結論から: 厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和6年10月1日現在)では、自立生活援助事業は491か所(前年比+19、令和2年比で約50.6%増)と事業所は増えていますが、利用実人員は1,251人で、令和4年の1,321人をピークに2年連続で減りました(令和6年は前年比約3.2%減)。常勤換算従事者も543人で前年から約7.0%減っています。1事業所当たりの利用実人員は約2.55人と小規模です。施行規則は支援の期間を1年間と定め、基準省令は地域生活支援員を事業所ごとに1人以上、サービス管理責任者を利用者数に応じて置くよう定めています。報酬や期間の延長の取扱いは別の告示・通知に委ねられており、本記事では「要検証」と明記しているため、開設や営業の前に必ず公的な一次情報でご確認ください。

自立生活援助を「グループホームの周辺サービス」と同じに見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。障害福祉サービスで暮らしの場を担う共同生活援助(グループホーム)が利用実人員185,349人の大きな区分であるのに対し、自立生活援助は同じ令和6年に1,251人と、規模が大きく異なります(当社計算で共同生活援助の約0.67%)。

障害者総合支援法第5条第17項は、自立生活援助を、施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者その他主務省令で定める障害者が、居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、主務省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の援助を行うこと、と定めています。第28条第2項は、自立生活援助を訓練等給付費の対象となる障害福祉サービスの1つに挙げています。

経営の観点で押さえておきたい特徴は3つです。第1に、サービスの場は施設ではなく利用者の居宅で、「訪問」と「随時の通報への対応」が仕事の中心になる点です。第2に、対象は法律上、施設入所支援や共同生活援助を受けていた人を出発点とし、就労定着支援と同じく、他のサービスの先に位置する区分である点です。第3に、期間が施行規則で区切られている点です。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。

  • 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 令和2年326か所、令和3年395か所、令和4年445か所、令和5年472か所、令和6年491か所です。令和2年から165か所(約50.6%)増え、令和6年の前年比は19か所(4.0%)増です。令和元年の266か所からは、令和2年に60か所(22.6%)増えていました。年ごとの増加幅は、令和3年+69、令和4年+50、令和5年+27、令和6年+19と、毎年小さくなっています(当社計算)。
  • 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): 令和2年981人、令和3年1,306人、令和4年1,321人、令和5年1,293人、令和6年1,251人です。令和3年に前年比で325人(約33.1%)増えたあと、令和4年の1,321人をピークに2年続けて減り、令和6年は前年より42人(約3.2%)少なくなりました。令和2年と比べると、なお270人(約27.5%)多い水準です(当社計算)。
  • 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計): 令和2年409人、令和3年492人、令和4年505人、令和5年584人、令和6年543人です。令和6年は前年から41人(約7.0%)減り、令和2年比では134人(約32.8%)増です。令和6年の内訳(画像で目視確認)は、サービス管理責任者153人、地域生活支援員345人、その他45人で、就労定着支援員は調査職種外で「…」と表示されています。
  • 職種別の動き: 地域生活支援員は令和2年261人、令和3年303人、令和4年328人、令和5年363人、令和6年345人。サービス管理責任者は令和2年113人、令和3年148人、令和4年133人、令和5年161人、令和6年153人です。令和2年と令和6年を比べると、地域生活支援員は約32.2%増、サービス管理責任者は約35.4%増です(当社計算)。
  • 1事業所当たりの規模感(当社計算の参考値): 利用実人員を事業所数で割ると、令和2年約3.01人、令和3年約3.31人、令和4年約2.97人、令和5年約2.74人、令和6年約2.55人です。従事者総数を事業所数で割ると、令和2年約1.25人、令和6年約1.11人です。利用実人員を地域生活支援員で割ると、令和5年約3.56人、令和6年約3.63人です。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員と従事者数は詳細票からの推計値で、標本調査に伴う誤差を含む点に留意が必要です。利用実人員は9月中、従事者数は10月1日現在で時点が異なります。上の「1事業所当たり」「地域生活支援員1人当たり」は、統計の数字を単純に割った当社の参考値であり、法令が定める配置の基準とは関係がありません。また、自立生活援助の利用延人数や利用日数は、概況では表章記号「・」(統計項目のあり得ない場合)で示され、数値がありません。訪問の頻度や回数は、この統計からは分かりません。

商談前リサーチ、会社名だけで10分

会社名を入れるだけで、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きでAIが自動リサーチします。

1社無料でお試しする

自立生活援助事業所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の条文を踏まえ、経営課題を整理します。報酬や期間の延長といった細かい条件は今回確認できていないため、確認できた範囲に絞り、断定を避けます。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①事業所は増えても利用者は増えていない:1事業所当たり約2.55人という小さな規模

事業所数は令和2年の326か所から令和6年の491か所へ約50.6%増えましたが、利用実人員は同じ期間に約27.5%の増加にとどまり、令和4年から令和6年は減っています。そのため1事業所当たりの利用実人員は、令和3年の約3.31人から令和6年の約2.55人へ下がりました(当社計算)。事業所の新設が利用者の増加を上回って進んだ姿と読めますが、なぜ利用実人員が減ったのか(対象者の減少、期間満了後の移行、事業所間の競合、制度の運用の違いなど)は、統計だけでは分かりません。自社の地域の需要と競合状況は、都道府県などの公表資料で確認する必要があり、要検証です。

②利用期間が施行規則で「一年間」と定められている:新しい利用者を継続的に迎える仕組みが前提になる

施行規則第6条の10の6は、法第5条第17項に規定する期間を「一年間」と定めています。期間が区切られた支援である以上、利用者の入れ替わりが前提になり、新しい利用者を継続的に迎えられるかが事業の安定に関わります。ただし、期間の延長や更新の取扱いは、今回確認した施行規則・基準省令の本文には書かれておらず、告示や通知で定められている可能性があります。支援が終わった後に利用者がどのサービスへ移るかも含めて、要検証です。

③利用者の入口は他のサービスや本人の状況の先にある:紹介元との関係が集客に直結する

法第5条第17項は、施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者を対象の例として挙げ、その他の対象を主務省令に委ねています。施行規則第6条の10の5は、対象を、居宅において単身であるため、又は家族と同居していても家族等の障害・疾病等や生活環境の大きな変化などにより、家族等による支援が見込めない状況にある障害者としています。つまり利用者は、共同生活援助や障害者支援施設からの移行が出発点で、自社が直接集める対象ではありません。実際にどの入口からの利用者が何割かは統計から分からず、要検証ですが、紹介元の事業所や相談支援事業所との関係が事業の安定を左右しやすい構造です。

④人員の最低ラインは小さいが、兼務や配置の判断は事業所ごと

基準省令第206条の14は、地域生活支援員を事業所ごとに1以上、サービス管理責任者を利用者数に応じて置くよう定めています。サービス管理責任者が常勤であれば、利用者60人以下で1人以上、61人以上は60人を超えて60人又はその端数を増すごとに1人を加えた数以上で、常勤でない場合は利用者30人以下で1人以上、31人以上は30人を超えて30人又はその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。地域生活支援員の員数の標準は、利用者25人又はその端数を増すごとに1人とされています。従業者は専ら当該事業所の職務に従事する者でなければなりませんが、利用者の支援に支障がない場合は除かれます。

統計の数字(利用実人員1,251人に対し地域生活支援員345人)を割ると約3.63人となりますが、これは常勤換算の推計を単純に割った参考値で、基準省令の「標準」と同じ尺度で比べることはできません。事業所の規模が小さい場合、1人の欠員や休職が支援の継続に直接影響し得る点は、他の小規模な区分と共通の課題です。令和6年は従事者全体も前年比で約7.0%減っており、人員確保の動きは今回の統計だけでは因果が分かりません。

⑤地域相談支援との一体運営:サービス管理責任者の配置に特例がある

基準省令第206条の14は、指定自立生活援助事業者が指定地域移行支援または指定地域定着支援の指定を併せて受け、同一の事業所で一体的に運営している場合は、その事業所に配置された相談支援専門員を、置くべきサービス管理責任者とみなすことができると定めています。地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)は、令和6年の統計で事業所数がそれぞれ3,801か所・3,657か所、利用実人員が1,223人・4,267人と、自立生活援助とは別の行で集計されています。複数の区分を組み合わせて運営する事業所が実際にどれだけあるかは、統計からは分かりません。組み合わせると人員や記録の管理が複雑になる一方、利用者を継続的に支える体制を作りやすい面があり、自社の運営法人の構成は公開情報で確認する必要があります(要検証)。

⑥訪問と随時の通報への対応が仕事の中心:運営の仕組みと記録・報酬は要確認

基準省令第206条の18は、定期的に利用者の居宅を訪問し、又はテレビ電話装置等を活用して、心身の状況や環境、日常生活全般の状況の把握を行い、必要な情報の提供及び助言並びに相談、関係機関との連絡調整などを行うよう求めています。第206条の19は、利用者から通報があった場合に速やかに居宅への訪問等で状況把握を行うこと、家族や関係機関との連絡調整を行うこと、心身の状況や障害の特性に応じて常時の連絡体制を確保することを定めています。つまり、訪問のスケジュール管理、通報の受付体制、連絡調整の記録が日々の運営の核です。

さらに第206条の20は、運営規程や記録の整備などの条文を準用し、計画の見直し頻度に関する第58条第9項の「六月」を「三月」と読み替えて準用しています(少なくとも3月に1回以上の見直しが基準になると読めますが、読み替え後の細部は要検証です)。報酬の区分・加算、収支差率、定員充足率、利用終了後の進路といった経営判断に必要な値は、今回の統計(社会福祉施設等調査)にも法令の本文にも含まれず、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬の告示・通知や、障害福祉サービス等経営実態調査の公表資料などで別途確認する必要があります。

商談前に見ておきたい自立生活援助特有の公開情報

自立生活援助の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。

  • 運営法人と併設事業: 共同生活援助や相談支援、地域移行支援・地域定着支援、就労定着支援を併せて運営していると、自社内に利用者の入口を持てる一方、人員や記録の管理が複雑になります。都道府県などが公表している指定事業所の一覧と、事業所の紹介ページで確認します。
  • 利用者の入口の説明: 紹介ページや運営規程に、どのサービスや施設からの利用者を対象とするかがどう書かれているか。
  • 職員の人数と求人: 地域生活支援員、サービス管理責任者の人数と募集の有無。規模の小さい事業所では、求人の有無が配置の余裕のサインになる場合があります。
  • 訪問と通報への対応の方法: 定期訪問の頻度、テレビ電話装置等の活用、夜間・休日の連絡体制が、紹介ページや運営規程にどう書かれているか。
  • 記録と請求の事務: 訪問の記録、関係機関との連絡履歴、計画の見直しの記録、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
  • 公表されている実績: 事業所が支援終了後の進路などを公表している場合は、その算出方法と期間を確認します(定義が事業所ごとに異なる可能性があり、要検証)。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

自立生活援助の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、自立生活援助事業が491か所です。前年(472か所)から19か所(4.0%)増え、令和2年(326か所)からは165か所(約50.6%、当社計算)増えています。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。

自立生活援助とは何ですか?

障害者総合支援法第5条第17項は、施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者その他主務省令で定める障害者が居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、主務省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の援助を行うことと定めています。施行規則は、対象を居宅において単身であるため又は家族等による支援が見込めない状況にある障害者とし、期間を一年間としています。

自立生活援助の利用者や従事者は、どのくらいいますか?

令和6年9月中の利用実人員は1,251人(前年の1,293人から約3.2%減、詳細票の推計)です。令和6年10月1日現在の常勤換算従事者数は543人で、内訳は、サービス管理責任者153人、地域生活支援員345人、その他45人です(詳細票の推計。就労定着支援員は調査職種外)。複数の事業を行う事業所は事業ごとに計上される点にご注意ください。

自立生活援助の人員基準はどうなっていますか?

基準省令第206条の14は、地域生活支援員を事業所ごとに1人以上、サービス管理責任者を利用者数に応じた人数(常勤であれば利用者60人以下で1人以上など)とし、地域生活支援員の員数の標準を利用者25人又はその端数を増すごとに1人としています。利用者数は前年度の平均値で、新規指定は推定数によります。地域移行支援・地域定着支援を同一事業所で一体的に運営する場合は、相談支援専門員をサービス管理責任者とみなせる特例があります。最新の条文は、e-Gov法令検索で現行のものをご確認ください。

自立生活援助の利用期間は決まっていますか?

施行規則第6条の10の6は、法第5条第17項の主務省令で定める期間を「一年間」と定めています。期間の延長や更新の取扱い、報酬の区分や加算は、今回確認した本文には書かれておらず、告示や通知で定められている可能性があるため、要検証です。

自立生活援助に総量規制はありますか?

障害者総合支援法施行規則第34条の20は、量を定めて指定を行う特定障害福祉サービスを列挙していますが、取得時点(2026年10月23日)の同条は、特定障害福祉サービスを生活介護、就労継続支援A型及び就労継続支援B型としており、自立生活援助は含まれていません。ただし、各都道府県の指定の運用は別途確認が必要で、要検証です。

まとめ

自立生活援助事業所の経営課題は、①事業所は増えても利用者は増えておらず、1事業所当たり約2.55人という小さな規模であること②利用期間が施行規則で一年間と定められ、新しい利用者を継続的に迎える仕組みが前提になること③利用者の入口が共同生活援助や施設などの先にあり、紹介元との関係が集客に直結すること④人員の最低ラインは小さいが、兼務や配置の判断は事業所ごとであること⑤地域相談支援との一体運営ではサービス管理責任者の配置に特例があること⑥訪問と随時の通報への対応が仕事の中心で、記録・報酬・期間の延長は別途確認が要ること、の6つです。営業やヒアリングの前に、事業所の併設事業、紹介元、職員の人数と求人を公開情報で整理しておくと、論点を絞りやすくなります。