結論から: 集団給食(事業所・病院・学校・保育所等への給食受託)の市場規模は、矢野経済研究所の調査によると2023年に3兆1,741億円(前年比6.2%増)に達し、特に事業所給食は前年比10.3%増と成長基調にあります。ところが東京商工リサーチが給食事業者217社(大企業11社・中小206社)を調べた業績動向調査では、中小企業の21.8%、売上10億円未満に限ると23.8%が赤字という状況が明らかになりました。帝国データバンクの調査でも、給食事業者374社のうち6割以上が赤字・減益、1割超が3年連続赤字に陥っており、2023年1〜10月の給食企業倒産は17件と過去5年で最多ペースだと報じられています。「市場は伸びているのに、現場は赤字」という一見矛盾する構造の背景には、食材費・人件費・光熱費の高騰分を一般競争入札の価格競争ゆえに転嫁しきれないという給食受託業特有の事情があります。本記事ではこれらを6パターンに整理して解説します。

給食受託業界で何が起きているか、まず全体像をつかむ

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。給食受託業は、飲食業の経営課題6選で扱った一般外食業とは異なり、事業所・病院・学校・保育所など発注者との契約(多くは一般競争入札や随意契約)に基づいて継続的に給食を提供するBtoB(BtoG含む)の受託事業という特徴があります。発注者ごとに事業所給食・病院給食・学校給食・保育所給食と分野が分かれ、それぞれ単価水準や契約形態が異なるため、同じ給食受託業でもどの分野を主力にしているかで経営の実態は大きく変わります。まずは市場規模の成長データと、収益性に関する2つの一次データから、業界全体で何が起きているかを数字で押さえます。

一次データで見る現状

矢野経済研究所の調査(報道等で引用)によると、集団給食市場は2023年に3兆1,741億円(前年比6.2%増)に達しました。内訳を見ると、事業所給食1兆5,884億円(前年比10.3%増)、病院給食7,513億円(同2.8%増)、学校給食4,832億円(同4%増)、保育所給食3,512億円(同0.7%減)となっており、給食市場全体(集団給食を含む6分野計)は2023年度4兆7,915億円、2028年度には5兆1,254億円まで拡大すると予測されています(同社「2026年版 給食市場の展望と戦略」)。市場全体としては拡大基調にあり、特に事業所給食の伸びが目立ちます。

ところがこの成長を裏付けにくくするように、東京商工リサーチが給食事業者217社(大企業11社・中小206社)を対象に行った業績動向調査では、赤字企業の割合が大企業18.1%・中小21.8%、売上10億円未満の事業者に限ると23.8%に達しました。増収企業の割合も大企業75.0%に対し中小44.4%にとどまり、利益は大企業で18.7%減、中小で27.3%減と、増収でも利益が確保できていない実態が浮かび上がります(出典)。帝国データバンクの調査でも、給食事業者374社のうち6割以上が赤字・減益、1割超が3年連続赤字に陥っており、2023年1〜10月の給食企業倒産は17件で過去5年最多ペースだと報じられています(出典)。決算書の粗利率・固定費比率を確認する視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標で解説しています。

給食受託業の経営課題、主要な6パターン

ここからは、確認できる一次データと、個別事例のように報道はあるものの一次資料での詳細確認ができていない部分を区別しながら、給食受託業に特有の経営課題を6パターンに整理します。

①一般競争入札による低価格競争と価格転嫁の限界

帝国データバンクの調査は、給食事業者の倒産増加の主因として、食材費高騰(月2,000品目超の値上げ)・人件費上昇・光熱費増加に加え、一般競争入札による低価格競争の常態化を挙げています(出典)。給食受託は多くの場合、発注者(企業・病院・学校・自治体等)が複数年契約の入札を行うため、契約期間中にコストが急騰しても契約単価をすぐに見直せず、価格転嫁が構造的に遅れやすいという事情があります。相手先が入札更新のタイミングをどう迎えているかは、経営状況を見立てる手がかりになります。

②増収でも利益が確保できない赤字体質

東京商工リサーチの調査では、給食事業者の赤字割合は中小206社で21.8%、売上10億円未満に限ると23.8%に達し、増収企業の割合が大企業75.0%・中小44.4%であるにもかかわらず、利益は大企業18.7%減・中小27.3%減という結果になりました(出典)。売上が伸びても原価・人件費の上昇に利益が追いつかない「増収減益」構造が、規模の小さい事業者ほど顕著に表れています。

③突然の撤退・倒産が招く「食のインフラ」停止リスク

2023年には、広島の給食受託業者ホーユーが資金繰りの悪化により学校・企業への給食供給を停止したと報じられました。また、1970年創業の老舗給食企業「一冨士」も、入札での低価格競争による採算悪化を背景に破産したとされています。いずれも報道ベースの事例であり、負債総額等の詳細な一次資料は本記事執筆時点で確認できていませんが、給食受託業の経営破綻は学校・病院・事業所の食事提供そのものを止めかねない性質を持つ点で、発注者側にとっても事業者選定時のリスク要因になります。

④人手不足と調理スタッフの採用難

集団給食の現場は調理・盛付・配膳・衛生管理といった対人業務が中心で、機械化・自動化が進めにくい労働集約型の業種です。人件費の上昇圧力が経営を圧迫する一因になっている一方で(前述の帝国データバンク調査)、採用難によって必要な人員を十分に確保できない事業者も少なくないと見られます。求人票での待遇・シフト体制・調理未経験者向け研修の有無は、採用力を見立てる手がかりになります。

⑤事業所給食・病院給食・学校給食など委託先ごとに異なる収益性

矢野経済研究所の調査によれば、2023年の伸び率は事業所給食が前年比10.3%増と大きい一方、保育所給食は同0.7%減となっており、委託先の分野によって市場の勢いが異なります。単価水準・契約更新サイクル・食数変動リスクも分野ごとに異なるため、同じ給食受託業者でもどの分野を主力にしているかによって経営の安定度は変わってくると考えられます。相手先の受託分野の構成比は、事業の安定性を見立てる手がかりになります。

⑥後継者不足・事業承継に関する情報空白

給食受託業単体を対象にした後継者不在率の一次統計は、本記事執筆時点で確認できていません。全業種横断の後継者不在率調査は帝国データバンク等が公表していますが、給食受託業に特化した数値が存在しないこと自体が、この業種の経営課題の一つと言えます。中小・個人経営に近い形態の給食受託事業者も少なくないとみられる中、代表者の年齢構成や法人登記の動きは、事業承継の緊急度を見立てる際の参考情報になります。

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商談前に見ておきたい給食受託業界特有の公開情報

給食受託業界の企業(法人・事業所)をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、市場拡大と赤字化が同時進行する業界構造の中で相手企業の立ち位置を見立てやすくなります。

  • 矢野経済研究所の集団給食市場調査: 事業所給食・病院給食・学校給食・保育所給食など分野別の市場規模・成長率を確認できる。
  • 東京商工リサーチ・帝国データバンクの給食事業者業績動向調査: 赤字割合・倒産件数など経営実態の一次データ。
  • 文部科学省「学校給食実施状況等調査」: 学校給食の運営実態が公表されているが、外部委託(民間委託)率の具体的な数値は本記事執筆時点で確認できていないため割愛する。相手企業が学校給食を受託している場合は、この調査の最新版で地域の委託動向を確認するとよい。
  • 対象法人の主力分野: 事業所給食・病院給食・学校給食・保育所給食のどれを主力としているか(伸び率が分野ごとに異なるため)。
  • 入札・契約の更新時期: 直近で価格転嫁の機会があったかどうかの見立てに使える。
  • 調理スタッフの求人状況: 求人票での待遇・研修体制の記載から採用力を見立てる。

集団給食市場全体は3兆円超で成長基調にある一方、給食事業者の6割以上が赤字・減益という一見矛盾する構造を持つ給食受託業界だからこそ、「市場が伸びているから経営も安定している」という業界全体のイメージだけで相手企業の経営状態を判断するのは危険です。会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、こうした業種特有の当たりをつける作業を効率化できます。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。仮説の立て方は仮説営業とは|仮説構築の4ステップと立て方もご参照ください。

よくある質問

給食受託業界で倒産が増えているのはなぜですか?

帝国データバンクの調査によると、食材費高騰(月2,000品目超の値上げ)・人件費上昇・光熱費増加に加え、一般競争入札による低価格競争が常態化しており、契約単価にコスト上昇分を転嫁しにくい構造が主な要因とされています。2023年1〜10月の倒産は17件で過去5年最多ペースと報じられました。

給食事業者の経営はどのくらい厳しい状況ですか(赤字割合等)?

東京商工リサーチの調査(給食事業者217社対象)では、中小企業の21.8%、売上10億円未満に限ると23.8%が赤字です。帝国データバンクの調査でも、給食事業者374社のうち6割以上が赤字・減益、1割超が3年連続赤字という結果が出ています。

学校給食の運営を外部委託する動きは今後も続きますか?

文部科学省「学校給食実施状況等調査」で外部委託の実態が公表されていますが、具体的な委託率は本記事執筆時点で確認できていないため断定はできません。集団給食市場全体では学校給食も前年比4%増(2023年、矢野経済研究所調査)と拡大傾向にあります。

給食受託業の経営課題を解決するにはどのような対策が有効ですか?

一次データから見える構造としては、入札契約における価格転嫁の仕組みづくり、主力分野(事業所・病院・学校・保育所)ごとの収益性の見極め、調理スタッフの採用力強化などが論点になります。個別企業にどの課題が当てはまるかは、決算・求人票・契約状況等の公開情報を確認したうえで仮説を立てる必要があります。

まとめ

給食受託業の経営課題を整理すると、①一般競争入札による低価格競争と価格転嫁の限界②増収でも利益が確保できない赤字体質③突然の撤退・倒産が招く「食のインフラ」停止リスク④人手不足と調理スタッフの採用難⑤事業所給食・病院給食・学校給食など委託先ごとに異なる収益性⑥後継者不足・事業承継に関する情報空白という6パターンが浮かび上がります。他業種と大きく異なるのは、集団給食市場全体が3兆円超・前年比6.2%増と成長基調にある一方で、給食事業者の6割以上が赤字・減益という一見矛盾する需給構造です。市場が伸びていても、一般競争入札という契約構造ゆえに価格転嫁が追いつかず、小規模事業者ほど採算が圧迫されやすい実態があります。相手企業の主力分野・入札契約の更新時期・調理スタッフの採用状況・決算書といった一次情報を一件ずつ確認しながら仮説を立てることが、成長と赤字が同居する給食受託業のような業種においては、決裁者に届く提案への一番の近道になります。

参考情報: 東京商工リサーチ「全国『給食事業者』業績動向調査」 / 帝国データバンク「『安い給食』物価高で限界。給食企業の倒産、2年連続増加」