結論から: 日本土地家屋調査士会連合会(日調連)の会員数は、2021年4月の16,141名から2026年4月の15,224名へ、5年で917名(5.7%)減りました。一方で調査士法人は441から735へ増えています。法務省の令和7年度の試験では、受験者4,824人に対し合格者は489人(合格率は約10.1%)で、合格者の平均年齢は39.2歳、合格者の受験地は東京が約4割でした。業務は土地家屋調査士法第3条で、不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量や筆界特定の代理などに限定され、資格のない者が業とすることは第68条で禁じられています。この記事では、土地家屋調査士事務所(個人・小規模の事務所)を商談前に調べるときの経営課題を、公開情報から6パターンに整理します。

調査士事務所を「測量業」「司法書士」と同じ型で見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし土地家屋調査士は、国土交通省の登録を受ける測量業とも、司法書士・行政書士・弁理士とも、制度の入口が異なります。土地家屋調査士法は、調査士を「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家」と位置づけ(第1条)、業務を、表示に関する登記に必要な土地・家屋の調査・測量、その登記の申請手続の代理、書類の作成、筆界特定の手続の代理、これらの相談などと定めています(第3条)。資格を得るには、法務省の土地家屋調査士試験に合格するか、法務局で表示に関する登記の事務に通算10年以上従事して法務大臣の認定を受ける必要があり(第4条)、そのうえで日本土地家屋調査士会連合会(日調連)の名簿に登録し(第8条)、事務所の所在地を管轄する調査士会に入会します(第9条・第52条)。つまり調査士事務所の売上は、「登記に必要な現地調査・測量」という実務の質と、不動産の売買・相続・分筆・建物新築などの取引に連動して発生する依頼の入り口で決まる構造と読めます。商談前に、相手が個人事務所か調査士法人か、測量や建築に近い事業を併営しているかを区別することが出発点になります。

業界の全体像を数字で見る

会員数は日調連、試験の結果は法務省が公表しています。確認できた一次情報から、次の数字が分かります。

  • 調査士会員数(日調連・各年4月1日ほか): 2021年16,141名→2023年10月15,627名→2024年15,465名→2025年15,321名→2026年15,224名。5年で917名減(5.7%減)、直近2年(2024→2026年)では241名減(1.6%減)で、減少のペースは緩やかです(当社計算)。
  • 調査士法人会員数: 2021年441→2023年10月584→2024年617→2025年669→2026年735。5年で294法人増(66.7%増)でした(当社計算)。
  • 試験の出願者数(法務省): 令和2年度4,646人→令和7年度5,821人→令和8年度6,076人。令和2年度から30.8%増で、令和8年度は前年度比255人増(4.4%増)です(当社計算)。
  • 令和7年度の最終結果(法務省・2026-02-13): 受験者4,824人、合格者489人(男430人・女59人)。合格者の平均年齢は39.20歳(最低20歳・最高65歳)。受験地別の合格者は東京197人、名古屋72人、大阪63人、福岡51人などで、東京は全体の約4割(40.3%・当社計算)です。

なお、会員数の過去の値は、日調連の概要ページ(現行版は2026年4月1日現在)と、同じページのインターネットアーカイブ保存版から読み取ったものです。「会員」の数え方(法人会員と個人会員の関係を含む)が年によって同一かは確認できておらず、法人会員の数を個人会員に足し引きしていません(要検証)。また、会員の年齢構成・都道府県別人数・補助者数は、隔年で発刊される『土地家屋調査士白書2026』(有料)に載っているものの、本文は未確認のため扱いません。

土地家屋調査士事務所の経営課題、主要な6パターン

ここからは、調査士事務所に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①会員数の緩やかな減少と、法人化の進行

日調連の会員数は2021年の16,141名から2026年の15,224名へ減っている一方、調査士法人の会員は441から735へ増えています。法人化が進む背景は本記事では確認できていませんが、調査士法人は、事務所ごとに、その所在地を管轄する法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員である社員を常駐させなければならない(第36条)、社員は自己または第三者のために法人の業務の範囲に属する業務を行ったり他の法人の社員になったりできない(第37条)といった、個人事務所とは異なる運営ルールがあります。事務所の公式サイトでは、個人か法人か、社員(調査士)の人数、複数の事務所を構えているかが、事業の規模と継続性のサインになります。会員数の減少が緩やかであることと、法人の増加を併せると、「個人事務所の独立開業が中心」から、一定の規模で組織化された事務所が増える二層の構造へ移っている可能性がありますが、因果は断定できません。

②新規参入の細さ: 出願は増えても、合格は年約500人

出願者数は、令和2年度の4,646人から令和8年度の6,076人へ増えています。一方、法務省が公表した最終結果では、合格者は令和4年度424人、令和5年度428人、令和6年度505人、令和7年度489人と、4〜5百人台で推移しています。受験者に対する合格者の割合は、令和4年度9.6%、令和5年度9.7%、令和6年度11.0%、令和7年度10.1%でした(当社計算)。ただし、令和4〜6年度の受験者は「午前の部及び午後の部の双方を受験した者」、令和7年度は「午前の部を免除された者であって午後の部を受験した者並びに双方を受験した者」と定義が異なるため、単純に比較して増減を論じることはできません。合格点は、午後の部が令和4年度79.5点、令和5年度72.0点、令和6年度78.0点、令和7年度76.0点(いずれも満点100点)と年度で動き、午前の部の記述式の基準点も28点の年度と32点の年度があります(満点40点)。合格者の平均年齢は38.5〜39.4歳、女性の割合は8.3〜12.9%の範囲です。合格者数が会員数の約3%(489人÷15,224名・当社計算)にとどまるうえ、合格者のうち実際に登録・入会する人数と、退会する人数は公表資料から確認できないため、会員数の減少と合格者数を結び付けた推計は行いません(要検証)。新規参入が細いことを前提に、事務所では、補助者の育成、所員の採用、承継の準備が経営課題になりやすいと読めます。

③登録・入会に加え、事務所・帳簿・依頼応諾・秘密保持などの義務

調査士は、日調連の名簿への登録(第8条)と調査士会への入会(第52条)が必要で、法務省令の基準に従って事務所を設けること(第20条)、業務に関する帳簿を備え関係書類を保存すること(第21条)が義務づけられています。正当な事由がなければ、依頼を拒んではならず(第22条。筆界特定の代理・相談やADRの代理に関する依頼は除く)、違反すると100万円以下の罰金の定めがあります(第70条)。業務に関して虚偽の調査や測量をすることは禁じられ(第23条)、違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(第71条)。さらに、業務上知り得た秘密を正当な事由なく漏らしてはならず(第24条の2)、所属する調査士会・日調連の研修を受けて資質の向上を図る努力義務(第25条第1項)もあります。登録は、引き続き2年以上業務を行わないとき等に日調連が取り消すことができる(第16条第1項)とされています。こうした固有の義務は、事務所の「品質管理」と「記録の管理」が経営に直結する産業構造を示しています。事務所の公式サイトでは、帳簿・書類の保存体制、現地調査・測量の工程の説明、研修の受講状況の記載がサインになります。

④業務範囲の広がりと、独占・非資格者の取締りの構造

調査士の業務は、表示に関する登記の調査・測量・申請の代理・書類作成に加え、筆界特定の手続の代理・書類作成、その相談(第3条第1項)、さらに一定の要件を満たした調査士は、土地の筆界が現地で明らかでないことを原因とする民事紛争に関する民間紛争解決手続(ADR)の代理も行えます(同条第2項の研修修了・法務大臣の認定・調査士会の会員であること)。調査士会に入会している調査士・調査士法人以外の者は、これらの事務を業とすることができず(第68条)、弁護士などの例外が定められています(同条ただし書)。内閣官房の資料によれば、令和6年度は1,864件の筆界特定申請の処理が行われました(速報値。「処理」が受理か既済かなどの定義は資料上で確認できておらず、増減の評価はしません)。筆界特定は、登記官が外部専門家の意見を踏まえて筆界を特定する制度で、裁判によらずに筆界をめぐる紛争を予防・解決するものと説明されています。事務所によって、登記申請中心か、境界の確認・紛争対応までを扱うかで、収益構造と専門人材の必要性が変わります。

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⑤測量・建築の隣接資格との交差と、事務所の守備範囲

土地家屋調査士試験は、午前の部(土地・家屋の調査及び測量に関する科目)の筆記試験について、測量士・測量士補、または一級建築士・二級建築士となる資格を有する者は申請により免除される制度があります(第6条第5項第1号)。つまり、隣接分野の有資格者が調査士の資格を重ねて取る入り口があり、事務所には、測量業(測量業・建設コンサルタント)や、建築士事務所(建築設計事務所)と近い領域で併営している例も考えられます(個別の併営割合は一次資料で確認できておらず、要検証)。また、法務大臣は試験の実施について国土交通大臣の意見を聴かなければならないとされており(第6条第6項)、測量・建築を所管する行政とのつながりが制度に織り込まれています。事務所の公式サイトでは、測量士・一級建築士・司法書士・不動産鑑定士などの他資格の併記や、測量・設計・登記をワンストップで提供する旨の記載の有無が、守備範囲と取引先の広がりのサインになります(関連: 不動産鑑定士事務所)。

⑥受託の入り口: 民間の依頼と、官公署等の公共嘱託

調査士法は、公共嘱託登記土地家屋調査士協会という名称の一般社団法人を設けられるとし(第63条)、その協会が官公署等の依頼を受けて表示に関する登記に必要な調査・測量や登記の嘱託・申請を行うこと(第64条)を定めています。協会は、調査士会に入会している調査士・調査士法人でない者に、これらの事務を取り扱わせてはならないとされています(第64条第2項)。個人や不動産会社などから受ける民間の依頼と、官公署等から協会経由で受ける公共嘱託とでは、収益の波と取引先が異なります。公共嘱託の件数・金額は今回の確認範囲で一次資料に当たれておらず、事務所ごとの比率は不明です(要検証)。事務所の公式サイトでは、公共嘱託登記協会への所属、官公署・不動産会社・金融機関・建築会社との取引の記載、相続・分筆・建物登記などの取扱分野の説明が、受託の入り口を読むサインになります。

商談前に見ておきたい調査士事務所特有の公開情報

調査士事務所をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 形態と所属: 個人事務所か調査士法人か。所属する調査士会、社員・所員・補助者の人数、事務所の数。
  • 取扱分野: 土地(分筆・合筆・地積更正)、建物(新築・滅失・区分)、筆界特定やADRの代理、相続・不動産取引に伴う案件など。
  • 他資格の併記: 測量士、一級建築士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士などの併記。測量・設計・登記を一体で提供するか。
  • 受託の入り口: 不動産会社・金融機関・建築会社・官公署(公共嘱託)との取引や、ウェブサイト・紹介経由の記載。
  • 人材と承継: 補助者・所員の募集、代表者の経歴・年齢の記載、後継者や承継の情報。
  • 品質管理: 現地調査・測量の工程や使用機器、帳簿・書類の管理、研修受講の記載。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。隣接する分野の士業全般、司法書士・行政書士・弁理士、専門サービス業の記事もあわせて確認すると整理しやすくなります。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。決算書から利益率の傾向を掴む視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標を参照してください。

よくある質問

土地家屋調査士の会員数はどのくらいですか?

日本土地家屋調査士会連合会の概要ページによると、2026年4月1日現在の土地家屋調査士会員数は15,224名、調査士法人会員数は735です。2021年4月1日現在は16,141名・441法人でした。会員の数え方が年によって同一かは確認できていないため、増減は目安としてご覧ください。

土地家屋調査士試験の合格率はどれくらいですか?

法務省の最終結果によると、令和7年度は受験者4,824人に対し合格者489人で、合格率は約10.1%(当社計算)でした。令和4〜6年度は受験者の定義が異なる(午前の部・午後の部の双方を受験した者)ため、単純に比較できません。令和8年度の出願者は6,076人で、結果は本記事の確認時点では未公表です。

土地家屋調査士の業務は何ですか?

土地家屋調査士法第3条では、不動産の表示に関する登記に必要な土地・家屋の調査・測量、その登記の申請手続の代理、書類の作成、筆界特定の手続の代理・書類の作成、これらの事務の相談が挙げられています。一定の要件を満たした調査士は、土地の筆界が現地で明らかでないことを原因とする民間紛争解決手続の代理も行えます。

資格のない人が調査士の業務を行ってもよいですか?

調査士会に入会している調査士・調査士法人以外の者は、法第3条第1項第1号から第5号までの事務などを業とすることができません(第68条)。ただし、弁護士などの例外が法律で定められています。個別の取扱いは条文と所管の法務局・調査士会の案内を確認してください。

まとめ

土地家屋調査士事務所の経営課題は、①会員数の緩やかな減少と法人化の進行②出願は増えても合格は年約500人という新規参入の細さ③登録・入会に加えて事務所・帳簿・依頼応諾・秘密保持などの義務④業務範囲の広がりと独占・非資格者取締りの構造⑤測量・建築の隣接資格との交差と守備範囲⑥民間依頼と官公署等の公共嘱託という受託の入り口、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。会員数は2021年の16,141名から2026年の15,224名へ5.7%減、法人は441から735へ、令和7年度の試験は受験者4,824人・合格者489人(約10.1%)、平均年齢39.2歳です。会員の年齢構成・表示登記の件数・公共嘱託の割合・報酬水準など確認できていない部分は決めつけず、形態・取扱分野・他資格の併記・受託の入り口・承継の状況といった一次情報を確認しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。