結論から: 造園業(外構工事・エクステリア工事を含む)の経営課題は、そもそも業種単体の統計がほとんど存在しないという点に特徴があります。帝国データバンクの建設業倒産動向調査にも後継者不在率調査にも「造園」という語は登場せず、国土交通省の建設業許可業者数調査でも造園工事業単体の内訳は公表されていません。この「統計の空白」自体が、造園業を商談前リサーチする際の最大の盲点です。本記事では、確認できる一次データと、建設業全体からの類推にとどまる部分を明確に区別しながら、造園業に特有の経営課題を6パターンに整理して解説します。

造園業の経営課題を、なぜ「建設業のデータ」だけで語れないのか

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。造園工事業は、総務省の日本標準産業分類(JISC)上「建設業>総合工事業>土木工事業(舗装工事業を除く)>造園工事業」に位置づけられています(出典)。つまり分類上は建設業の一部です。ところが、建設業を対象とした主要な統計調査を実際に確認すると、造園工事業だけを取り出した数値がほとんど見当たりません。建設業の経営課題6選電気工事業の経営課題6選で扱った電気工事業(設備工事区分)は、少なくとも上位区分としての倒産件数が公表されていましたが、造園工事業はそれすら確認できません。「建設業だから建設業の数字を見ればいい」では実態に届かない、というのが造園業リサーチの出発点になります。

造園業の全体像を数字で見る(公表されている数値と、されていない数値)

国土交通省「建設業許可業者数調査」によると、令和6年度末時点の建設業許可業者数は48万3,700業者で、前年度比4,317業者(0.9%)増と2年連続の増加となりました(出典)。ただしこの調査でも、29ある建設業の業種区分のうち造園工事業単体の許可業者数の内訳は本記事執筆時点で確認できていません(要検証)。また建設物価調査会がまとめた「造園工事業の現状と展望」によると、造園工事業の完成工事高は1995年度の約1.1兆円規模から2017年度には約4,000億円規模まで縮小し、2020年度には約7,000億円台まで回復したとされています(出典)。ただし年度ごとの正確な数値や算出方法の詳細までは一次資料で確認しきれていないため、あくまで長期的な推移の傾向として捉えるにとどめます(要検証)。業界団体の加盟社数や就業者数についても複数の二次情報が出回っていますが、一次資料に到達できなかったため本記事では数値として採用していません。

造園業の経営課題、主要な6パターン

ここからは、確認できる一次データと、建設業全体からの類推にとどまる部分を区別しながら、造園業に特有の経営課題を6パターンに整理します。

①統計の空白そのものによる経営実態の見えにくさ

帝国データバンク「『建設業』倒産動向調査(2024年)」(出典)、および同社「『建設業』倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」(出典)のいずれにも、「造園」という語は登場しません。電気工事業であれば「設備工事」という上位区分の数値が公表されていましたが、造園工事業にはそうした上位区分の受け皿すら見当たらないのが実情です。統計に表れないということは、業界全体として倒産や休廃業が少ないことを意味するわけではなく、単に「集計区分として独立していない、あるいは公表されていない」だけの可能性があります。だからこそ、造園業の企業をリサーチする際は、業界統計に頼らず、個社の決算・登記・求人票といった一次情報から直接あたりをつける必要性が、他業種以上に高い業種だといえます。

②建設業全体に波及する価格転嫁の遅れ(造園業単体の数値ではない点に注意)

帝国データバンクの調査によると、2024年の建設業倒産(負債1,000万円以上)は1,890件で過去10年最多となり、建設業全体の価格転嫁率は43.7%と、全業種平均(44.9%)を下回りました。また倒産企業の従業員規模別では「10人未満」が構成比92.2%を占めています(出典)。これらはあくまで建設業全体の数値であり、造園工事業単体の価格転嫁率・倒産件数を示すものではない点は明確にしておく必要があります。ただし、資材(植栽・石材・木材・エクステリア資材等)や燃料の価格高騰という圧力自体は造園業にも等しくかかっていると考えられるため、建設業全体の傾向を参考値として押さえたうえで、個社の見積り・契約条件から価格転嫁の実態を確認する視点が欠かせません。決算書の粗利率・工事原価率の推移を確認する視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標で解説しています。

③技能承継の難しさ(資格の実務経験年数要件)

造園業には、造園技能士や造園施工管理技士といった専門資格があり、上位級の取得には一定年数の実務経験が求められます(例として1級では実務経験7年程度が要件とされています)。建設物価調査会の資料でも、こうした実務経験年数要件の存在が、若手への技能承継を難しくしている一因として指摘されています(出典)。植栽の選定・剪定・庭園デザインといった造園業特有の技能は、資格取得だけでなく現場での経験の蓄積が前提になるため、ベテランが引退する時期と若手の育成が間に合うタイミングが噛み合わなければ、技術そのものが失われるリスクがあります。求人票や公式サイトで、資格取得支援制度や若手育成の体制をどこまで発信しているかは、この課題への向き合い方を推測する手がかりになります。

④小規模事業者中心の構造(建設業全体からの類推、要検証)

帝国データバンクの調査では、建設業倒産企業の92.2%が従業員「10人未満」でした(出典)。造園業も個人事業主・小規模法人が多い業種だとされていますが、これは建設業全体の傾向からの類推であり、造園工事業単体で小規模事業者が何%を占めるかを示す一次データは確認できていません(要検証)。業界団体の加盟社数や、その中で従業員10人未満の企業が占める割合についても複数の二次情報がありますが、出典を特定できなかったため本記事では数値として採用していません。個社の規模感を把握するには、求人票の募集人数や、法人番号公表サイト・決算公告等の一次情報を個別に確認することをおすすめします。

⑤後継者不在と事業承継M&A(建設業全体は業種別最高水準)

帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、建設業の後継者不在率は57.3%で、調査対象業種の中で最も高い水準でした(出典)。造園工事業単体の後継者不在率を示す一次データは確認できていませんが、個人経営・家族経営の色合いが強いとされる業種特性を踏まえると、建設業全体の傾向と大きく乖離しない可能性はあります(あくまで推測の域を出ません)。近年は造園業界でも、後継者不在を背景としたM&A仲介会社の営業活動が活発化しているとされる動きが見られますが、これも特定の仲介会社発の情報にとどまるため、個社の状況は代表者の年齢構成や登記情報の変化から個別に確認する必要があります。

⑥DX・IT化の遅れ(定性的な傾向、一次統計なし)

造園業における見積り・工程管理・顧客とのやり取りが、いまだ紙・電話・FAX中心で行われている現場は少なくないとされています。ただし、これを裏付ける造園業単体の定量的な統計(IT導入率やクラウドツール利用率など)は確認できていません(要検証)。中小企業全般のDXの遅れについてはDXが遅れている業界の特徴で整理した傾向が造園業にも当てはまる可能性はありますが、断定はできない段階です。公式サイトでの施工事例の見せ方(写真・ビフォーアフター・見積りフォームの有無)や、口コミサイトでの対応スピードへの言及は、DXへの取組状況を推測する数少ない手がかりになります。

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造園工事業とエクステリア工事・外構工事の違いにも目を向ける

「造園業」と一口に言っても、庭園・植栽を中心とする狭義の造園工事と、門扉・フェンス・カーポート・駐車場舗装などを扱うエクステリア工事・外構工事とでは、実務上の重なりと違いの両方があります。日本標準産業分類上はいずれも「造園工事業」に整理されることが多いものの、実際の企業は「造園専業」「外構・エクステリア専業」「両方を手掛ける総合型」のいずれかに分かれており、この違いによって主要な取引先(個人邸中心か、ハウスメーカー・工務店からの下請中心か、公共工事(公園・緑地整備等)中心か)や季節による繁閑の差も変わってきます。相手企業がどの領域を中心にしているかは、経営課題への向き合い方を見立てるうえで欠かせない視点です。仮説の立て方は仮説営業とは|仮説構築の4ステップと立て方で解説しています。

商談前に見ておきたい造園業特有の公開情報

造園業の企業をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、統計に表れない実態の当たりをつけやすくなります。

  • 建設業許可(造園工事業)の有無・更新回数: 許可を取得しているか、創業からの年数の目安になる更新回数。
  • 有資格者の在籍状況: 造園技能士・造園施工管理技士等の保有者数や等級を、求人票や公式サイトでどこまで発信しているか。
  • 取扱領域: 庭園・植栽中心の造園専業か、門扉・フェンス・カーポート等のエクステリア工事も手掛けるか、公共造園(公園・緑地整備)の実績があるか。
  • 元請・下請の別と主要取引先: 個人邸の直接受注が中心か、ハウスメーカー・工務店からの下請が中心か、官公庁発注の実績があるか。
  • 代表者・役員の年齢構成、登記の動き: 事業承継が近い時期に来ているかどうかの手がかりになる。
  • 施工事例・見積りフォームの公開状況: 公式サイトでの発信の充実度は、営業・DXへの投資姿勢を推測する材料になる。

これらは業界統計から逆算できない分、一件ずつの個社リサーチに頼らざるを得ない部分が他業種より多いのが実情です。会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、統計が存在しない業種であっても、当たりをつける作業そのものを効率化できます。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。

よくある質問

造園業単体の倒産件数はどのくらいですか

帝国データバンクの「建設業」倒産動向調査(2024年)にも、2026年上半期の倒産・休廃業解散動向調査にも「造園」という語自体が登場せず、造園工事業単体の倒産件数を示す統計は確認できていません。建設業全体では2024年の倒産件数が1,890件と過去10年で最多になっていますが、この数値も造園業単体のものではありません。

造園業の後継者不在率はどのくらいですか

帝国データバンクの調査(2025年)では、建設業全体の後継者不在率は57.3%で、調査対象業種の中で最も高い水準でした。ただし造園工事業単体の後継者不在率を示す一次データは確認できておらず、建設業全体の数値をそのまま造園業にあてはめることはできません。

造園業の許可業者数はどれくらいありますか

国土交通省の調査によると、建設業許可業者数全体は令和6年度末時点で48万3,700業者(前年度比4,317業者、0.9%増)です。ただし造園工事業単体の許可業者数の内訳は本記事執筆時点で公表を確認できていません(要検証)。

造園業と外構工事・エクステリア工事は同じ業種ですか

日本標準産業分類上はいずれも「造園工事業」に整理されることが多いですが、実務上は庭園・植栽中心の造園専業、門扉・フェンス・カーポート等を扱うエクステリア・外構専業、両方を手掛ける総合型に分かれます。相手企業がどの領域を中心にしているかは個別に確認する必要があります。

まとめ

造園業(外構工事・エクステリア工事を含む)の経営課題を整理すると、①統計の空白そのものによる経営実態の見えにくさ②建設業全体に波及する価格転嫁の遅れ③技能承継の難しさ④小規模事業者中心の構造(要検証)⑤後継者不在と事業承継M&A⑥DX・IT化の遅れ(一次統計なし)という6パターンが浮かび上がります。他業種と大きく異なるのは、業界統計そのものが極めて限られているという点です。帝国データバンクの主要な調査にすら「造園」という語が登場しない以上、業界平均を根拠に個社の状況を決めつけることはできません。建設業許可・有資格者の在籍状況・取扱領域・決算書・登記情報といった一次情報を一件ずつ確認しながら仮説を立てることが、統計に頼れない造園業においては、決裁者に届く提案への一番の近道になります。