・設備・運営の基準や、指定の要件、総量規制の有無は確認できておらず、要検証です。確認の際は、障害者総合支援法、同法施行規則、指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)の現行の条文と、都道府県などの指定の案内をご確認ください。

就労定着支援の報酬や収支はどのようになっていますか?

報酬の区分や加算、収支差率は、今回の統計(社会福祉施設等調査)には含まれず、原本も確認できていないため、本記事では扱いません。最新の値は、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬の告示・通知や、障害福祉サービス等経営実態調査の公表資料で確認する必要があり、要検証です。

就労移行支援との関係はどうなっていますか?

就労移行支援の事業者には、就職日から6月以上、相談等の支援を継続することと、就労定着支援を希望する人には、その支援が終わった後に速やかに受けられるよう連絡調整することが、基準省令第182条で定められています(就労移行支援の記事で原本を確認して整理しています)。就労定着支援は、その後の支援を担う別の区分で、統計上も別の行として集計されています。

まとめ

就労定着支援事業所の経営課題は、①事業所は増え続けているが増加幅は縮み、事業所間の競合が意識される局面に入りつつあること②利用者の入口が他の障害福祉サービスの先にあり、紹介元との連携が集客に直結すること③1事業所当たり約1.6人という小さな体制で、欠員や退職の影響が大きいこと④就労定着支援員の確保が拡大の中心で、令和6年は前年比約38.9%増であること⑤企業・医療機関との連絡調整が業務の中心で、関係づくりが成果と継続性を左右すること⑥報酬・利用期間・指定の要件は今回確認できておらず、開設や営業の前に原本確認が必要なこと、の6つです。営業やヒアリングの前に、事業所の併設事業、紹介元、職員の人数と求人を公開情報で整理しておくと、論点を絞りやすくなります。