結論から: 解体工事業は、建設業許可業種としては2016年6月に新設されたばかりの若い業種です。国土交通省の調査によると、許可業者数は平成29年3月末の13,798業者から令和元年5月には43,186業者(前年比+47.2%)へ急拡大し、直近(2025年度末)でも前年比+2,255業者(+3.2%)と、増加した23業種の中で最大の増加数を記録しています。ところが東京商工リサーチの調査では、同じ期間に倒産件数も2年連続で過去最多を更新中です(2024年度54件)。「業者数は増え続けているのに倒産も増え続けている」という一見矛盾した二重構造こそが、解体工事業を商談前リサーチする際に押さえておくべき最大のポイントです。本記事では、この構造と、2026年1月からさらに強化されるアスベスト規制への対応負担を中心に、経営課題を6パターンに整理して解説します。

解体工事業は、なぜ「急拡大」と「倒産増」が同時に起きているのか

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。解体工事業は、建設業許可29業種の中でも比較的新しく、2016年6月の建設業法改正で新設された業種区分です。それ以前は「とび・土工工事業」等の許可で解体工事を請け負うことができましたが、新設以降は原則として解体工事業の許可が必要になりました。建設業の経営課題6選電気工事業の経営課題6選造園業の経営課題6選で扱ってきた他の建設系業種と比べても、解体工事業は「許可業種としての歴史が浅いまま、短期間で業者数が急増した」という点で異なる経過をたどっています。この急拡大の経緯を数字で押さえたうえで、なぜ同時に倒産も増えているのかを見ていきます。

許可業者数の推移を数字で見る(急拡大カーブ)

国土交通省「建設業許可業者数調査」によると、解体工事業の許可業者数は次のように推移しています。新設直後の平成29年3月末時点で13,798業者だったものが、令和元年5月時点では43,186業者まで拡大し、これは前年比+47.2%という急増でした。さらに2021年3月末時点では60,926業者に達しています(出典: 国土交通省「建設業許可業者数調査」出典)。直近の2025年度末(令和7年度末、2026年3月末)時点のデータでも、解体工事業の許可業者数は前年比+2,255業者(+3.2%)の増加を記録しており、これは29ある建設業許可業種のうち増加した23業種の中で最大の増加数でした。建設業許可業者数全体は483,823業者で、3年連続の増加となっています。新設から10年に満たない期間で業者数が3倍以上に膨らみ、なお増加数トップを走り続けているという事実は、それだけ新規参入のハードルが他の建設系業種より低く見えている(あるいは実際に低い)可能性を示唆しています。

倒産動向を数字で見る(2年連続で過去最多を更新)

東京商工リサーチが2025年3月7日に発表した「解体工事業の倒産動向調査」によると、2024年度(2024年4月〜2025年2月)の解体工事業の倒産件数は54件で、前年度の53件を上回り、2年連続で過去最多を更新しました(出典)。原因別で見ると「受注不振」が38件で全体の70.3%を占め、主因となっています。倒産企業の規模を見ると、資本金「1000万円未満」が87.0%、従業員「5人未満」が62.9%を占めており、零細層への集中が鮮明です。許可業者数が急拡大し新規参入が相次ぐ一方で、受注獲得競争が激化し、体力の乏しい零細事業者から先に淘汰されている構図が、この2つの統計を重ねると見えてきます。決算書の粗利率・工事原価率の推移を確認する視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標で解説しています。

解体工事業の経営課題、主要な6パターン

ここからは、確認できる一次データと、定性的な傾向にとどまる部分を区別しながら、解体工事業に特有の経営課題を6パターンに整理します。

①新設業種特有の急拡大と過当競争

解体工事業は2016年6月の建設業法改正で新設された比較的若い許可業種です。国土交通省の調査では、平成29年3月末の13,798業者から令和元年5月の43,186業者へと2年強で3倍以上に急拡大し、直近でも増加数が29業種中トップという状況が続いています。他の建設系業種に比べて参入障壁が低く見える(あるいは実際に低い)ことが新規参入を呼び込み続けている一方で、供給過多による受注単価の下落・競争激化を招いている可能性があります。相手企業が創業何年目で、この急拡大期のどのタイミングで参入したのかは、経営体力を見立てるうえでの手がかりになります。

②倒産件数2年連続最多・零細層への集中

東京商工リサーチの調査では、2024年度の解体工事業の倒産は54件で2年連続の過去最多更新、原因の70.3%が受注不振でした。資本金1000万円未満が87.0%、従業員5人未満が62.9%を占めるという数字は、業界全体というより「零細な新規参入組」に倒産が集中している可能性を示しています。許可業者数の急拡大と倒産件数の増加が同じ時期に同時進行しているという事実そのものが、解体工事業をリサーチする際の最重要ポイントです。

③段階的なアスベスト規制強化によるコスト・資格者確保負担

石綿障害予防規則(石綿則)は2020年に改正され、2021年4月には事前調査結果の記録保存が義務化されました。さらに2023年10月からは、建築物石綿含有建材調査者等の有資格者による事前調査の実施そのものが義務化されています(出典)。加えて2026年1月1日からは、建築物だけでなく煙突・貯水槽等の工作物についても有資格者による事前調査が義務化される予定で、規制は一段階ずつ強化され続けています。有資格者の確保・育成にはコストと時間がかかるため、この段階的な規制強化に対応できる体制を整えているかどうかは、企業ごとの体力差が表れやすいポイントです。求人票や公式サイトで有資格者の在籍状況をどこまで発信しているかは、対応状況を推測する手がかりになります。

④後継者不在・高齢化(定性情報・要検証)

解体工事業単体の後継者不在率や経営者の平均年齢を示す一次データは、本記事執筆時点で確認できていません(要検証)。建設業全体では後継者不在が業種別でも高い水準にあるとされていますが、これをそのまま解体工事業に当てはめることはできません。解体工事業は許可業種として新設から10年に満たないため、経営者の年齢構成そのものが他の建設系業種と異なる可能性もあります。個社の状況は、代表者の年齢や登記情報の変化から個別に確認する必要があります。

⑤建設リサイクル法など許認可の複雑さ

解体工事は建設業許可(解体工事業)に加え、建設リサイクル法に基づく届出や、廃棄物処理法に関連する各種手続きなど、他の建設系業種と比べても関連する法規制・許認可の種類が多い業種です。前述のアスベスト関連規制もこれに重なるため、コンプライアンス対応にかかる事務負担は決して小さくありません。許認可の種類が多いこと自体が新規参入のハードルになっていない(むしろ許可業者数は急拡大している)という現状を踏まえると、法令対応の実態に企業間で差が生じやすい構造だと考えられます。

⑥価格転嫁の限界

解体工事業単体の価格転嫁率を示す一次データは確認できていませんが、東京商工リサーチの倒産動向調査で「受注不振」が主因の70.3%を占めている事実は、単価下落や受注競争の激化を裏付ける傍証といえます。許可業者数が急拡大し供給過多の傾向がある中で、資材処分費・人件費・アスベスト対応コストの上昇分を価格に転嫁しきれない事業者から、受注不振・倒産に至っている可能性があります。個社の価格転嫁の実態は、決算書の粗利率推移や見積り条件から確認する視点が欠かせません。

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商談前に見ておきたい解体工事業特有の公開情報

解体工事業の企業をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、急拡大と過当競争が同時進行する業界構造の中で相手企業の立ち位置を見立てやすくなります。

  • 建設業許可(解体工事業)の有無・取得時期: 2016年の新設直後から参入しているか、急拡大期以降の新規参入かで経営の蓄積が異なる可能性がある。
  • アスベスト関連の有資格者の在籍状況: 建築物石綿含有建材調査者等の保有者数を、求人票や公式サイトでどこまで発信しているか。2026年1月からの工作物への調査義務拡大への対応状況の手がかりになる。
  • 元請・下請の別と主要取引先: 個人邸・小規模物件の直接受注が中心か、ゼネコン・ハウスメーカーからの下請が中心か、公共工事の実績があるか。
  • 建設リサイクル法の届出実績・産業廃棄物処理の体制: 自社処分か外部委託か、処分ルートの明確さ。
  • 代表者・役員の年齢構成、登記の動き: 事業承継が近い時期に来ているかどうかの手がかりになる。
  • 施工事例・見積りフォームの公開状況: 公式サイトでの発信の充実度は、営業・DXへの投資姿勢を推測する材料になる。

許可業者数が急拡大する一方で倒産も増えているという二重構造がある業種だからこそ、業界平均のイメージだけで相手企業の経営状態を判断するのは危険です。会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、こうした業種特有の当たりをつける作業を効率化できます。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。仮説の立て方は仮説営業とは|仮説構築の4ステップと立て方もご参照ください。

よくある質問

解体工事業の倒産件数はどのくらいですか

東京商工リサーチの調査(2025年3月7日発表)によると、2024年度(2024年4月〜2025年2月)の解体工事業の倒産件数は54件で、前年度の53件を上回り2年連続で過去最多を更新しました。原因別では受注不振が70.3%を占め主因となっています。

解体工事業の許可業者数はどれくらい増えていますか

国土交通省の調査によると、解体工事業の許可業者数は新設直後の平成29年3月末時点で13,798業者でしたが、令和元年5月時点では43,186業者(前年比+47.2%)、2021年3月末時点で60,926業者まで拡大しました。直近(2025年度末)でも前年比+2,255業者(+3.2%)の増加で、増加した23業種の中で最大の増加数でした。

解体工事業のアスベスト規制はどう変わっていますか

2020年の石綿則改正を経て、2021年4月に事前調査結果の記録保存が義務化、2023年10月からは有資格者による事前調査の実施が義務化されました。2026年1月1日からは建築物だけでなく煙突・貯水槽等の工作物についても有資格者による事前調査が義務化される予定で、段階的に規制が強化されています。

解体工事業の後継者不在率はどのくらいですか

解体工事業単体の後継者不在率を示す一次データは、本記事執筆時点で確認できていません(要検証)。解体工事業は建設業許可業種としては2016年新設と歴史が浅いため、他の建設系業種の数値をそのまま当てはめることはできず、個社の代表者年齢や登記情報から個別に確認する必要があります。

まとめ

解体工事業の経営課題を整理すると、①新設業種特有の急拡大と過当競争②倒産件数2年連続最多・零細層への集中③段階的なアスベスト規制強化によるコスト・資格者確保負担(2026年1月の工作物拡大含む)④後継者不在・高齢化(要検証)⑤建設リサイクル法など許認可の複雑さ⑥価格転嫁の限界という6パターンが浮かび上がります。他の建設系業種と大きく異なるのは、許可業者数の急拡大と倒産件数の増加が同じ時期に同時進行しているという二重構造です。業者数が増えているから業界が好調とは限らず、むしろ過当競争と規制強化コストの負担が零細事業者を追い詰めている可能性があります。建設業許可の取得時期・有資格者の在籍状況・元請下請の別・決算書・登記情報といった一次情報を一件ずつ確認しながら仮説を立てることが、解体工事業のような急拡大業種においては、決裁者に届く提案への一番の近道になります。