結論から: 厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和6年10月1日現在)では、就労継続支援B型の事業所は17,973か所で前年より1,260か所(7.5%)増え、令和2年の13,355か所からは4年で約34.6%増えました。一方、A型は4,634か所で前年より42か所(0.9%)減り、令和5年の4,676か所を下回っています。9月中の利用実人員はB型が502,992人(前年比約9.1%増)、A型が103,278人(同約4.8%減)で、1人当たりの利用日数はどちらも低下しました。令和5年度の平均はB型の工賃が月額22,649円、A型の賃金が月額86,752円です。障害者総合支援法は、就労継続支援の指定を「量を定めて」行い、都道府県の障害福祉計画の必要量に達している場合は指定しないことができると定めています。この記事では、公開情報から就労継続支援事業所の経営課題を6パターンに整理します。

就労継続支援を「福祉事業の一部」として見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。障害のある子どもを対象とした通所支援は放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の経営課題、高齢者向けの在宅サービスは介護・福祉事業の経営課題で扱っています。就労継続支援は、これらとは根拠法も統計の区分も別で、「事業所が生産活動を行い、その収益から利用者に賃金や工賃を支払う」という構造が最大の特徴です。

障害者総合支援法は、就労継続支援を、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者などに対し、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行うものと定義しています(第5条第15項)。一般に、利用者と雇用契約を結ぶ類型をA型、結ばない類型をB型と呼びます(基準省令の第190条、第198条)。給付費に加えて、事業所自身が仕事を受注・販売して得る収入が、利用者への支払いの原資になる点が、他の福祉サービスと大きく異なります。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況、および「令和5年度工賃(賃金)の実績について」から、次の数字が分かります。

  • 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): B型は令和2年13,355か所、令和3年14,407か所、令和4年15,588か所、令和5年16,713か所、令和6年17,973か所で、4年で4,618か所(約34.6%)増えています(当社計算)。A型は令和2年3,929か所、令和3年4,130か所、令和4年4,429か所、令和5年4,676か所と増えてきましたが、令和6年は4,634か所と前年を42か所(0.9%)下回りました。令和2年からの4年では705か所(約17.9%)の増加です(当社計算)。
  • 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): B型は令和2年359,732人から令和6年502,992人へ、4年で143,260人(約39.8%)増えています(当社計算)。A型は令和2年89,351人、令和5年108,488人から、令和6年は103,278人と、前年比で5,210人(約4.8%)減っています(当社計算)。
  • 利用者1人当たりの利用日数(9月中): A型は令和2年12.0日、令和3年11.3日、令和4年11.4日、令和5年11.3日、令和6年9.8日です。B型は令和2年10.8日、令和3年10.2日、令和4年10.5日、令和5年9.8日、令和6年8.9日です。いずれも令和6年に前年から低下しています。
  • 従事者(常勤換算、令和6年10月1日): B型は101,309人で、令和2年の73,835人から約37.2%増(当社計算)。内訳はサービス管理責任者15,970人、生活支援員33,791人、職業指導員36,680人、その他14,869人です。A型は27,357人で、令和5年の27,956人から約2.1%減(当社計算)。内訳はサービス管理責任者4,099人、生活支援員7,646人、職業指導員11,770人、その他3,842人です。
  • 賃金・工賃の水準(令和5年度実績): B型事業所の平均工賃は月額22,649円(令和4年度は17,031円)、A型事業所の平均賃金は月額86,752円(令和4年度は83,552円、対前年比103.8%)です。ただし厚生労働省は、令和5年度は令和6年度の報酬改定で平均工賃月額の計算方法が変わった(前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いる方式)ため、B型の実績が大幅に増加している、と注記しています。令和4年度との単純な比較では、実際の工賃の上昇を示せません。令和6年度の全国平均は、厚生労働省の公表ページでは確認できず、要検証です。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員・利用日数・従事者数は詳細票(回収率81.1%)からの推計値です。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されるため、A型とB型の事業所数を単純に足し合わせることは、多機能型の事業所を考えると適切とは限りません。また、事業所当たりの利用実人員は、A型で約22人、B型で約28人という目安になりますが、これは利用実人員(推計)を事業所数(全数)で割った当社の概算であり、定員や稼働率ではありません。収支差率、報酬の水準、経営主体別の構成は、今回確認した資料には含まれておらず、要検証です。

就労継続支援事業所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の定めを踏まえ、経営課題を整理します。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①A型とB型で動きが分かれ、1人当たりの利用日数は下がっている

B型の事業所と利用者は4年間増え続けていますが、A型は令和6年に事業所も利用実人員も前年を下回りました。さらに、1人当たりの利用日数はA型が11.3日から9.8日に、B型が9.8日から8.9日に下がっています。利用者の数が増えても、1人当たりの利用日数が下がれば、事業所の稼働や生産活動に使える人手は同じようには増えません。この低下の要因(利用者の障害特性の変化、週の利用日数の設定、調査の回答状況など)は今回の資料からは特定できず、要検証です。地域の事業所の数、利用者の通い方、生産活動の人手の確保を、事業所ごとに確かめる必要があります。

②指定は「事業所ごと・種類ごと・量を定めて」:新規指定は都道府県の計画に左右される

障害者総合支援法第36条は、指定を障害福祉サービスの種類およびサービス事業所ごとに行うと定めています。さらに、就労継続支援などの特定障害福祉サービスは、量を定めて指定するとされています。都道府県知事は、事業所の所在地を含む区域の指定障害福祉サービスの量が、都道府県障害福祉計画の必要な量にすでに達している場合や、指定によって超えることになる場合などに、指定をしないことができます(同条第5項)。新規参入や定員の増加を考える場合、制度上は、地域ごとの計画の状況が前提になります。所在地の都道府県と区域の障害福祉計画の必要量は今回確認しておらず、要検証です。

③人員基準:職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者の配置と、専従・常勤の要件

基準省令第186条は、A型事業所に置く従業者を次のように定めています。職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で利用者数を10で除した数以上とし、職業指導員と生活支援員はそれぞれ1人以上置きます。サービス管理責任者は、利用者数が60以下で1人以上、61以上では1人に、60を超えて40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。利用者数は前年度の平均値で、新規指定の場合は推定数によります。従業者は原則として専らその事業所の職務に従事する者で、職業指導員または生活支援員のうち1人以上と、サービス管理責任者のうち1人以上は常勤でなければなりません。B型には同条が準用されます(第199条)。実際の基準は都道府県の条例で定められ(障害者総合支援法第43条)、報酬上の人員配置の区分は別の仕組みで、今回は確認しておらず要検証です。従事者は、B型で4年間に約37.2%増えた一方、A型では令和6年に前年より約2.1%減りました(当社計算)。

④賃金と工賃の構造:A型は「生産活動の収入が賃金総額以上」、B型は「工賃は月平均3,000円を下回らない」

A型事業所には、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を差し引いた額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにすることが求められます。雇用契約を結ばない利用者がいる場合、その利用者には同じ額を工賃として支払い、一月あたりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはなりません。賃金や工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付(給付費)を充ててはならないとされています(第192条)。B型でも、生産活動の収入から必要な経費を引いた額を工賃として支払い、一月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならず、事業者は年度ごとに工賃の目標水準を設定して、目標水準と前年度の実績を利用者に通知し、都道府県に報告します(第201条)。令和5年度の実績はB型で月額22,649円、A型で月額86,752円ですが、これは事業所ごとのばらつきを含む平均値であり、個々の事業所の水準を示すものではありません。事業所の収支は、受注する仕事の単価、原価、稼働の状況に直結するため、生産活動の収益管理が経営課題になります(収支差率は要検証)。

⑤生産活動の事業性:仕事の確保と、地域の需給への配慮

A型の基準省令第191条は、就労の機会の提供に当たって、地域の実情ならびに製品およびサービスの需給状況等を考慮して行うよう努めること、作業の能率の向上が図られるよう利用者の障害の特性等を踏まえた工夫を行うことを求めています。生産活動は、福祉サービスの一部であると同時に、受注先の確保、品質、納期、原価管理といった一般的な事業運営の課題を伴います。A型では、利用者以外を作業員として雇用できる人数にも利用定員に応じた上限があります(第196条)。作業の種類、受注先の分布、取引の継続性、工賃・賃金の原資となる収益の推移は、事業所ごとに確認が必要で、今回の資料からは把握できていません(要検証)。

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⑥指定の更新・届出・自己評価の公表と、指定取消しのリスク

指定は6年ごとに更新を受けなければ、効力を失います(障害者総合支援法第41条)。事業所の名称や所在地などに変更があったときは10日以内に、事業を廃止または休止するときは1月前までに、都道府県知事へ届け出る必要があります(第46条)。A型事業者は、おおむね1年に1回以上、利用者の労働時間などの運営状況について厚生労働大臣が定める事項を自ら評価し、その結果をインターネットなどで公表しなければなりません(基準省令第196条の3)。また、都道府県知事は、人員や運営の基準を満たさなくなった場合などに、指定の取消しまたは効力の停止ができます(第50条)。更新時期、変更の届出、運営規程の改定(A型は賃金・工賃・労働時間なども記載事項、第196条の2)を、記録と合わせて管理する事務が、現場の負担になりやすい部分です。事務の方法は事業所ごとに異なり、実態は要検証です。

商談前に見ておきたい就労継続支援特有の公開情報

就労継続支援の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。

  • A型かB型か、多機能型か: 雇用契約の有無で、賃金・労働条件の管理の重さが変わります。就労移行支援や生活介護などとの多機能型かどうかも確認します。
  • 運営法人と所在地の自治体: 指定は事業所ごとに都道府県知事が行います(障害者総合支援法第36条)。所在地の障害福祉計画と、事業所の一覧、公表されている運営の情報を確認します。
  • A型の自己評価の公表: A型事業所は、運営状況の自己評価をインターネットなどで公表する義務があります。労働時間などの数値から、現場の状況の仮説を立てられる場合があります。
  • 生産活動の内容と受注先: 事業所のウェブサイトや商品ページ、受注先の公開情報から、作業の種類、単価、販路の広がりを確認します。
  • 求人の内容: 職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者の募集の有無、雇用形態。人手不足の深刻度を示すサインになる場合があります。
  • 記録と請求の事務: 日々の利用の記録、支援計画、工賃・賃金の計算、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
  • 隣接分野の経営状況: 放課後等デイサービス・児童発達支援、介護・福祉事業、居宅介護支援事業所の記事もあわせて参考になります。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

就労継続支援B型の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、就労継続支援B型の事業所は17,973か所で、前年(16,713か所)から1,260か所(7.5%)増えています。令和2年の13,355か所からは約34.6%増です(増減率は当社計算)。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。

就労継続支援A型の事業所は増えていますか、減っていますか?

同調査の令和6年は4,634か所で、前年(4,676か所)から42か所(0.9%)減りました。令和2年の3,929か所と比べると約17.9%多い水準です(当社計算)。減少の理由は今回の資料からは分からず、要検証です。

B型の平均工賃とA型の平均賃金はいくらですか?

厚生労働省の「令和5年度工賃(賃金)の実績について」では、B型事業所の平均工賃は月額22,649円、A型事業所の平均賃金は月額86,752円です。令和5年度は報酬改定に伴う平均工賃月額の計算方法の変更で、B型の実績が大幅に増加したと注記されているため、令和4年度(17,031円)との単純比較はできません。令和6年度の全国値は確認できておらず、要検証です。

工賃の最低額は決まっていますか?

基準省令により、B型事業者が利用者に支払う一月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないとされています(第201条)。A型事業者も、雇用契約を結んでいない利用者に支払う工賃の月平均額を3,000円以上とする必要があります(第192条)。雇用契約を結ぶ利用者への賃金は、労働関係の法令が別に関係するため、個別の確認が必要です。

新しく事業所を開設する場合、誰でも指定を受けられますか?

指定は事業所ごと・種類ごとに都道府県知事が行い、申請者が条例で定める者であることや、人員・設備・運営の基準を満たすことが要件です。さらに、就労継続支援は量を定めて指定され、都道府県障害福祉計画の必要な量にすでに達している場合などには、指定をしないことができます(障害者総合支援法第36条)。地域ごとの状況は所在地の自治体にご確認ください。A型では、社会福祉法人以外の者は専ら社会福祉事業を行う者であること、障害者雇用促進法上の子会社でないことも要件です(基準省令第189条)。

指定の有効期間と更新はどうなっていますか?

障害者総合支援法第41条により、指定障害福祉サービス事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います。更新の手続の時期や書類は都道府県ごとに案内されるため、指定を受けている自治体の案内をご確認ください。

まとめ

就労継続支援事業所の経営課題は、①A型とB型で動きが分かれ、1人当たりの利用日数は下がっている②指定は事業所ごと・種類ごと・量を定めて行われ、新規指定は都道府県の計画に左右される③職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者の配置と、専従・常勤の要件④A型は生産活動の収入が賃金総額以上、B型は工賃の月平均が3,000円を下回らない、という賃金と工賃の構造⑤生産活動の事業性としての仕事の確保と地域の需給への配慮⑥6年ごとの更新、10日・1か月前の届出、A型の自己評価の公表と指定取消しのリスク、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。厚生労働省の調査では、B型の事業所は17,973か所で4年で約34.6%増え、A型は4,634か所で前年を下回りました。令和6年度の工賃・賃金の全国値、報酬の最新の区分、収支差率、経営主体別の構成、利用日数低下の要因、自治体ごとの障害福祉計画の必要量は、今回確認した範囲では把握できず、要検証です。個別の事業所に提案する際は、A型かB型か、所在地の自治体の情報、生産活動の内容、求人の内容といった一次情報から仮説を立て、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。