結論から: 厚生労働省の「衛生行政報告例」(令和6年度末)では、公衆浴場は全体で23,668施設とほぼ横ばいですが、入浴料金が都道府県の統制を受ける「一般公衆浴場」(いわゆる銭湯等)は2,730施設で、令和2年度末の3,231施設から4年で501施設(15.5%)減りました。一方、ヘルスセンター型・サウナ・スポーツ施設併設などを含む「その他」は20,938施設で、同じ期間に1.0%増えています。料金には都道府県知事の統制額という上限があり、東京都は令和8年8月1日から大人600円になりました。この記事では、公衆浴場(銭湯・温浴施設)を商談前に調べるときの経営課題を、公開情報から6パターンに整理します。

公衆浴場を「銭湯だけ」で括らない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし公衆浴場は、公衆浴場法に基づく都道府県知事の許可制で、料金が行政の統制を受けるタイプと受けないタイプが併存するなど、宿泊業やクリーニング業と同じ生活衛生関係営業の中でも固有の事情があります。同じ「風呂」でも、地域住民の日常利用を担う施設と、娯楽・保養型の施設では、経営の前提が異なります。商談前に、相手がどちらの区分なのかを確認することが出発点になります。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の令和6(2024)年度衛生行政報告例によると、令和6年度末の公衆浴場は23,668施設で、前年度から5施設の減少にとどまりました(出典)。内訳は次の通りです。

  • 一般公衆浴場: 2,730施設。令和2年度末3,231施設→3,120→3,000→2,847→2,730と毎年減り、4年で501施設(15.5%)減(当社計算)。令和6年度は前年度から117施設(4.1%)減。
  • その他の公衆浴場: 20,938施設。令和2年度末20,723施設から215施設(1.0%)増(当社計算)。令和6年度は前年度から112施設(0.5%)増。

公衆浴場全体に占める一般公衆浴場の割合は、令和2年度末の13.5%から令和6年度末の11.5%に下がっています(当社計算)。なお、統計上の「一般公衆浴場」は、入浴料金が都道府県知事の統制を受け、かつ施設の配置が都道府県条例で規制される施設を指し、厚生労働省の公衆浴場法概要では、銭湯のほか老人福祉センター等の浴場も含まれると説明されています(厚生労働省)。「その他」にもサウナや工場等の福利厚生浴場が含まれるため、数字をそのままスーパー銭湯の軒数として読むことはできません。

公衆浴場の経営課題、主要な6パターン

ここからは、公衆浴場に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①統制対象の一般公衆浴場の継続的な減少

一般公衆浴場は、令和2年度末から毎年100施設以上のペースで減っています。減少の理由そのものは統計から読み取れませんが、国は昭和56年に「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」を定め、銭湯の減少傾向に歯止めをかけるため、国や自治体が必要な措置をとるとしています。裏を返せば、行政が支援の枠組みを必要とする水準で施設数が推移してきた業種です。同業の閉鎖が続く地域では、残る施設に利用者が集まる側面もあれば、地域の担い手として負荷が増す側面もあり、単純にどちらとも断定できません。

②料金に上限がある構造(入浴料金の統制額)

一般公衆浴場の入浴料金は、都道府県知事が定める統制額の範囲内で設定します。東京都浴場組合によると、東京都は令和8年7月21日に統制額の引上げを発表し、令和8年8月1日から大人(12歳以上)が600円(50円引上げ)、中人・小人は据え置きとなりました。組合の説明では、エネルギー価格や原材料価格の高騰など厳しい経営環境が背景にあります(東京都浴場組合)。統制額は都道府県ごとに異なり、改定の時期も同時とは限りません。コストが上がっても、自社の判断だけでは料金を動かせない点が、一般の小売・サービス業と大きく違います。

③燃料・エネルギー費の負担と、公的支援への依存

厚生労働省の資料では、重点支援地方交付金を使った都道府県の事業例として、経費に占める燃料費の割合が大きい一般公衆浴場やクリーニング所に対する燃料費または支援金の助成が挙げられています(厚生労働省資料)。燃料費は浴場の運営で相対的に重い費目であることがうかがえますが、費用全体に占める比率の実数は本稿では一次統計を確認できていないため、数値としては示しません。助成は自治体と年度によって実施有無・内容が変わるため、現在の実施状況は各自治体の案内で要確認です。

④施設・設備の老朽化と更新投資

同じ厚生労働省資料(日本政策金融公庫の景気動向等調査・令和6年4〜6月期を出典とする記載)では、経営上の問題点として「店舗施設の狭隘・老朽化」を挙げる割合が、映画館・ホテル旅館とともに公衆浴場で高い傾向にあるとされています。ボイラー、配管、ろ過設備などは更新に大きな資金が必要になる反面、料金の上限があるため、投資の原資をどう確保するかが課題になりやすい領域です。日本政策金融公庫の融資や、振興計画の認定による特別償却など制度上の枠組みもありますが、適用にあたっては組合・認定の条件を個別に確認する必要があります。

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⑤許可制・適正配置・衛生管理(レジオネラ対策)の運営負担

公衆浴場を営むには、都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)の許可が必要で、構造設備基準と適正配置基準は都道府県条例で定められます。衛生面では、厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」が、浴槽水のレジオネラ属菌を検出されないこと(10cfu/100mL未満)とし、塩素系薬剤での消毒では遊離残留塩素を通常0.4mg/L程度に保ち、最大でも1mg/Lを超えないよう努めること、測定結果を検査日から3年間保管することを求めています。水質検査は、ろ過器を使わない浴槽や毎日完全に換水する浴槽で年1回以上、連日使用する浴槽で年2回以上(塩素消毒以外は年4回以上)とされ、浴槽は毎日の完全換水と清掃が原則(困難でも週1回以上)です(厚生労働省、令和5年11月一部改正)。測定・記録・検査・清掃の日常業務が、少人数の現場に集中しやすい構造です。個別の基準は施設の種別や条例で異なるため、実際の運用は所管の保健所の指導で確認してください。

⑥二極化する事業構造と、承継・振興策の活用

一般公衆浴場が減る一方、その他の公衆浴場は微増という二極化は、経営課題の所在も分けます。統制対象の施設は、料金上限・地域の担い手・老朽化・承継が中心で、料金を自由に設定できるヘルスセンター型・スポーツ施設併設型などは、集客・設備投資・人件費・光熱費の設計が中心になりやすい、という違いがあります(ただし「その他」の内訳は統計で区別できないため、個別施設ごとの確認が必要です)。また、厚生労働省の資料は、事業譲渡時の営業者の地位承継の簡素化を扱う法改正を公衆浴場法を含む形で整理しており、振興計画の認定は一般公衆浴場業で25件(令和6年3月時点)と記載されています。承継や振興策の運用状況は今後変わりうるため、最新の制度は要確認です。

商談前に見ておきたい公衆浴場特有の公開情報

公衆浴場をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 区分と運営形態: 一般公衆浴場(統制対象)か、その他の公衆浴場か。浴場組合への加盟、サウナ・薬湯・日帰り入浴などの設備構成。
  • 料金とその改定履歴: 公式サイトの料金表、統制額の改定に合わせた改定の有無、回数券・会員制度。
  • 設備の更新状況: ボイラー・燃料の種別、改装・リニューアルの発信、補助金・助成金の活用実績の記載。
  • 衛生管理の公開情報: 水質検査・レジオネラ対策に関する掲示や自治体の立入検査結果の公表。
  • 承継・人員の記載: 代表者の年齢、後継者・承継に関する発信、番台・清掃スタッフの採用ページの条件。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。同じ生活衛生関係の宿泊業やクリーニング業、娯楽・健康の視点ではフィットネス・ジムの記事もあわせて確認すると整理しやすくなります。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。決算書から利益率の傾向を掴む視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標を参照してください。

よくある質問

公衆浴場は全国にいくつありますか?

厚生労働省の衛生行政報告例(令和6年度末)では、公衆浴場は23,668施設で、そのうち一般公衆浴場が2,730施設、その他が20,938施設です。

銭湯の数はどのくらい減っていますか?

統計上の「一般公衆浴場」(銭湯のほか老人福祉センター等の浴場を含む区分)は、令和2年度末の3,231施設から令和6年度末の2,730施設へ、4年で501施設(15.5%)減りました。令和6年度の前年度比は117施設(4.1%)減です。

銭湯の入浴料金はどう決まりますか?

一般公衆浴場の入浴料金は、都道府県知事が定める統制額が上限になります。東京都は令和8年8月1日から大人(12歳以上)600円、中人・小人は据え置きです。統制額は都道府県ごとに異なるため、各自治体の公表情報で確認してください。

公衆浴場のレジオネラ対策で、水質検査はどのくらいの頻度で必要ですか?

厚生労働省の衛生等管理要領では、ろ過器を使わない浴槽や毎日完全に換水する浴槽は年1回以上、連日使用する浴槽は年2回以上(塩素消毒でない場合は年4回以上)の水質検査が示されています。結果は検査の日から3年間保管します。実際の運用は条例と所管の保健所の指導で確認してください。

まとめ

公衆浴場の経営課題は、①統制対象の一般公衆浴場の継続的な減少②入浴料金に統制額という上限がある構造③燃料・エネルギー費の負担と公的支援への依存④施設・設備の老朽化と更新投資⑤許可制・適正配置・レジオネラ対策など衛生管理の運営負担⑥二極化する事業構造と、承継・振興策の活用、という6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。施設数は全体でほぼ横ばいでも、統制対象の施設は4年で15.5%減っているという違いが、この業種を特徴づけています。「その他」の内訳や燃料費の比率など統計で確認できない部分は決めつけず、区分・料金・設備・衛生管理・承継の状況といった一次情報を確認しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。