結論から: 東京商工リサーチ「『自動車販売』倒産 新車も中古車も10年間で最多」(2026年1月20日発表)によると、2025年の自動車販売業の倒産は137件(前年比+26.8%)で、2016年以降10年間で最多を更新しました。内訳は新車36件(前年比+20.0%)・中古車101件(前年比+29.4%、全体の73.7%)で、中古車販売店の倒産が突出しています。利益率でも明暗が分かれており、新車は3.1%(3年連続改善)である一方、中古車は2.1%(2年連続悪化)と対照的な動きです。さらに東京商工リサーチの別調査では2025年1-9月の中古車販売店倒産が82件(前年同期比+51.8%)、負債総額59.62億円(+90.8%)に達し、後継者難による倒産も2013年の集計開始以降で最多の10件を記録しました。帝国データバンクの後継者不在率調査でも「自動車・自転車小売」は62.3%と、建設業(57.3%)に次ぐ高水準です。本記事では自動車販売業(新車・中古車ディーラー)に特有の経営課題を6パターンに整理し、商談前リサーチで着目すべきポイントを出典付きで解説します。

自動車販売業を、自動車整備業の経営課題と分けて見る必要がある理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし「自動車販売業」は、車検・板金・整備を担う自動車整備業(地方運輸局の認証・指定を受けた整備工場)とは、古物営業法に基づく中古車の売買や、メーカー系列のディーラー網という別の許認可・統計系統に属しており、東京商工リサーチ・帝国データバンクの調査でも「自動車販売」「中古車販売店」は整備業とは別区分で集計されています。東京商工リサーチの調査では、2025年の自動車販売業の倒産137件のうち中古車が101件(73.7%)を占め、利益率も新車3.1%(改善傾向)・中古車2.1%(悪化傾向)と対照的な動きを見せており、「新車ディーラー」と「中古車販売店」の経営環境そのものが分かれつつある点が、この業種の経営課題を読み解く出発点になります。

自動車販売業の全体像を数字で見る

個別の課題に入る前に、業種全体の構造を確認します。東京商工リサーチ「『自動車販売』倒産 新車も中古車も10年間で最多」(2026年1月20日発表)によると、2025年の自動車販売業の倒産は137件で、前年比+26.8%、2016年以降10年間で最多を更新しました。内訳は新車36件(前年比+20.0%)・中古車101件(前年比+29.4%、全体の73.7%)です。休廃業・解散も新車262件(前年比+4.8%)・中古車128件(前年比+48.8%)といずれも増加しており、特に中古車販売店で休廃業の増加ペースが大きいことが分かります。利益率は新車3.1%(3年連続改善)・中古車2.1%(2年連続悪化)と対照的で、新車は収益が持ち直す一方、中古車は圧迫が続いている構図です。さらに東京商工リサーチの別調査「中古車販売店の1-9月倒産82件」(2025年10月20日発表)によれば、2025年1-9月の中古車販売店倒産は82件(前年同期比+51.8%)、負債総額59.62億円(前年同期比+90.8%)に達しています。「自動車販売業」とひとくくりにせず、新車系か中古車系かで経営環境が大きく異なる点に注意が必要です。

自動車販売業の経営課題、主要な6パターン

ここからは、自動車販売業(新車・中古車ディーラー)に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①中古車の仕入価格高騰による利益率悪化(新車と対照的に2年連続悪化)

東京商工リサーチの調査によれば、2025年の自動車販売業の利益率は新車3.1%(3年連続改善)である一方、中古車は2.1%(2年連続悪化)と対照的な動きを示しています。背景として指摘されているのが、半導体不足に由来する新車供給の減少が中古車市場の玉不足を招き、仕入価格の高騰につながっている構造です。加えて円安により海外からの中古車輸出需要が増え、国内の仕入競争がさらに強まっている面もあります。新車ディーラーが収益を持ち直す一方、仕入原価に利益を圧迫されやすい中古車専業店との差が広がりつつあり、対象企業が新車中心か中古車中心かによって、抱えている収益課題の性質が変わってくる点が着目ポイントです。

②小規模事業者の連鎖的な倒産・休廃業

東京商工リサーチの調査では、2025年の中古車販売店の倒産101件・休廃業128件(前年比+48.8%)といずれも増加基調にあり、中古車販売店の1-9月倒産82件(前年同期比+51.8%)を集計した別調査でも、負債総額59.62億円(前年同期比+90.8%)への急拡大が確認されています。倒産・休廃業に至る事業者の多くは資本金規模の小さい小規模事業者とみられ、仕入価格の高騰や後述する信頼回復コストといった逆風を吸収しきれず、連鎖的に事業継続が難しくなる構図がうかがえます。決算書の読み方は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標で解説しています。対象企業の資本金規模・店舗数・在庫台数は、こうした逆風への耐性を見立てる手がかりになります。

③ビッグモーター事件後の信頼回復コスト・コンプライアンス対応負担

2023年に発覚した大手中古車販売グループの不正修理・保険金不正請求問題を受け、国土交通省は2024年3月に車体整備の透明性に関するガイドラインを策定しました。業界全体で、修理・整備プロセスの可視化や説明責任の強化、社内チェック体制の整備といった対応が求められるようになり、これらは人員教育や業務プロセス見直しのための追加コストとして中小の中古車販売店にものしかかっています。東京商工リサーチの別調査では、2025年1-9月の中古車販売店倒産のうち後継者難による倒産が2013年の集計開始以降で最多の10件となっており、信頼回復コストへの対応力の差が、体力の乏しい事業者からより早く経営を圧迫している可能性がうかがえます。自社サイトや店舗での品質保証・第三者機関による車両状態証明の訴求有無は、コンプライアンス対応への姿勢を見立てる手がかりになります。

④業種内で突出して高い後継者不在率(62.3%)と事業承継難

帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日発表)によると、「自動車・自転車小売」の後継者不在率は62.3%で、全業種平均50.1%を12.2ポイント上回り、建設業(57.3%)に次ぐ高水準にあります。東京商工リサーチの調査でも、2025年1-9月の中古車販売店倒産82件のうち後継者難による倒産が2013年の集計開始以降で最多の10件を記録しており、統計と実態の両面から後継者不在の深刻さが裏付けられています。代表者の年齢構成・複数店舗展開の有無・M&A仲介会社への掲載実績は、事業承継の緊急度を見立てる手がかりになります。

⑤EVシフトによる新車ディーラーの収益構造転換

新車ディーラーの収益は車両販売だけでなく、車検・点検・部品交換といった整備売上に支えられている面がありますが、EV(電気自動車)は構造上、エンジンオイル交換や消耗部品の点検項目がガソリン車より少なくなる傾向が指摘されています。国内でのEVシフトによる整備収益への影響を定量化した確定的な国内データは今回確認できなかったため、具体的な減少率としては扱いませんが、新車ディーラーが今後、車両販売とアフターサービス(整備・部品)の両輪で収益を確保してきた従来の事業構造を見直す局面に入りつつある点は、中長期の経営課題として押さえておく必要があります。対象企業がEV/PHEV関連の整備研修や充電設備投資をどの程度進めているかは、この構造転換への対応度を推測する手がかりになります。

⑥半導体不足・円安という外部環境変化への価格転嫁の限界

半導体不足による新車供給の制約と、円安による部品・完成車輸入コストの上昇は、自動車販売業全体にとって自社でコントロールしにくい外部環境要因です。東京商工リサーチの調査で示された中古車の利益率2.1%(2年連続悪化)という数字は、こうした外部環境の変化を仕入価格や販売価格に十分転嫁しきれていない事業者が少なくないことを示唆しています。価格転嫁の遅れは小売業の経営課題6選とも共通する構造ですが、自動車販売業の場合は1台あたりの単価が大きいぶん、仕入価格の変動が収益に与える影響もより大きくなりやすい点が特徴です。対象企業の販売価格帯の改定頻度や、在庫回転期間に関する情報は、価格転嫁への対応力を見立てる視点になります。

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商談前に見ておきたい自動車販売業特有の公開情報

自動車販売業の企業をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 新車ディーラーか中古車専業か: 東京商工リサーチの調査でも新車(利益率3.1%・改善傾向)と中古車(利益率2.1%・悪化傾向)で収益動向が対照的なため、この区分は経営課題の性質を見立てる出発点になる。
  • メーカー系列(正規ディーラー)か独立系か: メーカー系列であれば新車販売・部品供給・保証体制が本部主導で整う一方、独立系の中古車販売店は仕入・在庫リスクを自社で負う度合いが大きい。
  • 古物商許可・第三者機関の車両状態証明の有無: 中古車販売には古物営業法上の許可が必要で、加えて第三者機関による車両状態証明(様々な業界団体・検査機関が発行)を導入しているかは、信頼回復への取り組み姿勢を見る材料になる。
  • 店舗数・在庫台数・出店エリア: 複数店舗展開や在庫規模は、仕入価格高騰への耐性や事業承継の複雑さを見立てる材料になる。
  • EV/PHEV取扱い状況・充電設備の有無: 自社サイトや店舗情報でのEV関連の訴求は、収益構造転換への対応状況を推測する手がかりになる。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。自動車販売業の課題は自動車整備業の経営課題5選や小売業の経営課題6選で扱った業種とも、仕入・在庫リスクや価格転嫁の難しさという点で通じる部分がありますが、古物営業法上の許可を要する中古車売買や、メーカー系列ディーラー網という点は自動車販売業特有の特徴です。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。

よくある質問

自動車販売業と自動車整備業の経営課題は同じですか

いいえ、許可・統計上の区分が異なります。自動車販売業は古物営業法に基づく中古車売買やメーカー系列のディーラー網が中心で、車検・整備を担う自動車整備業(地方運輸局の認証・指定工場)とは別の統計系統で集計されています。東京商工リサーチの調査でも「自動車販売」は整備業とは別区分で扱われており、2025年の倒産137件のうち中古車が101件(73.7%)を占める点が特徴です。

自動車販売業の倒産はどのくらい増えていますか

東京商工リサーチ「『自動車販売』倒産 新車も中古車も10年間で最多」(2026年1月20日発表)によると、2025年の倒産は137件(前年比+26.8%)で2016年以降10年間で最多を更新しました。内訳は新車36件(+20.0%)、中古車101件(+29.4%、全体の73.7%)です。別調査では2025年1-9月の中古車販売店倒産が82件(前年同期比+51.8%)、負債総額59.62億円(+90.8%)に達しています。

新車と中古車で利益率はどう違いますか

東京商工リサーチの調査では、2025年の利益率は新車3.1%(3年連続改善)、中古車2.1%(2年連続悪化)と対照的な動きです。半導体不足による新車供給減が中古車市場の玉不足・仕入価格高騰を招いていることが背景として指摘されています。

自動車販売業の後継者不在率はどのくらいですか

帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、「自動車・自転車小売」の後継者不在率は62.3%で、全業種平均50.1%を12.2ポイント上回り、建設業(57.3%)に次ぐ高水準です。東京商工リサーチの調査でも、2025年1-9月の中古車販売店倒産のうち後継者難による倒産が2013年の集計開始以降で最多の10件を記録しています。

まとめ

自動車販売業の経営課題は、①中古車の仕入価格高騰による利益率悪化②小規模事業者の連鎖的な倒産・休廃業③ビッグモーター事件後の信頼回復コスト・コンプライアンス対応負担④業種内で突出して高い後継者不在率(62.3%)と事業承継難⑤EVシフトによる新車ディーラーの収益構造転換⑥半導体不足・円安という外部環境変化への価格転嫁の限界、という6パターンが相互に絡み合う構造にあります。特に2025年の倒産137件(2016年以降最多)、うち中古車が73.7%を占める点と、新車(利益率3.1%改善)・中古車(2.1%悪化)で明暗が分かれている点が、この業種の切迫感を生んでいます。自動車販売業は古物営業法・メーカー系列ディーラー網という点で自動車整備業とは別の許認可・統計系統にあるため、商談前リサーチでは両者を混同せず、新車系か中古車系か・メーカー系列か独立系かといった一次情報で仮説を検証しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。