結論から: 厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和6年10月1日現在)では、就労移行支援の事業所は3,240か所で、前年より61か所(1.8%)減りました。令和4年の3,393か所からは約4.5%減で、同じ就労系の就労継続支援B型(17,973か所)が増え続けているのとは対照的です。一方、9月中の利用実人員は43,383人で前年より約12.7%増え、利用者1人当たりの利用日数は10.7日から8.5日に下がりました。基準省令は、職業指導員と生活支援員を利用者6人に1人以上、就労支援員を15人に1人以上と定め、就職から6月以上の定着支援も義務付けています。利用期間は原則2年で、「量を定めて指定」の対象にはなっていません。この記事では、公開情報から就労移行支援の経営課題を6パターンに整理します。

就労移行支援を「就労継続支援の兄弟」と同じに見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。同じ「就労系」の障害福祉サービスでも、就労継続支援A型・B型は、働く場そのものを提供し、賃金や工賃を支払う事業が中心です。これに対して就労移行支援は、障害者総合支援法第5条第14項で、就労を希望する障害者などに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識と能力の向上のための訓練などを行うサービスと定められています。目標は、通常の事業所に雇用されること、つまり出口は一般就労です。

この違いは、事業の組み立てに直接効いてきます。施行規則第6条の8は、就労移行支援の利用期間を2年間と定めています(専らあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の資格取得を目的とする場合は3年または5年)。期間に区切りがあるため、事業所は利用者を継続的に迎え入れ、送り出し続けなければなりません。さらに基準省令は、通勤のための訓練、実習の受入先の確保、求職活動の支援、就職後の定着支援を事業者に求めています。賃金や工賃の支払いを軸とするA型・B型とは、事業者が負う義務の中身が異なります。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。

  • 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 令和2年3,301か所、令和3年3,353か所、令和4年3,393か所、令和5年3,301か所、令和6年3,240か所です。令和4年をピークに2年続けて減り、令和4年から令和6年で153か所(約4.5%)減っています(増減率は当社計算)。令和6年の前年比は61か所(1.8%)減です。同じ年の就労継続支援B型が1,260か所(7.5%)増えているのと比べると、就労移行支援は減少が続く区分です。
  • 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): 令和2年40,288人、令和3年39,271人、令和4年37,887人、令和5年38,487人、令和6年43,383人です。令和6年は前年より4,896人(約12.7%)増えました(当社計算)。事業所は減り、利用者は増えたため、1事業所当たりの利用実人員は約13.4人になります(当社概算。推計値を全数で割ったもの)。
  • 利用者1人当たり利用日数: 令和2年10.5日、令和3年11.0日、令和4年11.2日、令和5年10.7日、令和6年8.5日です。利用延人数は令和5年の412,394人から令和6年の369,366人へ約10.4%減っており(当社計算)、実人員が増えたのに延べの利用が減ったことになります。この要因は今回の資料からは分からず、要検証です。
  • 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計): 令和2年13,551人、令和3年13,810人、令和4年13,837人、令和5年13,713人、令和6年13,559人で、令和2年とほぼ同水準です(令和2年比で+8人、前年比で154人・約1.1%減。いずれも当社計算)。令和6年の内訳は、職業指導員3,688人、生活支援員3,603人、就労支援員3,277人、サービス管理責任者2,489人、その他503人です。構成比は、職業指導員が約27.2%、生活支援員が約26.6%、就労支援員が約24.2%、サービス管理責任者が約18.4%です(当社計算)。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員、利用延人数、従事者数は詳細票からの推計値で、障害者支援施設が実施する昼間のサービスは除かれています。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されるため、就労継続支援や生活介護などとの多機能型の事業所は、各事業に重ねて数えられています。1事業所当たりの従事者は常勤換算で約4.2人という当社の概算になりますが、基準の「利用者6人に1人」「15人に1人」は前年度の平均の利用者数に対する常勤換算の員数であり、母数と時点が異なるため、この概算で配置の過不足は判断できません。報酬の区分、収支差率、一般就労に移行した人数、就職後の定着の状況、経営主体別の構成は、今回確認した資料からは把握できておらず、要検証です。

就労移行支援事業所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の定めを踏まえ、経営課題を整理します。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①事業所は減り、利用者は増える:利用の流れが変わる中での集客と定員の管理

令和6年は事業所が61か所減り、利用実人員が約12.7%増えました。利用者の増加が全体に均等に及んでいるのか、特定の事業所に集まっているのかは、この統計からは分かりません。一方で1人当たり利用日数が10.7日から8.5日に下がっており、1人が通う頻度が変わっている可能性があります。利用者の紹介元(相談支援事業所、特別支援学校、医療機関、ハローワークなど)、通所頻度の傾向、定員に対する実際の利用の割合は、公開資料から確認できる範囲が限られており、要検証です。個別の事業所では、見学や体験の受入状況、利用者の年齢層や障害種別の構成、休止中の枠の有無を、公開情報やヒアリングで確かめる進め方が現実的です。

②指定は都道府県知事が事業所ごとに行い、6年ごとの更新と届出が続く。「量を定めて指定」の対象ではない

就労移行支援を含む障害福祉サービスの事業者の指定は、障害者総合支援法第36条第1項により、障害福祉サービスの種類と事業所ごとに行われ、指定を行うのは都道府県知事です(同条第3項)。指定は6年ごとに更新を受けなければ効力を失い(第41条)、事業所の名称・所在地などの変更は10日以内、事業の廃止・休止は一月前までに、都道府県知事への届出が必要です(第46条)。なお、同法第36条第2項の「量を定めて」指定する特定障害福祉サービスは、施行規則第34条の20により生活介護と就労継続支援A型・B型です。就労移行支援は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。就労継続支援では都道府県の障害福祉計画の必要量を超える場合に指定が制限され得ますが、就労移行支援には同じ構図は当てはまりません。ただし、申請者が都道府県の条例で定める者(法人)であること、人員や運営の基準を満たすことなどの要件は別にあります。条例や運用の違いは、所在地の都道府県・指定都市・中核市の案内をご確認ください。

③人員基準:職業指導員と生活支援員は6人に1人、就労支援員は15人に1人、サビ管は60人以下で1人

基準省令第175条は、指定就労移行支援事業所に置く従業者を次のように定めています。職業指導員と生活支援員は、総数で常勤換算の利用者数÷6以上で、それぞれ1人以上。就労支援員は、常勤換算で利用者数÷15以上。サービス管理責任者は、利用者が60人以下で1人以上、61人以上では1人に、60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。利用者数は前年度の平均値で、新規に指定を受ける場合は推定数によります。従業者は専ら当該事業所の職務に従事する者であることが原則で(利用者の支援に支障がない場合を除く)、職業指導員または生活支援員のうち1人以上、およびサービス管理責任者のうち1人以上は常勤でなければなりません。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の学校養成施設として認定された事業所では、職業指導員と生活支援員は利用者数÷10以上で、就労支援員の定めはありません(第176条)。就労継続支援と違い、就労支援員という専門の職種が基準に置かれている点が、就労移行支援の特徴です。職種別の充足状況、有資格者の割合、賃金水準は今回の資料にはなく、要検証です。

④出口の支援が義務:通勤訓練・実習先の確保・求職支援・就職から6月以上の定着支援・毎年の就職状況の報告

基準省令は、就労移行支援の事業者に、利用者が自ら通常の事業所に通勤できるよう通勤のための訓練を実施すること(第179条の2)、個別支援計画に基づく実習の受入先を確保すること(第180条)、公共職業安定所での求職の登録などの求職活動を支援すること(第181条)を求めています。実習の受入先の確保や求人の開拓は、公共職業安定所、障害者就業・生活支援センター、特別支援学校などの関係機関と連携し、利用者の意向と適性を踏まえて行うよう努めるものとされています。さらに第182条は、利用者が就職した日から6月以上、職業生活における相談等の支援を継続することを義務付け、就労定着支援の利用を希望する場合は、その支援が終了した後に速やかに就労定着支援を受けられるよう連絡調整を行うことを求めています。毎年、前年度の就職者数その他の就職に関する状況を都道府県に報告することも必要です(第183条)。企業や関係機関との関係づくり、実習先の開拓、就職後のフォローといった地域の連携の仕事が、事業所の運営の大きな部分を占める構造です。令和6年の就労定着支援事業は1,885か所(前年比+76か所)、利用実人員は18,499人で、就労移行支援の出口に連なる事業として並んでいます。一般就労に移行した人数や就職後の定着率の全国値は今回確認できておらず、要検証です。

⑤利用期間は原則2年:入れ替わりを前提にした計画づくりと個別支援計画の見直し

施行規則第6条の8により、就労移行支援の利用期間は2年間です(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の資格取得を目的とする場合は3年または5年)。期間の延長が認められる場合の取扱いは、今回一次資料を確認しておらず、要検証です。期間に区切りがあるため、事業所は常に新しい利用者を迎え、一定の期間で送り出す流れを作る必要があります。基準省令第184条が準用する第58条により、サービス管理責任者は個別支援計画の作成後にモニタリングを行い、就労移行支援では少なくとも3月に1回以上(第58条の「六月」を「三月」と読み替え)計画の見直しを行います。利用者の障害種別や状態に合わせた訓練計画の作成と見直しを、サービス管理責任者や就労支援員が日々の記録とともに回す構造のため、記録と計画の事務が積み上がりやすい業務です。実際の1人当たりの所要時間や、2年の期間内での移行率の分布は今回の資料にはなく、要検証です。

商談前リサーチ、会社名だけで10分

会社名を入れるだけで、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きでAIが自動リサーチします。

1社無料でお試しする

⑥就労選択支援の新設と、報告・検査:周辺制度の変化への対応

障害者総合支援法の現行の条文には、就労選択支援が定められています(第5条第13項)。就労移行支援や就労継続支援を利用する意向を持つ人などに対して、短期間の生産活動などを通じて、就労に関する適性、知識、能力の評価と、就労に関する意向などの整理を行い、関係者との連絡調整などを行うサービスです。基準省令第173条の6は、就労選択支援を行う事業者を、就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に3人以上が新たに通常の事業所に雇用されたものなど、就労支援の経験と実績があると都道府県知事(指定都市・中核市は市長)が認める事業者としています。就労移行支援の側にも、計画相談支援を行う者と連携して、利用者に定期的に就労選択支援に関する情報提供を行う定めがあります(第183条の2)。令和6年の社会福祉施設等調査には就労選択支援の区分がなく、事業所数や運営の実態は今回確認できておらず、施行の時期を含めて要検証です。このほか、基準省令第184条が準用する規定により、苦情の解決、虐待の防止、身体拘束等の禁止、事故発生時の対応、感染症や非常災害時の業務継続計画の策定などが求められます。都道府県知事または市町村長は、必要があると認めるとき、事業者に報告や帳簿書類の提出を命じ、事業所に立ち入って検査できます(障害者総合支援法第48条)。指定の取消しや効力停止の件数と手続の詳細条文は、今回確認できておらず、要検証です。

商談前に見ておきたい就労移行支援特有の公開情報

就労移行支援の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。

  • 運営法人と所在地の都道府県・市: 指定は事業所ごとに都道府県知事が行います(障害者総合支援法第36条)。都道府県などが公表している指定事業所の一覧を確認します。
  • 多機能型かどうか: 就労継続支援や生活介護、自立訓練、就労定着支援を併せて運営しているか。複数の事業を行う事業所は統計でも各事業に計上されます。
  • 就職実績の公表: 事業所の紹介ページで、就職者数、就職先の業種、定着の状況をどう公表しているか。毎年の就職状況は都道府県に報告されます(基準省令第183条)。
  • 訓練の内容と対象: 障害種別(身体・知的・精神・発達)や年齢層、訓練のプログラム、通勤訓練や実習の受入先の紹介の有無。
  • 連携先: ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、特別支援学校、相談支援事業所との関係を、紹介ページや求人から確認します。
  • 職員の人数と求人: 職業指導員、生活支援員、就労支援員、サービス管理責任者の人数と募集の有無。人手不足の深刻度を示すサインになる場合があります。
  • 記録と請求の事務: 個別支援計画、訓練・通所の記録、実習先とのやり取り、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

就労移行支援の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、就労移行支援事業の事業所は3,240か所で、前年(3,301か所)から61か所(1.8%)減っています。令和4年の3,393か所からは約4.5%減です(増減率は当社計算)。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。

就労移行支援と就労継続支援は何が違いますか?

障害者総合支援法の定義では、就労移行支援は、就労を希望する障害者などに、通常の事業所に雇用されるための知識と能力の向上のための訓練などを行うサービスです(第5条第14項)。就労継続支援は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者などに、就労の機会を提供するとともに必要な訓練を行うサービスです(同条第15項)。就労移行支援は利用期間が2年間と定められており(施行規則第6条の8)、就労継続支援にはその定めがありません。また、「量を定めて」指定する対象は就労継続支援A型・B型で、就労移行支援は含まれません(施行規則第34条の20)。

就労移行支援の事業所にはどんな職員が必要ですか?

基準省令第175条により、職業指導員と生活支援員(総数で常勤換算の利用者数÷6以上、それぞれ1人以上)、就労支援員(常勤換算で利用者数÷15以上)、サービス管理責任者(利用者60人以下で1人以上、61人以上では60人を超えて40人またはその端数ごとに1人を加えた数以上)を置く必要があります。利用者数は前年度の平均値で、新規指定は推定数です。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の学校養成施設として認定された事業所には別の定めがあります(第176条)。報酬上の取扱いは別の告示によるため、最新の内容は所在地の都道府県などにご確認ください。

就職した後も、事業所は支援を続ける必要がありますか?

基準省令第182条により、就労移行支援事業者は、利用者が就職した日から6月以上、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連携して、職業生活における相談等の支援を継続しなければなりません。利用者が就労定着支援の利用を希望する場合は、その支援が終了した後に速やかに受けられるよう、就労定着支援の事業者との連絡調整を行う必要があります。

新しく事業所を開設する場合、定員や数の上限(総量規制)はありますか?

障害者総合支援法第36条第2項の「量を定めて」指定する特定障害福祉サービスは、施行規則第34条の20により生活介護と就労継続支援A型・B型とされ、就労移行支援は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。ただし、人員・運営の基準を満たすことや、申請者が都道府県の条例で定める者であることなどの要件があります。都道府県ごとの運用や事前相談の要否は、所在地の都道府県・指定都市・中核市にご確認ください。

指定の有効期間と更新はどうなっていますか?

障害者総合支援法第41条により、指定障害福祉サービス事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います。更新の手続の時期や書類は都道府県ごとに案内されるため、指定を受けている都道府県などの案内をご確認ください。

まとめ

就労移行支援事業所の経営課題は、①事業所は減り利用者は増える中での集客と定員の管理②指定は都道府県知事が事業所ごとに行い、6年ごとの更新と届出が続く(「量を定めて指定」の対象ではない)③職業指導員・生活支援員は6人に1人、就労支援員は15人に1人、サービス管理責任者は60人以下で1人という人員基準④通勤訓練・実習先の確保・求職支援・就職から6月以上の定着支援・毎年の就職状況の報告という出口の支援の義務⑤利用期間は原則2年で、入れ替わりを前提にした個別支援計画の見直し⑥就労選択支援の新設と、報告・検査などの周辺制度への対応、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。厚生労働省の調査では、事業所は3,240か所で令和4年から約4.5%減り、利用実人員は43,383人で前年比約12.7%増、利用者1人当たりの利用日数は8.5日でした。報酬の最新の区分、収支差率、一般就労への移行者数と定着率、利用日数が下がった要因、就労選択支援の事業所数、経営主体別の構成、都道府県ごとの運用差は、今回確認した範囲では把握できず、要検証です。個別の事業所に提案する際は、所在地の都道府県の情報、多機能型かどうか、就職実績の公表、連携先、職員の人数と求人、記録と請求の事務の方法といった一次情報から仮説を立て、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。