計画相談支援を「介護のケアマネ事務所」と同じに見ない理由
中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。高齢者向けの介護サービスの計画を作る事業は居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)の経営課題で扱いました。この記事で扱う計画相談支援は、障害のある人や障害のある子どもの保護者が障害福祉サービスを使うときに、サービス等利用計画を作る相談支援です。介護保険の居宅介護支援とは、根拠法、基準、指定を行う自治体が別の制度です。
障害者総合支援法は、計画相談支援をサービス利用支援と継続サービス利用支援の二つで定めています(第5条第23項・第24項)。サービス利用支援は、支給決定の前に本人の心身の状況、置かれている環境、サービスの利用に関する意向を勘案してサービス等利用計画案を作り、支給決定が行われた後に事業者などとの連絡調整を行ってサービス等利用計画を作ることです。継続サービス利用支援は、決められた期間ごとに利用状況を検証して計画を見直し、必要なら計画の変更や支給決定の申請の勧奨を行うことです。この仕事の対価として市町村から計画相談支援給付費が支払われます(第51条の17)。利用する人が使う障害福祉サービスの事業所は就労継続支援、共同生活援助、放課後等デイサービスなどで、計画相談支援はそれらの入口と見直しに立つ役割です。
業界の全体像を数字で見る
厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。
- 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 令和2年10,778か所、令和3年11,237か所、令和4年11,707か所、令和5年12,276か所、令和6年12,746か所で、4年で1,968か所(約18.3%)増えています(増減率は当社計算)。令和6年の前年比は470か所(3.8%)増で、毎年増加が続いていますが、増え方は共同生活援助(同じ期間に約47.4%増)より緩やかです。
- 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): 令和2年251,269人、令和3年266,470人、令和4年274,636人、令和5年291,631人、令和6年308,644人で、4年で57,375人(約22.8%)増えています(当社計算)。令和6年の前年比は17,013人(約5.8%)増です(当社計算)。この数字は、9月中にサービス利用支援または継続サービス利用支援を利用した人数です。
- 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計): 令和2年20,548人、令和3年21,746人、令和4年22,884人、令和5年24,572人、令和6年26,360人で、4年で5,812人(約28.3%)増えています(当社計算)。令和6年の内訳は、相談支援専門員17,482人、管理者6,675人、その他2,203人です。構成比は、相談支援専門員が約66.3%、管理者が約25.3%、その他が約8.4%です(当社計算)。
数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員と従事者数は詳細票からの推計値です。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されるため、同じ事務所が障害児相談支援(令和6年は9,548か所)や地域相談支援も行っている場合は、各事業に重ねて計上されます。1事業所当たりの利用実人員は令和6年で約24.2人、常勤換算従事者は約2.1人(うち相談支援専門員は約1.4人)という目安になり、相談支援専門員1人当たりでは約17.7人になりますが、これは推計値を全数で割った当社の概算です。基準省令の標準である「35人」は前6月の平均の利用者数を基にした員数の目安であり、この概算とは母数、時点、常勤換算の扱いが異なるため、実際の担当件数や配置の過不足を示すものではありません。報酬の区分、収支差率、経営主体別の構成、サービス事業所との併設の割合は、今回確認した資料からは把握できておらず、要検証です。
計画相談支援事業所の経営課題、主要な6パターン
ここからは、上の数字と法令の定めを踏まえ、経営課題を整理します。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。
①利用者は毎年増えるが、1事業所当たりの人員は小さく、相談支援専門員の確保と定着が土台になる
計画相談支援は、令和2年から令和6年まで、事業所・利用実人員・常勤換算従事者のいずれも毎年増えています。従事者の約3分の2が相談支援専門員で、1事業所当たりの従事者は常勤換算で約2.1人という小さな事業所が中心です(いずれも当社の概算)。計画の作成とモニタリングは相談支援専門員が担う業務(基準省令第20条第2項)で、人が一人欠けると事業所全体の対応力に影響しやすい構造です。賃金、採用、研修の機会の確保(同第3項)、専門員の年齢構成や離職の状況は、今回の資料からは把握できず、要検証です。個別の事業所には、専門員の募集の有無、管理者の兼務の状況、法人内の他事業との人員のやり取りを公開情報から確認し、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。
②指定は市町村長が事業所ごとに行い、6年ごとの更新と届出が続く。「量を定めて指定」の対象ではない
計画相談支援を行う指定特定相談支援事業者の指定は、障害者総合支援法第51条の20により、総合的に相談支援を行う者として主務省令で定める基準に該当する者の申請に基づき、特定相談支援事業を行う事業所ごとに市町村長が行います。申請者は法人であることが求められます(第36条第3項第1号を「法人」と読み替えて準用)。就労継続支援や共同生活援助などの障害福祉サービスの指定は都道府県知事が行うのに対して、計画相談支援は市町村が窓口という違いがあります。指定は6年ごとに更新を受けなければ効力を失います(第51条の21)。事業所の名称・所在地などに変更があったときは10日以内に、事業を廃止・休止するときは1月前までに、市町村長へ届け出ます(第51条の25)。廃止や休止の届出をしたときは、その前1月以内に計画相談支援を受けていた人が引き続き希望する場合、他の事業者との連絡調整など必要な便宜の提供を行う義務があります(第51条の24第3項)。なお、障害者総合支援法第36条第2項の「量を定めて」指定する特定障害福祉サービスは、施行規則第34条の20により生活介護と就労継続支援A型・B型で、計画相談支援は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。市町村ごとの指定の運用や相談の窓口は、所在地の市町村にご確認ください。
③人員基準:専従の相談支援専門員、員数の標準は35人ごとに1人、管理者は専従
基準省令第3条は、指定特定相談支援事業所ごとに、専らその職務に従事する相談支援専門員を置くことを求めています。計画相談支援の業務に支障がない場合は、その事業所の他の職務や他の事業所・施設等の職務との兼務ができます。員数の標準は、計画相談支援対象障害者等の数が35またはその端数を増すごとに1人で、この数は前6月の平均値、新規に指定を受ける場合は推定数です。同一の事業所で障害児相談支援を一体的に運営している場合は、保護者の数も含めた合計で数えます。一定の要件(報酬告示の基準への適合と、相談支援専門員による指導・助言の体制)を満たすと、社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持つ相談支援員を置くこともできます。管理者も専らその職務に従事する者を置く必要があり、管理上支障がない場合は兼務ができます(第4条)。ここでの「標準」が実際の担当件数の上限なのか、報酬上の件数による区分とどう関係するかは別の告示の取扱いで、今回は一次資料を確認しておらず、要検証です。
④業務の量:訪問、アセスメント、計画案の同意、担当者会議、モニタリングと、5年間の記録
基準省令第15条は、サービス等利用計画の作成にあたり、利用者の居宅等を訪問して本人と家族に面接してアセスメントを行うこと、サービス等利用計画案を作って文書で同意を得て交付すること、支給決定後に案を見直してサービス担当者会議を開くことなどを定めています。短期入所を計画に位置付ける場合は、特に必要と認められる場合を除き、年間の利用日数が180日を超えないようにします。計画作成後のモニタリングは、施行規則第6条の16により、市町村が必要と認める期間ごとに行います。支給決定の直後など著しい変動があった人は1月間、そのほかの利用者は区分に応じて3月間または6月間などとされ、具体の周期は市町村が決めます。その結果は記録しなければなりません。相談支援台帳、アセスメントやモニタリングの記録、サービス担当者会議の記録、苦情や事故の記録は、提供した日から5年間保存します(第30条)。移動や面接、書類作成が多い仕事のため、一人の専門員がこなす件数と書類の量が、事業所の運営の重い部分になります。利用者ごとの実際のモニタリング周期や、1件当たりの所要時間は今回の資料にはなく、要検証です。
⑤公正中立と利益収受の禁止:併設するサービスとの関係が問われる
基準省令第2条第4項は、利用者に提供される福祉サービス等が特定の種類や特定の事業者に不当に偏らないよう、公正中立に事業を行うことを求めています。第26条は、事業者や管理者が特定のサービスを位置付けるよう相談支援専門員に指示することを禁じ、専門員にも特定の事業者のサービスを利用するよう利用者に指示することを禁じています。サービスを利用させることの対償として、サービス事業者から金品その他の財産上の利益を受け取ることも禁止されています。同じ法人が生活介護、共同生活援助、放課後等デイサービスなどの事業所を併設している場合、計画案の作り方や情報提供の仕方が問われやすい構造です。併設の割合、会計の区分(第29条で事業所ごと・他の事業と区分)、実際の指導事例は今回確認できておらず、要検証です。
⑥苦情・事故・虐待防止・業務継続の体制、報告と検査、広告の表現
基準省令は、苦情の受付窓口の設置と記録(第27条)、虐待の防止のための委員会の定期開催・研修・担当者の設置(第28条の2)、感染症や非常災害時の業務継続計画の策定・研修・訓練(第20条の2)を定めています。広告をする場合は、内容を虚偽のものや誇大なものにしてはなりません(第25条)。市町村長は、必要があると認めるとき、事業者に報告や帳簿書類の提出を命じ、事業所に立ち入って設備や帳簿書類を検査できます(障害者総合支援法第51条の27第2項)。小さな事業所が多い中で、これらの体制をどう整え、記録を残していくかが、日々の運営の課題になります。指定の取消しや効力停止の具体的な条文と件数、市町村による指導の実態は今回確認できておらず、要検証です。
商談前に見ておきたい計画相談支援特有の公開情報
計画相談支援の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。
- 運営法人と所在地の市町村: 指定は事業所ごとに市町村長が行います(障害者総合支援法第51条の20)。市町村が公表している指定事業所の一覧やを確認します。
- 併設・同一法人の事業: 障害児相談支援や地域相談支援を併せて運営しているか、サービス提供事業所(就労継続支援、共同生活援助、放課後等デイサービス、重度訪問介護など)を同じ法人が運営しているか。
- 相談支援専門員の人数と求人: 事業所の紹介ページや求人で、専門員の人数、管理者の兼務、募集の有無、勤務形態を確認します。人手不足の深刻度を示すサインになる場合があります。
- 受付の対象と得意分野: 障害種別(身体・知的・精神・児童)や地域、受付の可否の公表。受付が止まっていないか。
- 記録と請求の事務: アセスメント、計画案、担当者会議、モニタリングの記録、給付費の請求、市町村への報告を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
- 介護保険との接点: 65歳を迎える利用者がいる場合は、居宅介護支援事業所との連携の場面があります(個別の取扱いは市町村の案内で確認)。
これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。
よくある質問
計画相談支援の事業所は全国にいくつありますか?
厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、計画相談支援事業の事業所は12,746か所で、前年(12,276か所)から470か所(3.8%)増えています。令和2年の10,778か所からは約18.3%増です(増減率は当社計算)。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。
計画相談支援と、介護保険の居宅介護支援は同じですか?
いいえ、別の制度です。計画相談支援は障害者総合支援法に基づき、障害福祉サービスなどの利用計画(サービス等利用計画)を作る相談支援で、指定は市町村長が行います。居宅介護支援は介護保険法に基づくケアプランの作成で、基準も別です。調べるときは「計画相談支援」「障害者総合支援法」と明示して区別する必要があります。
相談支援専門員は何人置く必要がありますか?
基準省令第3条により、事業所ごとに専らその職務に従事する相談支援専門員を置く必要があり、員数の標準は計画相談支援対象障害者等の数が35またはその端数を増すごとに1人です。数は前6月の平均値で、新規指定は推定数です。業務に支障がない場合の兼務や、相談支援員を置ける要件もあります。報酬上の取扱いは別の告示によるため、最新の内容は所在地の市町村にご確認ください。
モニタリングはどのくらいの頻度で行いますか?
施行規則第6条の16により、モニタリングの期間は、利用者の状況や利用するサービスの区分を勘案して市町村が必要と認める期間とされています。支給決定の直後など著しい変動があった人は1月間、そのほかの人は区分に応じて3月間や6月間などと定められています。実際の周期は利用者ごとに受給者証に記載されるため、個別の内容は市町村の案内でご確認ください。
新しく事業所を開設する場合、定員や数の上限(総量規制)はありますか?
障害者総合支援法第36条第2項の「量を定めて」指定する特定障害福祉サービスは、施行規則第34条の20により生活介護と就労継続支援A型・B型とされ、計画相談支援は含まれていません(e-Govで確認した現行の条文)。ただし、申請者が法人であること、人員・運営の基準を満たすことなどが必要です。市町村ごとの運用や事前相談の要否は、所在地の市町村にご確認ください。
指定の有効期間と更新はどうなっていますか?
障害者総合支援法第51条の21により、指定特定相談支援事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います。更新の手続の時期や書類は市町村ごとに案内されるため、指定を受けている市町村の案内をご確認ください。
まとめ
計画相談支援事業所の経営課題は、①利用者は毎年増えるが1事業所当たりの人員は小さく、相談支援専門員の確保と定着が土台になる②指定は市町村長が事業所ごとに行い、6年ごとの更新と届出が続く(「量を定めて指定」の対象ではない)③専従の相談支援専門員、員数の標準は利用者35人ごとに1人という人員基準④訪問・アセスメント・計画案の同意・担当者会議・モニタリングと、5年間の記録という業務の量⑤公正中立と利益収受の禁止の下での併設サービスとの関係⑥苦情・事故・虐待防止・業務継続の体制、報告と検査、広告の表現、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。厚生労働省の調査では、事業所は12,746か所で4年で約18.3%増え、常勤換算従事者は26,360人まで増えました。報酬の最新の区分、収支差率、経営主体別の構成、サービス事業所との併設の割合、専門員の資格・研修の最新の取扱い、モニタリング頻度の実態、市町村ごとの運用差は、今回確認した範囲では把握できず、要検証です。個別の事業所に提案する際は、所在地の市町村の情報、専門員の人数と求人、併設事業の有無、記録と請求の事務の方法といった一次情報から仮説を立て、ヒアリングで確かめる進め方が現実的です。