結論から: 一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会(JDIY)の推計によると、ホームセンターの店舗数は2024年に5,020店(前年比+50店)となり初めて5,000店を突破、2025年には5,080店まで増えています。一方で年間総売上高は2020年の4兆2,680億円をピークに、2023年に3兆9,750億円まで落ち込んだあと2024年に4兆180億円へ持ち直し、2025年は4兆130億円とほぼ横ばいという推移をたどっており、店舗数が増え続ける一方で市場全体の伸びは鈍い「オーバーストア」状態がうかがえます。この構造を背景に、DCMホールディングスとエンチョーの経営統合(2025年9月1日効力発生、株式交換による完全子会社化)、カインズによる大都(DIY用品・工具EC運営)の買収(2025年12月30日完了)、DCMホールディングスによるホームテック(リフォーム事業)の子会社化(2025年11月4日開示)など、大手による業界再編・M&Aが相次いでいます。本記事ではホームセンター業界に特有の経営課題を6パターンに整理し、商談前リサーチで着目すべきポイントを出典付きで解説します。

ホームセンター業界を、小売業全般・ドラッグストア業界の経営課題と分けて見る必要がある理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし「ホームセンター業界」は、一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会(JDIY)という固有の業界団体が独自に店舗数・年間総売上高を推計・公表している点で、同じ小売業全般とは扱う一次データの系統が異なります。また、同じ小売業の中でもドラッグストア業界が医薬品医療機器等法(薬機法)の店舗販売業許可という規制の下で医薬品・化粧品を主力とするのに対し、ホームセンターにはそうした許認可制度が無く、DIY用品・住宅資材・園芸用品・生活雑貨を幅広く扱う点が業態としての大きな違いです。つまりホームセンターは、許認可による参入障壁が無い分、店舗網の拡大競争(オーバーストア)と異業種からの競合参入が起きやすい構造にあるという点が、この違いに直結しています。

ホームセンター業界の店舗数・市場規模を数字で見る

個別の課題に入る前に、業種全体の経営環境を確認します。JDIYの推計によると、ホームセンターの店舗数は2020年の4,860店から2021年4,890店、2022年4,920店、2023年4,970店、2024年5,020店(前年比+50店、初めて5,000店を突破)、2025年5,080店と一貫して増加を続けています。一方で年間総売上高は2020年の4兆2,680億円から2021年4兆760億円、2022年4兆150億円、2023年3兆9,750億円へと縮小したあと、2024年に4兆180億円へ持ち直し、2025年は4兆130億円とほぼ横ばいで推移しています。店舗数が5年連続で増える一方、市場全体の売上高はピーク時(2020年)の水準を回復できていない状況にあり、1店舗あたりの商圏・売上が薄まりやすい「オーバーストア」の構造が数字の面からも読み取れます。

ホームセンター業界の経営課題、主要な6パターン

ここからは、ホームセンター業界に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①オーバーストア化と既存店売上の伸び悩み

JDIYの推計で店舗数が2020年の4,860店から2025年の5,080店へと5年連続で増加する一方、年間総売上高は2020年の4兆2,680億円から2025年の4兆130億円へとピーク時の水準を回復できていません。店舗数の増加ペースに対して市場全体の伸びが追いついていないため、既存店ベースでの売上が伸び悩みやすく、1店舗あたりの商圏人口や来店客数が薄まりやすい構造にあります。対象企業が既存店売上高(前年同期比)を開示しているか、新規出店と閉店のペースがどう推移しているかは、この課題への対応状況を見立てる材料になります。

②大手再編・M&Aの加速による寡占化

DCMホールディングスとエンチョーは2025年5月9日に経営統合を発表し、株式交換によりDCMHDがエンチョーを完全子会社化、2025年9月1日に効力が発生しました。狙いは仕入・物流の効率化、店舗運営ノウハウの共有、本社機能の合理化とされています。この他にも、大手による買収・統合の動きが相次いでいます。こうした再編は仕入交渉力や物流効率で規模の経済を働かせやすい大手にとって有利に働く一方、独立系・中小のホームセンターにとっては競争環境が一段と厳しくなる要因になります。対象企業が大手グループの傘下にあるか独立系として事業を継続しているかは、商談前に確認しておきたい視点の一つです。

③プロ向け事業(BtoB)・PB強化への戦略転換

カインズは2025年10月24日にDIY用品・工具EC「トラノテ」を運営する大都との買収に向けた基本合意を発表し、同年12月30日に全株式取得を完了しました。狙いは自社の店舗網と大都のプロ向けEC・サプライヤーネットワークを組み合わせ、職人・プロ人材向けの市場で強みを確立することとされています。また、DCMホールディングスも2025年11月4日にリフォーム事業を展開するホームテックの子会社化を発表しており、住宅設備の販売にとどまらず施工・リフォームまで手がける方向への事業領域の広がりがうかがえます。従来の一般消費者向けDIY用品販売に加えて、プロ向け事業(BtoB)やプライベートブランド(PB)商品の強化に活路を見出す動きが大手を中心に進んでいます。対象企業がプロ向け事業やPB商品にどの程度力を入れているかは、収益構造の転換度合いを見立てる視点になります。

④ニトリ・無印良品・ECとの異業種競合

生活雑貨や家具・インテリア用品を扱うニトリ・無印良品(良品計画)、さらにはAmazon等のECプラットフォームは、ホームセンターの主力商材と一部重なる領域で存在感を強めています。許認可による参入障壁が無い分、こうした異業種からの競合が起きやすく、価格や品揃えでの差別化がより求められる構造にあります。対象企業が実店舗ならではの体験(現物確認、DIY相談、園芸・重量資材の配送サービス等)やEC・オムニチャネル対応をどの程度打ち出しているかは、異業種競合への対応力を見立てる材料になります。

⑤物価高による消費抑制と価格転嫁の難しさ

資材・原材料コストや物流費、人件費の上昇が続く中、ホームセンターが扱う住宅資材・園芸用品・日用品の仕入コストにも影響が及んでいます。一方で、生活必需品に近い商材を多く扱う業態であるだけに、価格転嫁による消費者の買い控えリスクとも向き合う必要があり、コスト増を価格に反映しきれない構造的な難しさを抱えやすい業種です。対象企業が値上げの実施状況やPB商品による低価格帯の維持といった対応をどう進めているかは、この課題への向き合い方を見立てる視点になります。

⑥創業家からの事業承継

ホームセンター業界単独の後継者不在率・倒産件数を示す一次統計は確認できていません(帝国データバンク・東京商工リサーチともに業種別の独立区分を設けていません)。ただし、創業家が地域密着型でホームセンターを展開してきた企業が多い業種であり、経営者の高齢化に伴う代替わりの時期を迎えている企業は少なくないと考えられます。前述のようなDCM-エンチョーの経営統合やカインズ-大都の買収に象徴される業界再編は、独立系の中小ホームセンターにとって大手グループの傘下に入る(いわゆる「脱ファミリー化」)という事業承継の選択肢の一つにもなり得ます。対象企業が創業家経営を続けているか、後継者や資本提携についての情報を公開しているかは、商談前に確認しておきたい視点です。

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商談前に見ておきたいホームセンター業界特有の公開情報

ホームセンター業界をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 既存店売上高・新規出店/閉店のペース: オーバーストア構造の中で既存店売上が伸びているかどうかは、経営体力を見立てる材料になる。
  • 大手グループへの資本参加・M&Aの有無: DCM-エンチョーやカインズ-大都のような大手グループ傘下か独立系かは、仕入交渉力・投資余力を見立てる出発点になる。
  • プロ向け事業・PB商品のラインナップ: 一般消費者向け販売にとどまらない収益源の多角化状況を見る視点。
  • EC・オムニチャネル対応の状況: 異業種競合への対応力を見立てる手がかりになる。
  • 価格改定・値上げの実施状況: コスト増を価格転嫁できているかは収益構造を見立てる材料になる。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。同じ小売業に分類される小売業全般の経営課題6選、同じく許認可の無い小売業態としてオーバーストアや異業種競合の構造が似ているドラッグストア業界の経営課題6選もあわせて確認しておくと、業界全体を見渡した商談準備の解像度が上がります。EC・通販業との競合構造を詳しく知りたい場合はEC・通販業の経営課題6選も参考になります。取引先の粗利率を決算書から読み解く視点は決算書の読み方【営業向け】で、具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。

よくある質問

ホームセンター業界は今もオーバーストア(店舗の出しすぎ)な状態ですか

一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会(JDIY)の推計によると、店舗数は2020年の4,860店から2025年の5,080店まで5年連続で増加していますが、年間総売上高は2020年の4兆2,680億円から2025年の4兆130億円へとピーク時の水準を回復できていません。店舗数の増加ペースに市場全体の伸びが追いついていないため、オーバーストアの構造がうかがえます。

DCMホールディングスとエンチョーの経営統合はいつ実現しましたか

2025年5月9日に経営統合が発表され、株式交換によりDCMホールディングスがエンチョーを完全子会社化する形で、2025年9月1日に効力が発生しました。狙いは仕入・物流の効率化、店舗運営ノウハウの共有、本社機能の合理化とされています。

ホームセンター業界でなぜM&Aが増えているのですか

DCM-エンチョーの経営統合、カインズによる大都(DIY用品・工具EC運営)の買収(2025年12月完了)、DCMホールディングスによるホームテック(リフォーム事業)の子会社化(2025年11月開示)など、大手による再編が相次いでいます。オーバーストアで既存店の伸びが鈍い中、仕入・物流の効率化や事業領域の拡大(プロ向け事業・リフォーム等)を目的とした再編が進んでいると考えられます。

ホームセンターの商談前リサーチで公開情報のどこを見ればよいですか

既存店売上高・新規出店/閉店のペース、大手グループへの資本参加・M&Aの有無、プロ向け事業・PB商品のラインナップ、EC・オムニチャネル対応の状況、価格改定の実施状況の5点が、ホームセンター業界特有の経営課題を見立てる手がかりになります。会社名を入れるだけでこれらの公開情報を横断的にリサーチできるツールを使えば、商談前の準備時間を短縮できます。

まとめ

ホームセンター業界の経営課題は、①オーバーストア化と既存店売上の伸び悩み②大手再編・M&Aの加速による寡占化③プロ向け事業(BtoB)・PB強化への戦略転換④ニトリ・無印良品・ECとの異業種競合⑤物価高による消費抑制と価格転嫁の難しさ⑥創業家からの事業承継、という6パターンが相互に絡み合う構造にあります。特に、店舗数が2025年に5,080店まで増え続ける一方で年間総売上高がピーク時(2020年、4兆2,680億円)の水準を回復できていない点、そしてDCM-エンチョーの経営統合をはじめとする大手再編が同時進行している点が、この業種の経営課題の根底にあります。ホームセンター業界は一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会(JDIY)という固有の業界団体・独自統計を持つ点で小売業全般やドラッグストア業界とは異なる系統にあるため、商談前リサーチでは各業種を混同せず、店舗網の拡大ペース・資本構成・事業領域の広がりといった一次情報で仮説を検証しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。