地域相談支援を「計画相談支援のおまけ」と同じに見ない理由
中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。障害福祉の相談支援のうち、サービス等利用計画を作る計画相談支援は令和6年に12,746か所と大きな区分ですが、地域移行支援・地域定着支援を行う「地域相談支援」は、別の行で集計され、利用の姿も大きく異なります。
障害者総合支援法第5条第19項は、相談支援を基本相談支援・地域相談支援・計画相談支援に分け、地域相談支援を地域移行支援及び地域定着支援と定めています。第5条第21項は、地域移行支援を、障害者支援施設等に入所している障害者や精神科病院に入院している精神障害者などで主務省令で定めるものにつき、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談その他の便宜を供与することと定めています。第5条第22項は、地域定着支援を、居宅において単身その他の主務省令で定める状況で生活する障害者につき、常時の連絡体制を確保し、緊急の事態などに相談その他の便宜を供与することと定めています。
経営の観点で押さえておきたい特徴は3つです。第1に、移行支援は「施設や病院から地域へ出る」ための期間限定の支援で、入口が施設・病院側にある点です。第2に、定着支援は「地域で暮らし続ける」ための常時の連絡体制と緊急時の対応が中心で、体制そのものが商品になる点です。第3に、この2つは同じ指定一般相談支援事業者が一般相談支援事業所として併せて指定を受けて行う場合があり、自立生活援助の記事で触れた一体運営の特例とつながる点です(併設の実態は統計から分かりません)。
業界の全体像を数字で見る
厚生労働省の「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」と、令和2年から令和5年の各概況から、次の数字が分かります。
- 事業所数(各年10月1日、基本票の全数): 地域移行支援は令和2年3,490か所、令和3年3,588か所、令和4年3,634か所、令和5年3,723か所、令和6年3,801か所。地域定着支援は令和2年3,341か所、令和3年3,435か所、令和4年3,493か所、令和5年3,583か所、令和6年3,657か所です。令和6年の前年比は、どちらも約2.1%増(移行+78か所、定着+74か所)で、令和2年からは移行+311か所(約8.9%)、定着+316か所(約9.5%)です(当社計算)。自立生活援助が同じ期間に約50.6%増えたのと比べ、地域相談支援の事業所数の伸びは緩やかです。
- 利用実人員(各年9月中、詳細票の推計): 地域移行支援は令和2年907人、令和3年767人、令和4年773人、令和5年867人、令和6年1,223人。地域定着支援は令和2年3,836人、令和3年4,024人、令和4年3,847人、令和5年4,460人、令和6年4,267人です。移行支援は令和3年に前年比約15.4%減って最少の767人となったあと、令和5年に前年比約12.2%増、令和6年に約41.1%増と回復し、令和2年比では316人(約34.8%)多い水準です。定着支援は令和5年に前年比約15.9%増の4,460人となったあと、令和6年は193人(約4.3%)減りました(当社計算)。
- 常勤換算従事者数(各年10月1日、詳細票の推計。9月中に利用者がいた事業所の従事者数): 地域移行支援は令和2年1,246人、令和3年1,157人、令和4年1,133人、令和5年1,398人、令和6年1,608人で、令和6年の内訳は管理者290人、相談支援専門員1,098人、その他220人です。地域定着支援は令和2年1,625人、令和3年1,694人、令和4年1,606人、令和5年1,682人、令和6年1,657人で、令和6年の内訳は管理者322人、相談支援専門員1,151人、その他185人です。令和6年の前年比は、移行が+210人(約15.0%)、定着が-25人(約-1.5%)です(当社計算)。
- 1事業所当たりの規模感(当社計算の参考値): 利用実人員を事業所数で割ると、地域移行支援は令和2年約0.26人、令和3年約0.21人、令和4年約0.21人、令和5年約0.23人、令和6年約0.32人。地域定着支援は令和2年約1.15人、令和3年約1.17人、令和4年約1.10人、令和5年約1.25人、令和6年約1.17人です。従事者総数を事業所数で割ると、令和6年は移行が約0.42人、定着が約0.45人です。
数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、利用実人員と従事者数は詳細票からの推計値で、標本調査に伴う誤差を含む点に留意が必要です。利用実人員は9月中、事業所数と従事者数は10月1日現在で時点が異なり、従事者数は9月中に利用者がいた事業所だけの数字です(表8の注)。このため上の「1事業所当たり」は、統計の数字を単純に割った当社の参考値で、法令が定める配置の基準とは関係がありません。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上され(表4の注)、地域移行支援と地域定着支援の両方を行う事業所は、両方に重ねて計上されます。また、地域相談支援の利用延人数や利用日数は、概況では表章記号「・」で示され、数値がありません。支援の頻度や回数は、この統計からは分かりません。
地域相談支援事業所の経営課題、主要な6パターン
ここからは、上の数字と法令の条文を踏まえ、経営課題を整理します。報酬や加算といった細かい条件は今回確認できていないため、確認できた範囲に絞り、断定を避けます。個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。
①指定事業所は各3,800か所前後でも、利用実人員は1事業所平均で移行約0.32人・定着約1.17人:「指定を持つ」と「稼働している」の差
令和6年は地域移行支援が3,801か所、地域定着支援が3,657か所ですが、9月中の利用実人員は1,223人と4,267人で、1事業所当たりの平均は移行で1人を下回る約0.32人、定着で約1.17人です(当社計算)。平均が1人を下回るため、9月中に移行支援の利用者がいなかった事業所が少なくない可能性があります。ただし、利用者がいた事業所の数は概況に載っていないため、実際の稼働の分布は分からず、要検証です。指定を受けているだけでは収入にならず、利用者を継続的に迎える仕組みが経営の前提になる区分と読めます。
②利用期間は市町村が月単位で決める:移行は最長6月間、定着は最長12月間
施行規則第34条の42は、地域相談支援給付決定の有効期間を、決定を行った日から当月の末日までの期間に、移行支援は1月間から6月間まで、定着支援は1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間を合算したものと定めています。期間が区切られた支援である以上、利用者の入れ替わりが前提になります。令和3年に移行支援の利用実人員が前年比約15.4%減った一方、令和6年は約41.1%増えており、需要や運用の変動が大きい可能性がありますが、その理由(対象者の動き、制度運用、自治体ごとの違いなど)は統計からは分かりません。期間の延長や更新の取扱いは、今回確認した施行規則・基準省令の本文以外(告示・通知)にあるかどうかも含め、要検証です。
③移行支援の入口は施設・病院・矯正施設等の側にある:紹介元との関係と計画作成会議が成否を分ける
施行規則第6条の11の2は、地域移行支援の対象を、障害者支援施設、のぞみの園などに入所している障害者、精神科病院に入院している精神障害者、救護施設・更生施設に入所している障害者、刑事施設・少年院・更生保護施設に収容されている障害者などと定めています。つまり利用者は施設や病院の中にいる人で、自社が直接集める対象ではありません。基準省令第20条は、計画の作成にあたりアセスメントを行い、利用者と、障害者支援施設等・精神科病院などにおける担当者等を招集する計画作成会議を開き(テレビ電話装置等の活用も可)、文書で同意を得て、利用者と指定計画相談支援を行う者に計画を交付するよう求めています。紹介元の施設・病院や相談支援事業所との関係づくりと、会議の日程調整が日々の運営の中心になります。どの入口からの利用者が何割かは統計から分からず、要検証です。
④体験利用・体験宿泊の体制:委託と場所の要件を押さえる必要がある
施行規則第6条の12は、地域移行支援の内容として、住居の確保その他の相談、外出の際の同行、障害福祉サービス(生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援に限る)の体験的な利用支援、体験的な宿泊支援などを挙げています。基準省令第22条は、障害福祉サービスの体験的な利用支援を指定障害福祉サービス事業者等への委託により行うものとし、第23条は、体験的な宿泊支援を、必要な広さの居室と設備・備品を備え、衛生的に管理されている場所で行うことと定め、第2項で委託も認めています。体験の受け皿となる就労継続支援や共同生活援助、自立訓練(宿泊型)などとの関係をどう持つかが、支援を実行できるかを左右します。体験に伴う費用の扱いや報酬は要検証です。
⑤定着支援は常時の連絡体制と緊急時の訪問が核:夜間・休日の体制は事業所ごとの設計課題
基準省令第43条は、地域定着支援事業者に、利用者の心身の状況や障害の特性に応じた適切な方法で、利用者又はその家族との常時の連絡体制を確保することを求め、適宜、利用者の居宅への訪問等を行って状況を把握するものとしています。第44条は、障害の特性に起因して生じた緊急の事態などが生じた場合に、速やかに居宅への訪問等による状況把握を行うこと、その結果を踏まえて家族・関係機関との連絡調整や一時的な滞在による支援などの必要な措置を講じることを求め、一時的な滞在の場所の要件と委託を定めています。第42条は、緊急時に必要となる家族等・利用する事業者・医療機関の連絡先などを記載した「地域定着支援台帳」の作成を求めています。夜間や休日にどう連絡を受け、誰が駆けつけるかは、条文だけでは決まらず、事業所ごとの設計課題です。利用実人員4,267人と常勤換算従事者1,657人という統計の数字を並べても、時点や集計対象が異なる推計の単純比較にすぎず、緊急対応の負担は示しません。
⑥人員の最低ラインは小さいが、兼務の判断と相談支援専門員の確保が課題:併設の実態と報酬は要確認
基準省令第3条は、従業者を事業所ごとに専らその職務に従事する者として置くこと(業務に支障がない場合は他の職務への従事を認める)と、そのうち1人以上が相談支援専門員であることを定めています。第4条は管理者についても同様に専従を原則としています。令和6年の統計では、相談支援専門員の常勤換算が移行で1,098人(前年比約12.8%増)、定着で1,151人(約1.4%減)と、従事者全体の約7割を占めます。事業所が増えても相談支援専門員の確保がボトルネックになりやすい点は、計画相談支援とも共通の課題です。同一の事業所で計画相談支援・基本相談支援・自立生活援助と併せて運営している事業所がどれだけあるか、その場合の兼務の実態は、統計から分からず要検証です。報酬の区分・加算、収支差率といった経営判断に必要な値は、今回の統計にも法令の本文にも含まれず、厚生労働省の報酬告示・通知や、障害福祉サービス等経営実態調査の公表資料などで別途確認する必要があります。
商談前に見ておきたい地域相談支援特有の公開情報
地域相談支援の事業所に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。
- 運営法人と併設事業: 計画相談支援・基本相談支援・自立生活援助・共同生活援助などを併せて運営していると、利用者の入口を自社内に持てる一方、人員や記録の管理が複雑になります。都道府県などが公表している指定事業所の一覧と、事業所の紹介ページで確認します。
- 指定の種類: 地域移行支援のみか、地域定着支援のみか、両方か。法第51条の19は、指定を地域相談支援の種類と事業所ごとに行うと定めています。
- 紹介元の説明: 紹介ページや運営規程に、どの施設・病院などからの利用者を対象とするか、連携先が書かれているか。
- 職員の人数と求人: 相談支援専門員の人数と募集の有無。規模の小さい事業所では、求人の有無が配置の余裕のサインになる場合があります。
- 夜間・休日の連絡体制: 地域定着支援の常時の連絡体制の方法(電話・携帯端末など)と、緊急時の訪問の体制が、紹介ページや運営規程にどう書かれているか。
- 記録と請求の事務: 地域移行支援計画・地域定着支援台帳、関係機関との連絡履歴、給付費の請求を、紙・表計算・専用システムのどれで行っているか。
これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。
よくある質問
地域相談支援の事業所は全国にいくつありますか?
厚生労働省の令和6(2024)年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、地域移行支援事業が3,801か所、地域定着支援事業が3,657か所です。前年(3,723か所・3,583か所)からそれぞれ78か所・74か所(2.1%)増え、令和2年(3,490か所・3,341か所)からは約8.9%・約9.5%(当社計算)増えています。複数の事業を行う事業所はそれぞれの事業に計上されます。
地域移行支援とは何ですか?
障害者総合支援法第5条第21項は、障害者支援施設等に入所している障害者や精神科病院に入院している精神障害者などで主務省令で定めるものにつき、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談その他の便宜を供与することと定めています。施行規則は、内容として、住居の確保の相談、外出の同行、障害福祉サービスの体験的な利用支援、体験的な宿泊支援などを挙げています。
地域定着支援とは何ですか?
障害者総合支援法第5条第22項は、居宅において単身その他の主務省令で定める状況において生活する障害者につき、常時の連絡体制を確保し、緊急の事態などに相談その他の便宜を供与することと定めています。施行規則は、対象となる状況を、単身であるため、又は家族と同居していても家族等の障害・疾病等により緊急時の支援が見込めない状況としています。
地域相談支援の利用期間は決まっていますか?
施行規則第34条の42は、給付決定の有効期間を、決定日から当月末日までの期間に、移行支援は1月間から6月間まで、定着支援は1月間から12月間までの範囲内で市町村が月単位で定める期間を合算したものと定めています。延長や更新の取扱い、報酬の区分や加算は、今回確認した本文には書かれておらず、告示や通知で定められている可能性があるため、要検証です。
地域相談支援の人員基準はどうなっていますか?
基準省令(平成24年厚生労働省令第27号)第3条は、事業所ごとに専らその職務に従事する従業者を置くこと(支障がない場合は他の職務への従事が可能)と、そのうち1人以上が相談支援専門員であることを定めています。管理者は第4条で、専従を原則としつつ、管理上支障がない場合は他の職務との兼務を認めています。地域定着支援は第40条で、この第3条・第4条を準用します。最新の条文は、e-Gov法令検索で現行のものをご確認ください。
地域相談支援の利用者や従事者は、どのくらいいますか?
令和6年9月中の利用実人員は、地域移行支援が1,223人(前年の867人から約41.1%増)、地域定着支援が4,267人(前年の4,460人から約4.3%減)です(詳細票の推計)。令和6年10月1日現在の常勤換算従事者数は、移行が1,608人(管理者290人、相談支援専門員1,098人、その他220人)、定着が1,657人(管理者322人、相談支援専門員1,151人、その他185人)です(詳細票の推計。9月中に利用者がいた事業所の従事者数)。
まとめ
地域相談支援事業所の経営課題は、①指定事業所は各3,800か所前後でも、1事業所当たりの利用実人員は移行で約0.32人・定着で約1.17人にとどまること②利用期間は市町村が月単位で決め、移行は最長6月間・定着は最長12月間であること③移行支援の入口が施設・病院・矯正施設等の側にあり、紹介元との関係と計画作成会議が運営の中心になること④体験利用・体験宿泊は委託と場所の要件を押さえる必要があること⑤定着支援は常時の連絡体制と緊急時の訪問が核で、夜間・休日の体制が設計課題になること⑥人員の最低ラインは小さいが相談支援専門員の確保と併設の判断が課題で、報酬や加算は別途確認が要ること、の6つです。営業やヒアリングの前に、事業所の併設事業、指定の種類、紹介元、職員の人数と求人を公開情報で整理しておくと、論点を絞りやすくなります。