結論から: 全国の給油所数は27,009店(資源エネルギー庁「令和6年度末揮発油販売業者数及び給油所数」、2024年度末時点、前年度比▲405、30年連続減)まで減り続けています。ピーク時からの減少率には諸説ありますが、いずれの数値でも半分以下まで縮小したことは共通しています。帝国データバンクの集計では、この10年でガソリンスタンド事業者1,700社超が市場から退出し、2026年1-8月の倒産・休廃業解散は倒産19件・休廃業125件の計144件で、過去10年で最多のペースとなりました。地方のSS事業者の4社に1社(25%)、首都圏のSS事業者も2割超が赤字という状況です。給油所が3か所以下しかない「SS過疎地」は全1,718市町村中372〜381市町村に達し、地域の燃料供給インフラとしての課題も抱えています。本記事ではガソリンスタンド業界に特有の経営課題を6パターンに整理し、商談前リサーチで着目すべきポイントを出典付きで解説します。

ガソリンスタンドを「地域の燃料供給インフラ」として見る必要がある理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただしガソリンスタンド(SS)業界は、単に「1店舗の経営が苦しい」という話にとどまりません。資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック」(2025-05-21)によれば、給油所が3か所以下しかない「SS過疎地」は全1,718市町村中372市町村(後年の更新版では381市町村)に達しています。給油所が地域から消えることは、災害時の燃料供給拠点や、車で移動する高齢者の生活インフラが失われることを意味します。帝国データバンクの調査(2026-09-12発表)では地方のSS事業者の4社に1社(25%)、首都圏のSS事業者でも2割超が赤字とされており、都市部・地方を問わず経営の逆風が及んでいる点が、この業種の経営課題を読み解く出発点になります。

ガソリンスタンド業界の全体像を数字で見る

個別の課題に入る前に、業界全体の構造を確認します。資源エネルギー庁「令和6年度末揮発油販売業者数及び給油所数」(2025-07-30発表)によると、2024年度末の給油所数は27,009店で、前年度比▲405店、30年連続の減少となりました。ピーク時からの減少幅については、石油連盟「SS数の推移」が60,421か所(1995年3月末)としている一方、経済産業省発表を引用した別の記事では64,421か所(1994年度末)としており、同一時点を指すはずの数値が割れています。本記事ではこの点を「諸説あり」と明記したうえで、いずれの数値であってもピーク比で半分以下まで給油所数が減っている、という大きな傾向自体は共通していると捉えます。一方でセルフSS(セルフサービス方式の給油所)は、1998年の規制緩和以降着実に普及しており、石油連盟データでは2024年度末で10,915か所、普及率は全給油所の約40%に達しています。店舗数が減る一方で、省人化を進めたセルフSSへの構造転換が進んでいる、という二つの流れが同時に起きています。

ガソリンスタンド業界の経営課題、主要な6パターン

ここからは、確認できる一次データと、定性的な傾向にとどまる部分を区別しながら、ガソリンスタンド業界に特有の経営課題を6パターンに整理します。

①需要構造そのものの縮小(燃費向上・人口減少・EV/HV普及)

給油所数が30年連続で減少している背景には、単純な店舗の過剰というだけでなく、需要構造そのものの縮小があります。自動車の燃費性能向上、人口減少に伴う自動車保有台数の伸び悩み、そしてハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)の普及が進むほど、1台あたりのガソリン購入量そのものが減っていく構造的な逆風にさらされています。相手企業が燃料販売以外の収益源(洗車・車検・整備・EV充電・物販等)をどの程度確立できているかは、この需要縮小への耐性を見立てる手がかりになります。

②倒産・休廃業の増加(過去10年最多のペース)

帝国データバンク「『ガソリンスタンド』事業者の倒産・休廃業解散動向」(2026-09-12発表)によれば、2026年1-8月のガソリンスタンド事業者の倒産・休廃業解散は、倒産19件・休廃業125件の合計144件に達し、過去10年で最多のペースとなりました。同社の別調査「ガソリンスタンド業界の最新景況レポート」(2025-02-27発表)では、2024年通年の倒産・休廃業は184件で3年連続の増加、2025年1月の景気DIは33.1(前月比▲4.0pt、全産業比▲10.5pt)と、全産業平均を大きく下回る水準でした。この10年間で累計1,700社超のガソリンスタンド事業者が市場から退出しており、廃業が倒産を大きく上回る(倒産19件に対し休廃業125件)という比率は、赤字が続く前に事業をたたむ選択をする事業者が多いことを示唆しています。決算書の粗利率・固定費構造の推移を確認する視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標で解説しています。

③地下タンク改修義務という規制コスト

2010年の消防法改正により、埋設から40年を超える地下貯蔵タンクには、腐食を防ぐコーティング等の改修が義務化されました。報道によれば、改修コストは10kLタンク1本あたり140万〜300万円程度、複数のタンクを持つ標準的なガソリンスタンドでは合計で約1,000万円規模になるとされています。この数値は報道ベースであり、消防庁告示等の一次法令そのものでの確認はできていないため、あくまで参考値として扱う必要がありますが、老朽化した設備を抱える事業者にとって、燃料販売の利ざやだけでは吸収しづらい規模の投資が必要になる規制コストであることは間違いありません。相手企業の給油所の築年数・地下タンクの改修実績の有無は、この規制対応への負担度を見立てる手がかりになります。

④SS過疎地問題という地域インフラ課題

資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック」(2025-05-21)によれば、給油所が3か所以下の「SS過疎地」は全1,718市町村中372市町村(後年の更新版では381市町村)に達しています。SS過疎地では、給油所同士の集客競争が起きにくい一方で、絶対的な需要そのものが乏しく、1店舗あたりの経営を維持することが難しい構造にあります。給油所が地域から完全に消えると、住民の移動手段の確保や災害時の燃料供給拠点という観点でも影響が大きく、自治体による対策(共同経営支援・移動販売等)の動きも各地で見られます。対象企業がSS過疎地に該当する地域に立地しているか、近隣の給油所数はどの程度かは、経営環境の厳しさを見立てる視点になります。

⑤後継者難・事業承継

ガソリンスタンド業界固有の後継者不在率を示す一次統計は、本記事執筆時点では確認できませんでした。帝国データバンクの「後継者不在率動向調査」もSS業界単体の集計は公表していないため、本記事では数値化せず、定性的な傾向としてのみ扱います。ただし、①〜④で見た需要縮小・倒産休廃業の増加・規制コストの重さ・地域の需要不足という複数の逆風が同時に存在する業界であることを踏まえると、後継者が事業を引き継ぐ判断をしにくい経営環境にあることは推測できます。代表者の年齢構成・給油所の運営年数・複数店舗展開の有無は、承継の緊急度を見立てる手がかりになりますが、断定的な評価は避け、個別に確認する必要があります。

⑥価格転嫁の難しさというジレンマ

ガソリンスタンドは仕入価格(原油価格・輸入コスト)の変動を大きく受けながら、店頭価格は近隣店舗との価格競争にさらされやすい業種です。値下げによって集客を維持しようとすれば利ざやが縮小し、値上げによって利ざやを確保しようとすれば販売量が落ち込みかねないというジレンマを抱えています。倒産・休廃業が過去10年で最多のペースという状況は、この価格競争に耐えられない事業者が退出している構図を反映している可能性があります。相手企業が燃料販売以外の収益源をどの程度確立し、価格競争に依存しない収益構造を作れているかは、経営の安定度を見立てる重要な視点です。

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商談前に見ておきたいガソリンスタンド特有の公開情報

ガソリンスタンドの企業をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • SS過疎地マップ・地域の給油所密度: 資源エネルギー庁等が公表する情報から、対象企業が立地する地域の給油所数・SS過疎地への該当状況を確認できる。
  • 地下タンクの改修状況: 給油所の築年数や、地下タンク改修に関する自治体・消防への届出状況は、規制対応への投資余力を見立てる手がかりになる。
  • 併業展開の状況: 洗車・車検・整備・EV充電設備・コンビニ併設・物販など、燃料販売以外の収益源をどの程度確立しているかは、自社サイトや店舗の実態から確認できる。
  • セルフ化の有無: セルフSSかフルサービスSSかは、人件費構造や1店舗あたりの必要人員数の見立てに直結する。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。燃料費高騰やEV化への対応という観点では自動車整備業の経営課題5選やタクシー業の経営課題6選とも接点がありますが、ガソリンスタンドは消防法上の危険物取扱・地下タンク改修義務という他の運輸関連業種にはない独自の規制コストを抱えている点が特徴です。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。

よくある質問

ガソリンスタンドは本当に減っているのですか

はい。資源エネルギー庁「令和6年度末揮発油販売業者数及び給油所数」(2025-07-30発表)によれば、2024年度末の給油所数は27,009店で、前年度比▲405店、30年連続の減少です。ピーク時からの減少幅は資料によって60,421か所(1995年3月末、石油連盟)・64,421か所(1994年度末、経済産業省発表を引用した記事)と数値が割れており「諸説あり」ですが、いずれの数値でも大幅に減少していることは共通しています。

SS過疎地とは何ですか

給油所が3か所以下しかない市町村を指し、資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック」(2025-05-21)では全1,718市町村中372市町村がこれに該当するとされています(後年の更新版では381市町村としている資料もあります)。給油所が地域から消えることは、住民の移動手段の確保や災害時の燃料供給拠点という観点でも影響が大きい問題です。

地下タンク改修義務とはどのようなものですか

2010年の消防法改正により、埋設から40年を超える地下貯蔵タンクにコーティング等の改修が義務化されました。報道では10kLタンク1本あたり140万〜300万円程度、標準的なガソリンスタンドで合計約1,000万円規模になるとされていますが、この数値は報道ベースであり一次法令そのものでの確認はできていません。

ガソリンスタンド業界の後継者不在率はどのくらいですか

ガソリンスタンド業界単体の後継者不在率を示す一次統計は確認できませんでした。帝国データバンクの「後継者不在率動向調査」もSS業界単体の集計を公表していないため、本記事では数値化せず定性的な傾向として扱っています。一方で、2026年1-8月の倒産・休廃業解散は倒産19件・休廃業125件の計144件(過去10年最多)、この10年で累計1,700社超が市場から退出しているというデータから、事業継続そのものが難しくなっている事業者が多いことがうかがえます。

まとめ

ガソリンスタンド業界の経営課題を整理すると、①需要構造そのものの縮小(燃費向上・人口減少・EV/HV普及)②倒産・休廃業の増加(過去10年最多のペース)③地下タンク改修義務という規制コスト④SS過疎地問題という地域インフラ課題⑤後継者難・事業承継⑥価格転嫁の難しさというジレンマ、という6パターンが相互に絡み合う構造にあります。給油所数が30年連続で減少する一方、地方の4社に1社・首都圏の2割超が赤字という直近のデータは、業界全体の縮小と個社の経営難が同時進行していることを示しています。個社の状況を業界全体の縮小トレンドだけで決めつけず、SS過疎地への該当状況・地下タンクの改修状況・併業展開の実態・セルフ化の有無といった一次情報で仮説を検証しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。