結論から: 専門サービス業(コンサルティング業・調査業・マーケティング業等)は、市場が拡大しながら倒産も過去最多ペースで増えるという、一見矛盾した二面性を抱えています。帝国データバンク「経営コンサルティング業界」倒産動向(2025年1-10月、2025年11月11日発表)によると、コンサル業界の市場規模は2023年度に初めて4兆円を突破し、2024年度も4兆円台を維持していますが、成長率は3%以下に鈍化しています。一方で倒産件数は2025年1-10月時点で146件に達し、前年通年159件(2000年以降で当時最多)を上回るペースで推移しており、2025年通年での過去最多更新が確実な情勢です。TDBの分析によれば、倒産全体の8割超を資本金1,000万円未満の小規模事業者が占め、中堅・大手との格差が広がっています。倒産増加の背景には単価競争や需要構造の変化など複合的な要因があり、日本経済新聞が報じたTDB見解では「専門性による差別化を図れない事業者は、生成AIの台頭による下押し圧力に耐えきれず、今後さらに淘汰が加速するとみられる」との指摘もありますが、生成AIだけが原因と断定できるものではありません。本記事では、帝国データバンク・日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)の一次データをもとに、商談前に押さえておきたい専門サービス業の経営課題を5パターンに整理します。

専門サービス業界を数字で見る

個別の課題に入る前に、業界全体の規模感を確認します。帝国データバンク「経営コンサルティング業界」倒産動向(2025年1-10月、2025年11月11日発表)によると、コンサル業界の市場規模は2023年度に初めて4兆円を突破し、2024年度も4兆円台を維持していますが、成長率は3%以下に鈍化しています。就業者数は2023年度時点で16万人を超えています。倒産件数は2025年1-10月時点で146件で、前年通年159件(2000年以降で当時最多)を上回るペースにあり、2025年通年での過去最多更新が確実です。日本経済新聞が報じたTDB調査によると、倒産に休廃業・解散を加えた件数(2026年1-5月合計)は242件(前年同期比11%増、2000年以降で過去最多)にのぼり、内訳は倒産74件(前年同期比7%増)、休廃業・解散168件(前年同期比13%増)です。休廃業・解散の増加率が倒産の増加率を上回っている点は、経営破綻に至る前に事業を畳む選択をする事業者が増えていることを示唆しています。隣接領域であるマーケティングリサーチ業(調査業)は、日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)「第50回経営業務実態調査」によると2024年度の市場規模が2,725億円(前年度比5.1%増)で、コンサル業界とは対照的に拡大が続いています。同調査では、調査業とコンサルティング/シンクタンク等7区分を合わせた新規セグメントの売上高が2,073億8,000万円(前年度比8.8%増)、従来型調査と合算した「インサイト産業」全体の売上高は4,799億円(前年度比6.7%増)でした。なお経済産業省「特定サービス産業実態調査」では「学術研究,専門・技術サービス業」大分類の収入高が2016年以降30兆円超で推移していたことが分かっていますが、この調査自体は2020年7月31日付で中止(廃止)されており、以後の同一系列の公的統計は確認できません。専門サービス業全体を横断して継続的に語れる統計が乏しいことも、この業界をリサーチする際に押さえておきたい前提です。(参考として、全業種横断の統計になりますが、帝国データバンク「全国企業倒産集計2025年報」(2026年1月21日発表)によると、2025年の全国企業倒産件数は1万261件(前年比3.6%増)で、2013年以来12年ぶりに年間1万件を超え、4年連続の増加となっています。これはコンサル業限定の数値ではなく、日本全体で倒産が増加基調にある中での専門サービス業の動向として参考にしてください。)

専門サービス業の経営課題、主要な5パターン

ここからは、帝国データバンク・日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)の公開情報をもとに、専門サービス業に特有の経営課題を5パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①二極化する市場構造

帝国データバンクの調査によると、コンサル業界全体の市場規模は2023年度に4兆円を突破し2024年度も4兆円台を維持していますが、成長率は3%以下に鈍化しています。その一方で、倒産全体の8割超を資本金1,000万円未満の小規模事業者が占めており、中堅・大手との経営体力の格差が拡大しています。市場全体としては緩やかな成長が続いているにもかかわらず、規模の小さい事業者から倒産・淘汰が進むという二極化した構造が浮かび上がります。相手企業が資本金1,000万円未満の小規模事業者に該当するかどうかは、法人番号公表サイトや決算公告の有無から確認できる基本的な切り分けポイントです。

②生成AIによる代替圧力とコモディティ化

日本経済新聞が報じた帝国データバンクの見解によると、「基礎的なリサーチや汎用的な研修コンテンツの作成などは生成AIによって代替されている」とされ、「専門性による差別化を図れない事業者は、生成AIの台頭による下押し圧力に耐えきれず、今後さらに淘汰が加速するとみられる」と指摘されています。ただし、倒産・休廃業解散の増加は単価競争や需要構造の変化などが複合的に絡み合った結果であり、生成AIの普及だけが唯一の原因と断定できるものではありません。相手企業のサービスメニューが汎用的なリサーチ・研修提供に偏っているか、それとも独自の専門領域・業界特化型の知見を打ち出しているかは、コモディティ化への耐性を見極める手がかりになります。

③少数クライアント依存の収益構造

帝国データバンクの分析によると、小規模なコンサル事業者ほど少数クライアントへの依存度が高く、主要案件のキャンセルや契約打ち切りが発生した際に、人件費等の固定費を吸収しきれず倒産に至るケースが目立つとされています。日本経済新聞が報じた調査では、倒産に休廃業・解散を加えた件数(2026年1-5月合計)が242件(前年同期比11%増)にのぼり、内訳は倒産74件(前年同期比7%増)、休廃業・解散168件(前年同期比13%増)でした。休廃業・解散の増加ペースが倒産の増加ペースを上回っていることも、収益の柱となる大口クライアントを失う前に事業継続を諦める事業者が一定数存在することを示唆しています。相手企業の主要取引先が特定の業界・少数の大口顧客に偏っていないか、直近のニュースリリースや採用状況(人員拡大・縮小の動き)は、この依存構造を推測する材料になります。

④属人性とナレッジ継承

コンサルティング業は、特定のコンサルタント個人が持つ専門知識・実績・クライアントとの関係性に業務が依存しやすい業態特性があるとされています。担当者の退職や独立によって、蓄積されたナレッジや顧客との関係が個人とともに社外へ流出しやすいという構造上のリスクは、業界内でしばしば指摘される論点です。ただし、この点を定量的に裏付ける専門サービス業限定の一次統計は本記事執筆時点で確認できておらず、あくまで定性的な傾向として捉える必要があります。相手企業が特定のキーパーソンに極端に依存した体制になっていないか(代表者以外の役員・幹部の情報発信、組織図の公開状況等)は、商談前に確認しておきたい視点です。

⑤専門人材の採用競争

専門性の高いコンサルタント・リサーチャーの採用をめぐる競争が厳しいとの指摘は、人材業界関連の各種調査でしばしば見られます。ただしこれらは人材コンサルティング会社によるアンケート等が中心で、専門サービス業限定の採用環境を裏付ける公的な一次統計は確認できていません。数値としての裏付けは持たないものの、採用環境が厳しいとの指摘がある点は、相手企業の求人票の内容(必要経験年数・待遇・リモートワーク可否等)を確認する際の視点として押さえておく価値があります。

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商談前に見ておきたい公開情報

専門サービス業の企業をリサーチする際は、他業種と共通する決算公告・求人票・ニュースリリースに加えて、次のような業界特有の公開情報も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 帝国データバンク(TDB)・東京商工リサーチ(TSR)の企業情報: 信用調査機関が公開・提供する企業情報から、資本金規模・設立年・業歴・取引先動向の傾向をうかがえる。前述①の二極化構造のどちら側に位置するかを見極める手がかりになる。
  • 決算公告の有無: 決算公告を行っているかどうかは、会社の規模・情報開示に対する姿勢を推測する材料になる。
  • 法人番号公表サイトでの基本情報確認: 資本金・所在地・設立年月日など、商談前の基礎確認に使える公開情報。
  • 求人状況: 採用中の職種・必要経験年数・募集人数の推移は、⑤の採用競争への対応状況や事業拡大・縮小の方向性を推測する手がかりになる。
  • 代表者の登壇実績や著書: 業界内での専門性・発信力は、②のコモディティ化への耐性(独自の専門領域を確立できているか)を見極める材料の一つになる。
  • JMRA等の業界団体への会員資格の有無: 日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)のような業界団体への加盟状況は、業界内での立ち位置や情報収集力を推測する参考情報になる。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で、仮説の立て方は仮説営業とは|仮説構築の4ステップと立て方で解説していますので、あわせて活用してください。相手企業の財務状況を短時間で掴む視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標もあわせてご覧ください。

よくある質問

コンサルティング業界の市場規模はどのくらいですか

帝国データバンク「経営コンサルティング業界」倒産動向(2025年11月11日発表)によると、コンサル業界の市場規模は2023年度に初めて4兆円を突破し、2024年度も4兆円台を維持しています。ただし成長率は3%以下に鈍化しており、就業者数は2023年度時点で16万人を超えています。

コンサル会社の倒産はなぜ増えているのですか

帝国データバンクによると、コンサル業界の倒産件数は2025年1-10月時点で146件に達し、前年通年159件(2000年以降で当時最多)を上回るペースで、2025年通年での過去最多更新が確実です。倒産全体の8割超を資本金1,000万円未満の小規模事業者が占めており、少数クライアントへの依存度の高さが主要因の一つとされています。倒産増加の背景には単価競争や需要構造の変化、生成AIの普及なども複合的に絡んでいるとみられ、単一の原因に絞れるものではありません。

生成AIによってコンサルタントの仕事は代替されますか

日本経済新聞が報じた帝国データバンクの見解では、「基礎的なリサーチや汎用的な研修コンテンツの作成などは生成AIによって代替されている」とされ、専門性による差別化を図れない事業者は今後さらに淘汰が加速するとみられる、と指摘されています。ただしこれは倒産増加の複合的な要因の一つであり、生成AIの普及だけが唯一の原因と断定できるものではありません。

マーケティングリサーチ業(調査業)の市場規模はどのくらいですか

日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)「第50回経営業務実態調査」によると、マーケティングリサーチ業(調査業)の市場規模は2024年度で2,725億円(前年度比5.1%増)です。調査業とコンサルティング/シンクタンク等を合わせた「インサイト産業」全体の売上高は4,799億円(前年度比6.7%増)で、コンサル業界とは対照的に拡大が続いています。

まとめ

専門サービス業(コンサルティング業・調査業・マーケティング業等)の経営課題は、①二極化する市場構造②生成AIによる代替圧力とコモディティ化③少数クライアント依存の収益構造④属人性とナレッジ継承⑤専門人材の採用競争、という5パターンに整理できます。市場全体は4兆円台で緩やかな成長を続ける一方、倒産・休廃業解散は2000年以降で過去最多を更新するペースにあり、市場拡大と淘汰の加速が同時に進行しているのがこの業界の特徴です。倒産増加の要因は単価競争・需要構造の変化・生成AIの普及など複合的であり、どれか一つに原因を求めることはできません。個社の状況を決めつけず、資本金規模・クライアントの分散度・専門性の打ち出し方・採用状況といった一次情報で仮説を検証しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。