結論から: 矢野経済研究所の調査によると、住宅リフォーム市場規模は2024年の7兆3,181億円から2025年には7兆5,119億円(前年比+2.5%)へ拡大し、2026年は7兆7,000億円が見込まれています。市場は拡大基調にある一方、東京商工リサーチの集計では2025年上半期(1-6月)の「建築リフォーム工事業・塗装工事業」倒産は119件で、過去20年で最多だった2009年(111件)を上回る過去最多ペースとなっています。倒産の原因は約8割が「販売不振」で、負債規模・従業員規模の小さい事業者が中心です。さらに2025年4月には改正建築基準法の「4号特例」縮小が施行され、確認手続きの負担が増える一方、建設業法上は500万円未満の工事なら建設業許可が不要という低い参入障壁も残っています。本記事では住宅リフォーム業に特有の経営課題を6パターンに整理し、商談前リサーチで着目すべきポイントを出典付きで解説します。

住宅リフォーム業を建設業一般と分けて見る理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。建設業全体の2024年問題・重層下請け構造・DXの遅れといった共通課題は建設業の経営課題6選|2024年問題・重層下請け・DX遅れを数字で読み解くで扱っていますが、同記事は建設業全体を横断する構成のため、住宅リフォーム業に固有の統計・制度動向までは踏み込んでいません。住宅リフォーム業は、東京商工リサーチの倒産統計で「建築リフォーム工事業・塗装工事業」という独立区分で集計されている点、そして建設業法上500万円未満の工事は建設業許可が不要という軽微な工事中心の業界構造を持つ点で、資材の供給側にあたる建材卸売業とも異なる立ち位置にあります。加えて、訪問販売・点検商法という消費者保護の観点からの規制・相談実績が存在する点も、他の建設細分業種にはあまり見られない住宅リフォーム業特有の軸です。

住宅リフォーム業界の全体像を数字で見る

個別の課題に入る前に、業界全体の構造を確認します。矢野経済研究所のプレスリリース(2026-07-16発表)によると、住宅リフォーム市場規模は2024年7兆3,181億円→2025年7兆5,119億円(前年比+2.5%)→2026年予測7兆7,000億円(前年比+1.9%)と拡大が続いています(出典)。ただし内訳を見ると、2025年は10㎡を超える増改築工事が前年比-22.1%と落ち込む一方、設備修繕・維持関連費用は+4.7%、家具・インテリア費用は+2.5%と、大規模工事よりも小口の修繕・維持需要が市場を牽引しています。背景として、団塊ジュニア世代の持家がリフォーム適齢期を迎えていることに加え、資材・人件費の上昇による工事単価そのものの上昇が指摘されています。一方、東京商工リサーチの集計では2025年上半期の「建築リフォーム工事業・塗装工事業」倒産は119件で、過去20年で最多だった2009年(111件)を上回るペースにあり(出典)、市場規模の拡大と個々の事業者の淘汰が同時に進行している構図がうかがえます。

住宅リフォーム業の経営課題、主要な6パターン

ここからは、住宅リフォーム業に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①訪問販売・点検商法をめぐる消費者トラブル

国民生活センターの集計(ページ更新2026-07-31、データ基準日2026-05-31)によると、訪問販売によるリフォーム工事の相談件数は2023年11,879件→2024年9,839件→2025年5,544件→2026年速報602件(前年同期680件)と減少傾向にあります(出典)。一方、点検商法の相談件数は2023年12,550件→2024年19,249件→2025年19,696件→2026年速報2,193件(前年同期2,012件)と、訪問販売とは逆に増加基調が続いています。ただし点検商法はリフォーム工事に限らず太陽光発電など住宅設備全般を含む可能性があるため、相談件数の全てがリフォーム工事に直結するとは断定できません。それでも、業界全体として消費者からの信頼確保が経営課題になっていることは、この2つの統計から読み取れます。対象事業者が訪問販売・点検商法に依存した営業形態を取っているか、それとも紹介・リピート中心の営業形態かは、経営の安定性を見立てるうえで確認しておきたいポイントです。

②倒産の主因8割が「販売不振」という薄利多売構造

東京商工リサーチによると、2025年上半期の「建築リフォーム工事業・塗装工事業」倒産119件のうち、原因別で最も多いのは販売不振の95件(約8割)で、赤字累積は14件でした(出典)。倒産企業の内訳は資本金1,000万円未満が107件(89.9%)、従業員10人未満が113件(94.9%)と、いずれも小規模事業者に集中しています。2023年1-10月の「リフォーム業」倒産82件(2002年以降の同期間で過去最多)を対象にした別の調査でも、販売不振が61件(74.3%)と最多で、負債1億円未満が71件(86.5%)、従業員10人未満が78件(95.1%)、形態別では「破産」が77件(93.9%)を占めていました(出典)。時系列で見ると2009年111件→2021年55件(コロナ禍で激減)→2024年99件→2025年上半期119件と推移しており、コロナ禍の落ち込みから一転して過去最多ペースに転じています。いずれの調査でも小規模・小資本の事業者が倒産の中心であり、受注の安定性・利益率の確保が業界共通の課題であることがうかがえます。

③2025年4月施行「4号特例」縮小による確認手続き負担増

国土交通省によると、2025年4月に施行された改正建築基準法により「4号特例」が縮小されました(出典)。これまで建築確認・検査の対象外となっていた4号建築物のうち、新たに「新2号建築物」(2階建て以上または延べ面積200㎡超)に区分される住宅については、大規模な修繕・模様替え(リフォーム)であっても全国で建築確認・検査が新たに必要になり、構造関係規定・省エネ関連図書の提出も求められるようになりました。これは住宅リフォーム業に直接影響する制度変更で、対象となる工事の設計・申請にかかる時間とコストが増える可能性があります。対象事業者が建築士との連携体制を持っているか、確認申請の実務経験があるかは、大規模リフォームへの対応力を見立てる材料になります。

④建設業法「500万円ルール」による低参入障壁と小規模乱立

建設業法上、500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満または木造住宅で延べ床面積150㎡未満)の工事は「軽微な工事」として建設業許可が不要とされています。この仕組みは無許可の小規模事業者・個人事業主が参入しやすい構造的背景になっていると考えられますが、無許可事業者が実際にどの程度の比率を占めるかを示す統計は今回確認できていないため、数値としては扱いません。前述の通り倒産企業の9割前後が資本金1,000万円未満・従業員10人未満という小規模事業者である点は、この低い参入障壁とも整合的です。対象事業者が建設業許可を保有しているか、保有している場合はどの業種区分(内装仕上工事業・塗装工事業等)かは、事業規模や対応可能な工事範囲を推測する基本情報になります。

⑤リフォームかし保険・事業者団体登録制度による信頼性の差

国土交通省告示に基づく「住宅リフォーム事業者団体登録制度」があり、登録団体に加盟する事業者は、500万円以上のリフォーム工事について原則としてリフォームかし保険(増改築瑕疵担保責任保険)に加入する仕組みになっています。ただし、加入率や登録事業者数を示す具体的な統計は今回確認できていないため、数値としては扱いません。制度そのものの詳細を本文化する際は国土交通省の該当ページで一次確認することが望ましく、未確認の場合は断定を避けた表現にとどめる必要があります。対象事業者がこの登録制度に加盟しているか、リフォームかし保険への加入を明示しているかは、施工後のトラブル対応力を見立てる一つの手がかりになります。

⑥職人の高齢化・DXの遅れ、M&A・事業承継の広がり(いずれも要検証)

大工をはじめとする職人数の具体的な推移や、住宅リフォーム業単体のM&A件数・後継者不在率を示す定量統計は今回確認できていません。ただし、前述の通り倒産企業の多くが小規模・小資本の事業者であり、代表者の高齢化や後継者不在を背景に、廃業ではなく第三者への事業承継(M&A)という選択肢への関心が業界内で高まりやすい環境にあると考えられます。同様に、クラウド型の工程管理・見積システムなど労務管理・業務効率化のDX投資についても、具体的な導入率を示す一次データは確認できていません。断定的な数値が無い以上、対象事業者のホームページでの「施工管理システム」「オンライン見積もり」への言及や、求人票での実務経験者募集の状況から、個別に確認する視点が欠かせません。

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商談前に見ておきたい住宅リフォーム業特有の公開情報

住宅リフォーム業をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 建設業許可の有無: 500万円未満の「軽微な工事」中心か、許可を取得して大規模工事にも対応しているかで、事業規模や信頼性を推測できる。
  • リフォームかし保険・事業者団体登録の有無: 住宅リフォーム事業者団体への登録、かし保険への加入表示があるか。
  • 消費者相談歴: 訪問販売・点検商法に依存した営業を行っていないか、営業形態(紹介・リピート中心か訪問営業中心か)を確認する。
  • 資本金・従業員規模: 倒産企業の9割前後が資本金1,000万円未満・従業員10人未満という統計を踏まえ、経営体力の目安として確認する。
  • 施工実績の開示状況: 施工事例・お客様の声の公開状況、建築士との連携体制(4号特例縮小への対応力)を確認する。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。住宅リフォーム業の経営課題は建設業の経営課題6選|2024年問題・重層下請け・DX遅れを数字で読み解くで扱った建設業全体の2024年問題・DXの遅れとも重なる部分がありますが、資材の供給側にあたる建材卸売業の経営課題6選とは異なる、施主に直接向き合う元請け側の課題です。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。決算書から利益率の傾向を掴む視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標を参照してください。

よくある質問

リフォーム業の倒産は増えていますか?

東京商工リサーチの集計で、2025年上半期(1-6月)の「建築リフォーム工事業・塗装工事業」倒産は119件で、過去20年で最多だった2009年(111件)を上回るペースでした。原因の約8割が「販売不振」で、資本金1,000万円未満・従業員10人未満の小規模事業者が中心です。

住宅リフォーム業の市場規模は伸びていますか?

矢野経済研究所の調査で、2025年の住宅リフォーム市場規模は7兆5,119億円(前年比2.5%増)、2026年は7兆7,000億円が見込まれています。ただし10㎡を超える増改築工事は前年比22.1%減で、設備修繕・維持関連費用の伸びが市場全体を牽引している点には留意が必要です。

2025年4月の法改正はリフォーム業にどう影響しますか?

改正建築基準法の「4号特例」縮小により、新2号建築物(2階建て以上または延べ面積200㎡超)では、大規模な修繕・模様替え(リフォーム)でも建築確認・検査が全国で新たに必要になりました。構造関係規定・省エネ関連図書の提出も求められるようになり、確認申請にかかる時間・コストの負担が増える可能性があります。

リフォーム業と建設業一般の経営課題はどう違いますか?

建設業法上、500万円未満の工事は建設業許可が不要な「軽微な工事」として扱われるため、無許可の小規模事業者が参入しやすい構造にあります。また訪問販売・点検商法という消費者トラブルの多さも、建設業一般とは異なる住宅リフォーム業特有の課題です。倒産企業の9割前後が資本金1,000万円未満・従業員10人未満という小規模事業者である点も特徴です。

まとめ

住宅リフォーム業の経営課題は、①訪問販売・点検商法をめぐる消費者トラブル②倒産の主因8割が「販売不振」という薄利多売構造③2025年4月施行「4号特例」縮小による確認手続き負担増④建設業法「500万円ルール」による低参入障壁と小規模乱立⑤リフォームかし保険・事業者団体登録制度による信頼性の差⑥職人の高齢化・DXの遅れ、M&A・事業承継の広がり(いずれも要検証)、という6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。市場規模が2025年に7兆5,119億円(前年比+2.5%)まで拡大する一方、倒産は過去20年で最多ペースという逆説的な状況にあり、業界全体の拡大と個々の事業者の淘汰が同時進行している点が特徴です。500万円未満の工事なら建設業許可が不要という低い参入障壁の中で、訪問販売・点検商法という消費者保護の観点からの信頼性確保が経営の分かれ目になりやすい業種だからこそ、2025年4月の4号特例縮小といった制度動向は、事業規模の大小を問わず影響が及びます。決めつけずに建設業許可の有無・事業者団体登録・消費者相談歴といった一次情報を確認しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。