結論から: 厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和6年10月1日現在)では、共同生活援助(障害者向けのグループホーム)の事業所は14,241か所で、前年より890か所(6.7%)増え、令和2年の9,659か所からは4年で約47.4%増えました。9月末日の利用実人員は185,349人(令和2年比で約42.1%増)、常勤換算の従事者は110,028人(同約64.9%増)で、従事者の内訳は世話人が56,472人、生活支援員が35,409人、サービス管理責任者が9,976人です。基準省令は、世話人を利用者6人に対し常勤換算で1人以上、共同生活住居の入居定員を原則2人以上10人以下、居室を1人用で7.43平方メートル以上と定めています。この記事では、公開情報から共同生活援助の経営課題を6パターンに整理します。

共同生活援助を「介護のグループホーム」と同じに見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。高齢者向けの介護サービスは介護・福祉事業の経営課題、障害のある子どもの通所支援は放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の経営課題、障害のある人の就労の場は就労継続支援A型・B型事業所の経営課題で扱っています。

この記事で扱う共同生活援助は、一般に「障害者グループホーム」と呼ばれる障害福祉サービスです。障害者総合支援法は、障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居で相談、入浴、排せつもしくは食事の介護その他の日常生活上の援助を行うこと、あわせて、居宅における自立した日常生活への移行を希望する入居者に対して、移行および移行後の定着に関する相談などの援助を行うことと定義しています(第5条第18項)。なお、介護保険法に基づく認知症対応型共同生活介護(いわゆる認知症グループホーム)は、根拠法・利用者・基準が別の制度です。名前が似ているため、調べるときは「共同生活援助」「障害者総合支援法」と明示して区別する必要があります。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。

  • 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 令和2年9,659か所、令和3年11,056か所、令和4年12,281か所、令和5年13,351か所、令和6年14,241か所で、4年で4,582か所(約47.4%)増えています(増減率は当社計算)。令和6年の前年比は890か所(6.7%)増で、毎年増加が続いています。
  • 利用実人員(各年9月末日、詳細票の推計): 令和2年130,440人、令和3年144,981人、令和4年157,829人、令和5年172,423人、令和6年185,349人で、4年で54,909人(約42.1%)増えています(当社計算)。令和6年の前年比は12,926人(約7.5%)増です(当社計算)。
  • 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計): 令和2年66,729人、令和3年76,105人、令和4年85,674人、令和5年101,222人、令和6年110,028人で、4年で43,299人(約64.9%)増えています(当社計算)。事業所数や利用者の増え方より従事者の増え方が大きい点は、人員の厚みが変わっている可能性を示しますが、その要因は今回の資料からは分からず、要検証です。
  • 令和6年の従事者の内訳: 世話人56,472人、生活支援員35,409人、サービス管理責任者9,976人、看護師329人、その他7,842人です。構成比は、世話人が約51.3%、生活支援員が約32.2%、サービス管理責任者が約9.1%です(当社計算)。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員と従事者数は詳細票(回収率81.1%)からの推計値です。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。1事業所当たりの利用実人員は、令和2年が約13.5人、令和6年が約13.0人、1事業所当たりの常勤換算従事者は令和6年で約7.7人という目安になりますが、これは推計値を全数で割った当社の概算であり、定員や稼働率、実際の人員配置を示すものではありません。また、共同生活援助の事業所は、1つの事業所が複数の共同生活住居やサテライト型住居を持てる制度のため(基準省令第210条)、事業所数と建物の数は一致しません。収支差率、報酬の区分、経営主体別の構成、入居者の障害種別や障害支援区分の構成は、今回確認した資料からは把握できておらず、要検証です。

共同生活援助事業所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の定めを踏まえ、経営課題を整理します。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①事業所・利用者・従事者が毎年そろって増える中で、人材の確保が運営の土台になる

共同生活援助は、令和2年から令和6年まで、事業所・利用実人員・常勤換算従事者のいずれも毎年増えています。従事者の約5割が世話人、約3割が生活支援員という構成で、夜間を含む生活の支援を担う人材が事業の中心です。制度上の配置は利用者の数や障害支援区分に連動するため、入居が増えるほど必要な人員も増えます。求人の動向、賃金、シフトの組み方、夜間の支援体制は事業所ごとに異なり、今回の資料からは実態を特定できません。個別の事業所には、世話人・生活支援員・サービス管理責任者の募集の有無、勤務形態、夜勤・宿直の体制から仮説を立て、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。

②指定は事業所・種類ごとに行われる:「量を定めて指定」の対象ではないが、条例の要件と基準が前提

障害者総合支援法第36条は、指定を障害福祉サービスの種類およびサービス事業所ごとに行うと定めています。就労継続支援などの特定障害福祉サービスは「量を定めて」指定されますが、施行規則第34条の20が定める特定障害福祉サービスは生活介護と就労継続支援A型・B型で、共同生活援助は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。したがって、都道府県障害福祉計画の必要な量に達していることを理由とする第36条第5項の「指定をしないことができる」規定は、共同生活援助には適用されない構造です。ただし、申請者が都道府県の条例で定める者であること、人員・設備・運営の基準を満たすことは要件で、都道府県は障害福祉計画に指定障害福祉サービスの種類ごとの必要な量の見込みを定めます(第89条第2項)。新規開設や増設を検討する場合は、所在地の自治体の条例・指導方針・住居の確保に関する相談窓口の確認が前提になります。自治体ごとの運用差は今回の資料からは分からず、要検証です。

③人員基準:世話人は6対1、生活支援員は障害支援区分に連動、サービス管理責任者は30人ごと

基準省令第208条は、共同生活援助の事業所に置く従業者を次のように定めています。世話人は、常勤換算で利用者の数を6で除した数以上です。生活支援員は、障害支援区分3の利用者数を9で、区分4を6で、区分5を4で、区分6を2.5でそれぞれ除した数の合計以上です。サービス管理責任者は、利用者が30人以下で1人以上、31人以上では1人に、30人を超えて30人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。利用者の数は前年度の平均値で、新規に指定を受ける場合は推定数によります。従業者は原則として専らその事業所の職務に従事する者で、管理者は専らその職務に従事する常勤の者を置く必要があります(管理上支障がない場合は他の職務との兼務が認められます、第209条)。入居者の区分が重いほど生活支援員の必要数が増える構造のため、入居者の構成の変化は人員計画に直結します。区分別の入居者構成や配置の実態は今回の資料にはなく、要検証です。

④設備基準:住居は2人以上10人以下、事業所の入居定員は合計4人以上、居室は7.43平方メートル以上

基準省令第210条は、共同生活住居を、住宅地または住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、入所施設や病院の敷地外にあるようにしなければならないと定めています。事業所は1以上の共同生活住居を有し、住居とサテライト型住居の入居定員の合計は4人以上です。共同生活住居の入居定員は2人以上10人以下で、既存の建物を共同生活住居とする場合は、2人以上20人以下(都道府県知事が特に必要と認めるときは30人以下)とすることができます。居室は原則1人用で、収納設備等を除き7.43平方メートル以上、サテライト型住居は入居定員1人です。物件の確保、改修、近隣との関係は、運営の前提になる課題といえます。物件の取得形態(自己所有か賃借か)や改修費の水準は今回の資料にはなく、要検証です。

⑤利用者負担と家賃:費用の種類と説明・同意、退居の支援まで制度に書かれている

基準省令第210条の4は、利用者負担額のほか、食材料費、家賃、光熱水費、日用品費などを利用者から受け取れると定めています。家賃については、特定障害者特別給付費(障害者総合支援法第34条)が支給された場合、その額を差し引いた額が受領の上限です。これらの費用を受け取るには、あらかじめ内容と費用を説明して同意を得る必要があります。入居の受け入れでは、心身の状況、生活歴、病歴等の把握に努めること、退居の際は利用者の希望を踏まえ、退居後の生活環境や援助の継続性に配慮し、居宅での生活への移行後の定着に必要な援助を行うことが求められます(第210条の2)。入居定員と居室の定員を超えて入居させてはならない規定もあります(第212条の3、災害・虐待などやむを得ない事情を除く)。家賃・食費の実際の水準や補足給付の現行の取扱いは今回確認できておらず、要検証です。

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⑥地域連携推進会議、協力医療機関、そして更新・届出・取消しのリスク

基準省令第210条の7は、事業者に対し、利用者・家族、地域住民の代表者、共同生活援助について知見を有する者、市町村の担当者等で構成する地域連携推進会議を開き、おおむね1年に1回以上、運営の状況を報告して要望や助言を聴くことを求めています。あわせて、構成員が事業所を見学する機会をおおむね1年に1回以上設け、会議の記録を作成して公表します(外部評価など都道府県知事が定める措置を講じている場合は適用除外)。また、利用者の病状の急変等に備え、あらかじめ協力医療機関を定めておく必要があり、新興感染症の発生時等の対応について、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合は協議を行うこととされています(第212条の4)。指定は6年ごとに更新を受けなければ効力を失い(障害者総合支援法第41条)、名称・所在地などの変更は10日以内に、事業の廃止・休止は1月前までに都道府県知事へ届け出ます(第46条)。人員や運営の基準を満たさなくなった場合などには、指定の取消しや効力の停止の対象になり得ます(第50条)。事業類型には、常時の支援体制を確保する日中サービス支援型(第213条の2以下)と、居宅介護の事業者へ介護を委託する外部サービス利用型(第213条の12以下)の特例もあり、どの類型かで人員や運営の基準が異なります。類型別の事業所数は今回確認できておらず、要検証です。

商談前に見ておきたい共同生活援助特有の公開情報

共同生活援助の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。

  • 事業類型と規模: 一般の共同生活援助か、日中サービス支援型か、外部サービス利用型か。共同生活住居やサテライト型住居の数、入居定員の合計も確認します。
  • 運営法人と所在地の自治体: 指定は事業所ごとに都道府県知事が行います(障害者総合支援法第36条)。所在地の障害福祉計画、条例、事業所の一覧、公表されている運営の情報を確認します。
  • 地域連携推進会議の記録の公表: 第210条の7により、会議の記録は公表されます。運営法人のウェブサイトなどに掲載があれば、地域との関係や課題の仮説を立てる材料になります。
  • 求人の内容: 世話人・生活支援員・サービス管理責任者・管理者の募集の有無、勤務形態、夜勤・宿直の記載。人手不足の深刻度を示すサインになる場合があります。
  • 記録と請求の事務: 日々の支援の記録、共同生活援助計画、家賃・食材料費・光熱水費などの利用者負担の計算と領収証、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
  • 運営法人の他事業: 就労継続支援、生活介護、放課後等デイサービス、退去後の暮らしを訪問で支える自立生活援助などを同じ法人で運営しているかどうか。就労継続支援、放課後等デイサービス、介護・福祉事業の記事もあわせて参考になります。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

共同生活援助の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、共同生活援助事業の事業所は14,241か所で、前年(13,351か所)から890か所(6.7%)増えています。令和2年の9,659か所からは約47.4%増です(増減率は当社計算)。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。

障害者グループホームと認知症グループホームは同じですか?

いいえ、別の制度です。この記事の共同生活援助は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、基準は厚生労働省令(平成18年第171号)の第16章に定められています。認知症グループホームは介護保険法に基づく認知症対応型共同生活介護で、根拠法も基準も異なります。社会福祉施設等調査でも、共同生活援助は障害福祉サービス等事業所の区分で集計されています。

世話人は何人置く必要がありますか?

基準省令第208条により、世話人は事業所ごとに、常勤換算で利用者の数を6で除した数以上です。利用者の数は前年度の平均値で、新規に指定を受ける場合は推定数によります。生活支援員は障害支援区分に応じた別の計算式があり、サービス管理責任者も別に置く必要があります。

共同生活住居の定員や居室の広さに決まりはありますか?

基準省令第210条により、共同生活住居の入居定員は原則として2人以上10人以下(既存の建物の場合は20人以下、都道府県知事が特に必要と認めるときは30人以下)で、事業所全体では入居定員の合計が4人以上です。居室は原則1人用で、収納設備等を除き7.43平方メートル以上とされています。実際の運用は自治体の条例や指導方針により異なる可能性があるため、所在地の自治体にご確認ください。

新しく事業所を開設する場合、定員や数の上限(総量規制)はありますか?

障害者総合支援法第36条第2項の「量を定めて」指定する特定障害福祉サービスは、施行規則第34条の20により生活介護と就労継続支援A型・B型とされ、共同生活援助は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。ただし、申請者が都道府県の条例で定める者であること、人員・設備・運営の基準を満たすことなどが必要です。自治体ごとの運用や事前相談の要否は、所在地の自治体にご確認ください。

指定の有効期間と更新はどうなっていますか?

障害者総合支援法第41条により、指定障害福祉サービス事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います。更新の手続の時期や書類は都道府県ごとに案内されるため、指定を受けている自治体の案内をご確認ください。

まとめ

共同生活援助事業所の経営課題は、①事業所・利用者・従事者が毎年そろって増える中で、人材の確保が運営の土台になる②指定は事業所・種類ごとに行われ、「量を定めて指定」の対象ではないが条例の要件と基準が前提③世話人は6対1、生活支援員は障害支援区分に連動、サービス管理責任者は30人ごとという人員基準④共同生活住居は2人以上10人以下、事業所の入居定員は合計4人以上、居室は7.43平方メートル以上という設備基準⑤家賃・食材料費などの利用者負担の説明と同意、入居・退居の支援⑥地域連携推進会議・協力医療機関と、6年ごとの更新・届出・取消しのリスク、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。厚生労働省の調査では、事業所は14,241か所で4年で約47.4%増え、常勤換算従事者は110,028人まで増えました。報酬の最新の区分、収支差率、経営主体別の構成、入居者の障害種別や区分の構成、類型別の事業所数、利用者負担の実際の水準、自治体ごとの条例や計画の差は、今回確認した範囲では把握できず、要検証です。個別の事業所に提案する際は、事業類型、所在地の自治体の情報、求人の内容、地域連携推進会議の公表資料といった一次情報から仮説を立て、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。