結論から: 厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査(令和6年10月1日現在)では、通所介護(デイサービス)は24,585事業所で、令和2年の24,087事業所から約2.1%増の横ばい圏です。一方、定員18人以下の地域密着型通所介護は19,667から18,921事業所へ約3.8%減りました(当社計算)。令和7年度介護事業経営概況調査では、通所介護の令和6年度決算の収支差率は6.2%(前年度6.5%、全サービス平均4.7%。税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない)ですが、赤字の事業所が37.4%あり、平均だけでは経営の実態は読めません。延べ利用者数の階級別では、月300人以下の区分の収支差率が△4.2%、901人以上が10.0%と開きがありますが、区分ごとの回答数は34~111件で標本は小さい点に注意が必要です。事業所ごとの指定や人員・設備の基準は介護保険法と厚生労働省令で定められ、実際の員数などは都道府県の条例で確認が必要です。個別の数字は本記事で「要検証」と明記した項目を含むため、営業や運営の判断の前に公的な一次情報で必ずご確認ください。

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。この記事で扱うのは、介護保険の居宅サービスのひとつである通所介護(デイサービス)です。介護事業全体の人手不足や倒産の動向は介護福祉事業の経営課題で、ケアマネジメントを担う居宅介護支援や、用具を貸し出す福祉用具貸与とは収支の構造が異なるため、ここでは通所介護そのものの数字と制度に絞ります。

通所介護(デイサービス)は何をするサービスか

介護保険法第8条第7項は、通所介護を、居宅要介護者を老人福祉法の定める施設(老人デイサービスセンターなど)に通わせ、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話と機能訓練を行うことと定めています。ただし利用定員が厚生労働省令で定める数以上のものに限られ、その数は介護保険法施行規則第10条の2で19人です。利用定員が19人未満のものは、同法第8条第17項の地域密着型通所介護(認知症対応型通所介護に該当するものを除く)になります。つまり、定員19人以上かどうかで、法律上のサービスの種類が分かれます。

基準を定めた厚生労働省令(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準。以下「基準」)の第92条は、通所介護の事業の目的を、要介護状態となっても利用者が可能な限り居宅で、その有する能力に応じ自立した日常生活を営めるよう、生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話と機能訓練を行うことで、利用者の社会的孤立感の解消、心身の機能の維持、家族の身体的・精神的負担の軽減を図るものとしています。利用者本人の機能維持と家族の負担軽減の両方が事業の目的に含まれる点が、営業やヒアリングで論点を整理する際の前提になります。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の公表資料から、次の数字が分かります。数字の出典は調査ごとに異なるため、調査の範囲と時点を併せて書きます。

  • 通所介護の事業所数(介護サービス施設・事業所調査、各年10月1日現在・基本票): 令和2年から令和6年まで24,087、24,428、24,569、24,577、24,585事業所で、令和2年から498事業所(約2.1%)増えましたが、直近の令和5年から令和6年は8事業所(0.0%)の増加でほぼ横ばいです(当社計算)。
  • 地域密着型通所介護の事業所数: 同じく19,667、19,578、19,394、19,156、18,921事業所と毎年減り、令和2年から746事業所(約3.8%)減りました(当社計算)。令和6年は前年から235事業所(1.2%)の減少です。認知症対応型通所介護は令和6年に3,370事業所で前年から3.9%減、通所リハビリテーションは8,030事業所で1.2%減でした。通所介護と地域密着型通所介護の合計は令和2年の43,754から令和6年の43,506へ248事業所(約0.6%)減で、令和6年の合計に占める地域密着型の割合は約43.5%です(当社計算)。
  • 開設(経営)主体別の構成割合(令和6年、詳細票): 通所介護は営利法人(会社)が55.0%、社会福祉法人(社会福祉協議会を含む)が34.0%、医療法人が7.2%です。地域密着型通所介護は営利法人が76.6%、社会福祉法人が12.1%で、通所介護より営利法人の割合が高くなっています。通所介護の詳細票は層化無作為抽出で、調査客体15,693事業所のうち13,285事業所から回収(回収率84.7%)した結果です。
  • 利用の状況(令和6年度介護給付費等実態統計): 通所介護の年間実受給者数は1,680.4千人(前年度1,661.7千人、約1.1%増)、年間累計受給者数は14,390.6千人(同14,201.8千人、約1.3%増)です。費用額累計は1兆3,388億円(1,338,790百万円、前年度比約1.6%増)で、介護サービス全体の費用額累計11,617,866百万円の約11.5%を占めます(当社計算)。
  • 利用者の要介護度(令和7年4月審査分): 通所介護の受給者1,193.0千人のうち、要介護1が37.6%、要介護2が29.8%、要介護3が16.8%、要介護4が10.6%、要介護5が5.2%で、原本は「要介護1~3の合計が全体の8割以上」と記載しています(合計は当社計算で84.2%)。
  • 従事者(令和6年10月1日現在・推計値): 通所介護の介護職員は221,372人です。この表の数値は概況の「調査の概要」に推計値と注記があります。

数字の読み方には注意が必要です。事業所数は基本票の全数ですが、構成割合や従事者数は抽出した詳細票からの集計・推計です。通所介護と地域密着型通所介護は別のサービスとして集計され、複数のサービスを提供する事業所は各々に計上されます(表1の注)。通所介護単独の倒産・廃業件数、利用者1人当たりの利用回数や稼働率、加算の取得状況は、今回確認した統計に含まれておらず、要検証です。

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通所介護の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の条文を踏まえ、経営課題を整理します。調査の標本が小さい区分や、今回確認できていない項目は断定を避け、個々の事業所の状況は個別に確認が必要です。

①事業所数は横ばいでも、定員の小さい地域密着型は5年連続で減っている

通所介護は令和2年から約2.1%増の24,585事業所と横ばい圏ですが、地域密着型通所介護は5年連続で減り、約3.8%減の18,921事業所になりました。利用者側の需要は、年間実受給者数が約1.1%増、費用額が約1.6%増と微増です。供給は事業所の数が横ばいで、需要も大きく伸びていないとみられる中、事業所1か所当たりの利用者の確保が経営の前提になります(推測を含みます)。地域密着型の減少の理由(閉鎖、定員の変更、他の類型への移行など)は統計から分からず、要検証です。事業所の閉鎖や新設の件数も今回確認した資料から読み取れておらず、要検証です。

②収支差率は平均6.2%でも、37.4%の事業所は赤字

令和7年度介護事業経営概況調査によると、通所介護の令和6年度決算の収支差率は6.2%で、令和5年度決算の6.5%から0.3ポイント下がりました。全サービス平均は4.7%で変わりません。ここでの収支差率は(収入額−支出額)÷収入額で、括弧なしの数字は税引前で物価高騰対策関連補助金を含みません(補助金を含む場合は6.4%、税引後で補助金を含む場合は6.0%)。同じ調査で、令和6年度決算が赤字の通所介護事業所は37.4%、黒字は62.6%でした。平均が全サービス平均を上回っていても、約3分の1強の事業所が赤字という分布は、平均値だけを見る営業やヒアリングでは見落としやすい点です。通所介護の有効回答は433件(客体893件、回収率48.5%)で、調査全体の有効回答率は46.2%、つまり回答した事業所の傾向である点にも注意が必要です。地域密着型通所介護の収支差率は5.8%から6.3%へ上がり、赤字割合は37.2%でした。

③延べ利用者数の規模で収支が大きく分かれる(ただし標本は小さい)

同じ調査の第77表は、通所介護を月の延べ利用者数の階級別に集計しています。令和6年度決算の収支差率は、300人以下が△4.2%(有効回答34件)、301~450人が△0.1%(81件)、451~600人が5.3%(111件)、601~750人が7.9%(88件)、751~900人が6.3%(60件)、901人以上が10.0%(59件)でした。収入に対する給与費の割合は、同じ順に67.4%、66.4%、61.5%、60.7%、59.1%、58.3%と、規模が大きいほど低くなっています。利用者が少ない事業所ほど、固定的な人員配置の費用の負担が重くなる構造と考えられますが、これは数字からの推測です。区分ごとの標本は34~111件と小さく、調査の表注にも標本が少ない場合は個々のデータの影響が大きいとあるため、特定の規模の事業所に一律に当てはまるとは言えません。月の延べ利用者数の階級ごとの事業所数の分布(どの規模の事業所が多いか)は今回確認しておらず、要検証です。

④費用の約6割は給与費、人員基準が固定費を決める

第8表では、通所介護1事業所当たり(月)の令和6年度決算は、収入5,935千円、支出5,564千円、差引371千円で、給与費は3,613千円と収入に対して60.9%でした(令和5年度決算は3,545千円、60.7%)。基準第93条は、生活相談員(提供時間帯の勤務時間の合計を提供時間数で割った値が1以上)、看護職員(単位ごとに専ら提供に当たる者が1以上確保されるために必要と認められる数)、介護職員(利用者15人までは1以上、15人を超える部分は5人ごとに1を加えた数以上)、機能訓練指導員(1以上)を置くこととしています。介護職員は単位ごとに常時1人以上従事させ、生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤でなければなりません。管理者は専らその職務に従事する常勤の者を置くことが原則です(基準第94条)。これらは国の省令の基準で、都道府県は介護保険法第74条により、従業者の員数などは省令に従い条例で定めるため、実際の員数は条例で確認が必要です。最低配置のうち、生活相談員・看護職員・機能訓練指導員は利用者数にかかわらず1以上、介護職員は常時1人以上が必要で、利用者が少ない日でも一定の人員が固定費になります(条文からの読み取りで、実際の配置の運用は事業所ごとに異なり、要検証です)。令和6年10月1日現在の介護職員は221,372人(推計値)ですが、職種別の常勤・非常勤の内訳や職員の充足率は統計から読み取れておらず、要検証です。

⑤利用者は要介護1~3が8割超、計画・記録・機能訓練の個別対応が求められる

令和7年4月審査分の通所介護の受給者は、要介護1~3の合計が8割以上を占め、要介護4と5が約15.8%(10.6%+5.2%、当社計算)です。基準は、事業所の管理者が利用者の心身の状況、希望及び環境を踏まえ、機能訓練等の目標と具体的なサービスの内容を記載した通所介護計画を作成して利用者の同意を得て交付すること(第99条)、居宅サービス計画がある場合はその内容に沿うこと、サービスの実施状況と目標の達成状況を記録すること(同条)、緊急やむを得ない場合を除く身体的拘束等の禁止と、行う場合の態様・時間・理由の記録(第98条)、提供するサービスの質の評価と改善(第97条)を定めています。設備面では、食堂と機能訓練室の合計面積が、3平方メートルに利用定員を乗じた面積以上であること(第95条第2項第1号イ。食事と機能訓練に支障がなければ同一の場所にできる)、静養室・相談室・事務室を備えること、利用定員を超えてサービスを提供してはならないこと(第102条、災害などのやむを得ない場合を除く)が定められています。送迎の費用、延長サービス、食事の費用などの利用料は基準第96条に定めがありますが、事業所ごとの実際の運用・費用の内訳は統計から読み取れておらず、要検証です。

⑥指定は事業所ごと・6年更新で、地域密着型は市町村の指定

通所介護の指定は、介護保険法第70条により、居宅サービスの種類と事業所ごとに、申請に基づき都道府県知事が行います(第41条第1項の指定居宅サービス事業者)。指定は6年ごとの更新が必要で、更新を受けなければ期間の経過で効力を失います(第70条の2)。第70条第2項は、申請者が都道府県の条例で定める者でないとき(第1号)などを指定拒否の事由に挙げており、申請できる者の範囲は条例で確認が必要です。一方、定員19人未満の地域密着型通所介護は、第78条の2により市町村長が指定し、人員・設備・運営の基準は市町村の条例で定められます(第78条の4)。老人福祉法第20条の2の2は、老人デイサービスセンターを、介護保険の通所介護等の支給に係る者などを通わせて便宜を供与する施設と定め、社会福祉法第2条第3項第4号は、老人デイサービス事業や老人デイサービスセンターを経営する事業を第二種社会福祉事業としています。老人福祉法第14条の届出と介護保険の指定の実務上の関係は今回確認しておらず、要検証です。開設(経営)主体のうち営利法人が55.0%を占める点は、上記の数字の通りです。

商談前に見ておきたい通所介護特有の公開情報

通所介護を運営する法人に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。利用者個人が特定される情報は、公開情報であっても取り扱いに十分注意が必要です。

  • サービスの種類と定員: 通所介護(定員19人以上)か、地域密着型通所介護(19人未満)か、認知症対応型通所介護か。種類で指定権者と基準が異なります。
  • 設置・運営主体と法人の規模: 営利法人、社会福祉法人、医療法人のどれか。併設する他の事業(居宅介護支援、訪問介護、有料老人ホームなど)の有無。法人の公表資料や自治体の事業所情報で確認します。
  • 職員体制と求人の状況: 生活相談員・看護職員・介護職員・機能訓練指導員の配置、求人票の内容、常勤・非常勤の構成。
  • 営業時間・利用定員・送迎の範囲: 運営規程(基準第100条)に記載される営業日・営業時間・利用定員・通常の事業の実施地域・利用料その他の費用の額は、事業所のウェブサイトや重要事項説明書で確認できることが多い項目です。
  • 行政の公表情報: 介護サービス情報公表システム、自治体の事業所一覧、指定の更新時期(6年ごと)や行政処分の有無。公表の範囲は自治体によって異なります。
  • 計画・記録・請求の運用: 通所介護計画の作成(基準第99条)、サービスの実施記録、送迎や出欠の管理、介護報酬請求の運用方法。紙かデジタルかなど内部の運用は公開されないことが多く、ヒアリングで確認する項目です。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

通所介護(デイサービス)の事業所は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6年介護サービス施設・事業所調査(令和6年10月1日現在)では、通所介護は24,585事業所で、令和2年の24,087事業所から約2.1%増えましたが、令和5年からはほぼ横ばいです。定員18人以下の地域密着型通所介護は18,921事業所で、令和2年から約3.8%減っています。

通所介護と地域密着型通所介護の違いは何ですか?

利用定員が19人以上のものが通所介護、19人未満のものが地域密着型通所介護です(介護保険法第8条第7項・第17項、同法施行規則第10条の2)。通所介護は都道府県知事の指定で、基準は都道府県の条例で定められ、地域密着型通所介護は市町村長の指定で、基準は市町村の条例で定められます(同法第70条・第78条の2・第78条の4)。

デイサービスの収支差率はどのくらいですか?

厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査では、通所介護の令和6年度決算の収支差率は6.2%(令和5年度6.5%)で、全サービス平均の4.7%を上回りました(税引前、物価高騰対策関連補助金を含まない)。ただし、赤字の事業所が37.4%あり、延べ利用者数の階級別では収支差率に開きがあります。この調査は回答した事業所の集計で、有効回答率は46.2%です。

デイサービスの設備には、どのくらいの面積が必要ですか?

基準では、食堂と機能訓練室の合計面積を、3平方メートルに利用定員を乗じた面積以上とすることが定められています(基準第95条第2項第1号イ)。食堂と機能訓練室は、食事の提供や機能訓練に支障がなければ同一の場所とすることができます。そのほか静養室、相談室、事務室を備えることが必要です。市町村や都道府県の条例の確認も必要です。

通所介護の指定は、一度受ければずっと有効ですか?

いいえ。介護保険法第70条の2により、指定居宅サービス事業者の指定は6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過で効力を失います。事業所ごとの指定である点と合わせて、更新の時期を事業所ごとに把握しておく必要があります。

まとめ

通所介護の経営課題は、①通所介護の事業所数が横ばいの中、地域密着型通所介護は令和2年から約3.8%減っていること②収支差率の平均は6.2%でも37.4%の事業所が赤字で、平均値だけでは実態が読めないこと③月の延べ利用者数の規模によって収支差率が△4.2%から10.0%まで開くこと(ただし標本は小さい)④費用の約6割を給与費が占め、基準が定める人員配置が固定費の水準に影響しうること⑤利用者の8割以上が要介護1~3で、計画・記録・機能訓練・設備・定員遵守の基準を満たす運営が求められること⑥指定は事業所ごと・6年更新で、定員19人未満の地域密着型は市町村の指定になること、の6つです。営業やヒアリングの前に、サービスの種類と定員、設置・運営主体、職員体制、運営規程と行政の公表情報を公開情報で確認しておくと、論点を絞って話ができます。通所介護単独の倒産件数や加算の取得状況など今回確認できなかった項目は、公的な一次情報で必ずご確認ください。