結論から: 厚生労働省の社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では、母子生活支援施設は全国に202施設あり、令和2年(212施設)から約4.7%減りました(当社計算)。定員は4,183世帯で約6.4%減、母子支援員(常勤換算)は706人から658人へ約6.8%減っています。入所の理由はこども家庭庁の全数調査(令和5年2月1日現在)で「配偶者からの暴力」が50.3%と最多でした。入所は施設と利用者の直接契約ではなく、児童福祉法第23条に基づき都道府県等が保護を実施する仕組みで、施設は第一種社会福祉事業として国・地方公共団体・社会福祉法人が経営するのが原則です。

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。この記事で扱うのは、児童福祉法に定める児童福祉施設の一つ、母子生活支援施設です。保育所のように利用者が施設と契約する形とは異なる点が多いため、先に区別します。

母子生活支援施設は「保育所」でも「児童養護施設」でもない

児童福祉法第38条は、母子生活支援施設を、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子とその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設と定めています。日中に子どもを預かる保育園・幼稚園や放課後児童クラブ、児童館と違い、母と子が一緒に入所し、母子室という世帯ごとの居室で暮らす点が特徴です。児童だけを入所させる児童養護施設や乳児院とも異なります。

制度の入口も違います。児童福祉法第23条第1項は、都道府県等が、それぞれ設置する福祉事務所の所管区域内の保護者が、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子であって、その者の監護すべき児童の福祉に欠けるところがある場合に、保護者から申込みがあったときは、その保護者及び児童を母子生活支援施設において保護しなければならないと定めています。ただし、やむを得ない事由があるときは、適当な施設への入所のあっせん、生活保護法の適用等の適切な保護を行うとされています。入所を希望する人は、希望する施設などを記載した申込書を都道府県等に提出し(第2項)、施設は保護者の依頼を受けてその提出を代わって行うことができます。都道府県等は、施設の選択と適正な運営の確保に資するため、設置者・設備・運営の状況などの情報を提供することも求められています(第5項)。入所の窓口が行政であることは、営業や提案を考えるうえで押さえておくべき前提です。費用の仕組み(措置費など)の詳細は今回確認しておらず、要検証です。

業界の全体像を数字で見る

厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(各年10月1日現在)の概況から、次の数字が分かります。母子生活支援施設の定員は世帯数、在所者は世帯人員(母と子の人数)で、児童福祉施設等の定員・在所者の総数には含まれません。

  • 施設数(基本票): 令和2年212、令和3年208、令和4年204、令和5年205、令和6年202施設です。令和2年から10施設(約4.7%)減りました(当社計算)。
  • 定員(世帯): 令和2年4,470、令和3年4,371、令和4年4,289、令和5年4,242、令和6年4,183世帯です。令和2年から287世帯(約6.4%)減りました(当社計算)。令和6年の施設数で割ると1施設当たり約20.7世帯になりますが、施設数は基本票、定員は詳細票の集計という異なる集計の割り算のため、参考値として扱うべきで、要検証です。
  • 在所者(世帯人員): 令和2年7,862、令和3年7,446、令和4年7,305、令和5年7,279、令和6年7,332人です。令和2年から530人(約6.7%)減りましたが、令和5年からは53人(約0.7%)増えています(当社計算)。
  • 従事者(常勤換算): 令和2年2,102、令和3年2,073、令和4年2,070、令和5年2,044、令和6年2,076人です。令和2年から26人(約1.2%)減とほぼ横ばいです(当社計算)。
  • 母子支援員(職種別の常勤換算従事者数): 令和2年706、令和3年691、令和4年671、令和5年652、令和6年658人です。令和2年から48人(約6.8%)減りました(当社計算)。令和6年の従事者2,076人に占める割合は約31.7%(令和2年は約33.6%)です(当社計算)。

数字の読み方には注意が必要です。概況の利用上の注意は、詳細票は標本調査で結果は推計値で表章していると記載しています。令和6年の調査客体206施設に対し回収は202施設で、回収率は98.1%でした。運営主体別の施設数(公営か社会福祉法人かなど)、運営費・措置費の水準、定員の充足率、施設ごとの収支は、今回確認した統計に含まれていません。

入所する世帯の姿:こども家庭庁の全数調査から

こども家庭庁の「児童養護施設入所児童等調査」(令和5年2月1日現在)は、母子生活支援施設の入所世帯と児童を全数調査し、実数値で公表しています。社会福祉施設等調査とは調査主体も時点も異なるため、数値は別々の資料として読みます。

  • 世帯数と児童数: 入所世帯は2,780世帯、児童は4,538人で、前回調査(平成30年)の3,216世帯から436世帯(13.6%)減りました。児童数別では1人の世帯が55.6%、2人が27.9%です。
  • 入所理由: 「配偶者からの暴力」が50.3%(1,399世帯)で最も高く、次いで「住宅事情による」が15.8%、「経済的理由による」が10.6%でした。前回は配偶者からの暴力が50.7%です。
  • 在所期間: 5年未満が84.2%です。
  • 母子世帯になった理由: 離婚が56.1%、未婚の母が17.0%です。
  • 就労と所得: 母親の59.6%(前回67.0%)が就業していて、臨時・日雇・パートが40.1%、常用勤労者が13.8%です。不就業は39.2%で、その理由では「精神的・身体的障害がある」が27.8%で最多でした。年間所得の平均は165万円(前回192万6千円)で、資料は一般家庭の545万7千円(令和4年国民生活基礎調査)の3割程度と記しています。
  • 退所の見通し: 「1年以内に退所の見込み」が16.7%、「適当な住宅さえあれば退所できる」が12.4%、「末子が18歳になるまで退所困難」が10.8%でした。

この調査は令和5年2月時点のもので、その後の入所理由や就業の割合は今回確認しておらず、要検証です。

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母子生活支援施設の経営課題、主要な6パターン

ここからは、上の数字と法令の条文を踏まえ、経営課題を整理します。措置費などの水準は今回確認できていないため、確認できた範囲に絞り、断定を避けます。個々の施設の状況は個別に確認が必要です。

①施設・定員は減り続け、入所は横ばい圏:空き世帯と地域の需要を分けて見る

施設数は令和2年から約4.7%減、定員は約6.4%減、在所者(世帯人員)は約6.7%減でした。ただし在所者は令和5年から令和6年にかけて約0.7%増えています。こども家庭庁の調査でも入所世帯は平成30年から約13.6%減っています。減少の理由(施設の統廃合、入所を必要とする世帯の変化、他の支援の利用など)は統計からは分からず、要検証です。運営側にとっては、定員に対して実際にどれだけの世帯が入所しているかと、地域で必要とされる量を分けて把握することが課題になりえます。定員の充足率は今回確認した資料からは分からず、要検証です。

②入所の窓口は行政:申込み・あっせん・情報提供の流れに合わせた運営

入所は児童福祉法第23条の母子保護の実施で、保護者が都道府県等に申込書を出し、施設が代わって提出することもできます。都道府県等は、児童福祉法の規定や困難な問題を抱える女性への支援に関する法律に基づく報告・通知を受けた保護者及び児童について、必要があると認めるときは、その保護者に申込みを勧奨しなければなりません(第4項)。つまり、福祉事務所や児童相談所、女性相談の窓口との連携が、入所の流れと直結します。基準省令第31条も、施設の長に、福祉事務所、母子・父子自立支援員、児童の通学する学校、児童相談所、公共職業安定所、必要に応じて女性相談支援センターなどと密接に連携して母子の保護と生活支援に当たることを求めています。関係機関とのやり取りの記録や、世帯ごとの支援計画の管理が業務の中心になりやすい構図ですが、実際の様式や運用は自治体ごとに異なり、要検証です。

③DV被害の世帯が約半数:安全の確保と個別対応が前提になる

入所理由の50.3%が配偶者からの暴力という全数調査の結果は、運営の前提を示しています。基準省令第27条第4項は、配偶者からの暴力を受けたこと等により個別に特別な支援を行う必要があると認められる母子に当該支援を行う場合には、個別対応職員を置かなければならないとしています。心理療法を行う必要があると認められる母子が10人以上いて心理療法を行う場合は、心理療法担当職員を置くことも求められています(同条第2項)。安全の確保のために所在地や入所者の情報の扱いに特別な配慮が必要になることが考えられますが、具体的な運用は施設・自治体ごとに異なり、今回確認できていません(要検証)。情報システムを検討する場合も、情報の取扱いと権限の設計が最優先の論点になりえます。

④職員の員数は世帯数で決まる:母子支援員は減少、少年を指導する職員と調理員も必要

基準省令第27条は、母子生活支援施設に、母子支援員、嘱託医、少年を指導する職員、調理員又はこれに代わるべき者を置くこととしています。母子支援員の数は、母子10世帯以上20世帯未満を入所させる施設で2人以上、20世帯以上で3人以上、少年を指導する職員は20世帯以上で2人以上です(第5項・第6項)。母子支援員の資格は第28条に列挙があり、都道府県知事の指定する養成施設の卒業者、保育士、社会福祉士、精神保健福祉士、こども家庭ソーシャルワーカー、高校卒業者等で2年以上児童福祉事業に従事した者などです。母子支援員の常勤換算人数は令和2年の706人から令和6年の658人へ約6.8%減っていますが、理由は統計から分かりません(要検証)。なお、都道府県は第45条の基準に基づき条例を定めるため、実際の員数は各都道府県の条例で確認する必要があります。

⑤設備は「世帯の住まい」:母子室30平方メートル以上、保育・静養の設備も

基準省令第26条は、母子室、集会・学習等を行う室、相談室を設けること、母子室には調理設備・浴室・便所を設け、1世帯につき1室以上、面積は30平方メートル以上とすることを定めています。乳幼児を入所させる施設で付近の保育所や児童厚生施設が利用できないなど必要があるときは、保育所に準ずる設備を設けること、乳幼児30人未満には静養室、30人以上には医務室と静養室を設けることも求められています。世帯の住まいとしての維持管理(修繕・入退去の管理)と、共用の集会・学習室の運営という二つの業務が並ぶ構図です。建物の老朽化の状況や改修費の見通しは今回確認しておらず、要検証です。

⑥開設は届出ではなく認可、さらに第一種社会福祉事業:民間の参入は限られる

児童福祉法第35条第4項は、国・都道府県・市町村以外の者が児童福祉施設を設置するには、都道府県知事の認可を得ることを定めています(市町村は事前の届出、第3項)。廃止・休止は、市町村は1月前までの届出(第11項)、それ以外は都道府県知事の承認が必要です(第12項)。加えて、社会福祉法第2条第2項第2号は、母子生活支援施設を経営する事業を第一種社会福祉事業とし、第60条は、第一種社会福祉事業は国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則と定めています。国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者が設置するには、都道府県知事の許可が必要です(第62条第2項)。児童福祉法の認可と社会福祉法の届出・許可がどのように並んで運用されているかの実際は今回確認しておらず、要検証です。都道府県知事は報告の求めや立入検査を行い、基準に達しないときは改善の勧告・命令、事業の停止を命じることができます(児童福祉法第46条)。運営主体別(自治体・社会福祉法人など)の施設数の内訳は今回確認した統計になく、要検証です。

商談前に見ておきたい母子生活支援施設特有の公開情報

母子生活支援施設を運営する法人に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。個人が特定される情報や入所者に関する情報は、公開情報であっても取り扱いに十分注意が必要です。

  • 運営法人の種類と規模: 社会福祉法人か自治体か。複数の施設や、保育所・児童養護施設・障害福祉サービスを併せて運営しているか。法人の公表資料(事業報告・財務諸表)で確認します。
  • 施設の定員と職員体制: 定員(世帯数)、母子支援員・少年を指導する職員・個別対応職員・心理療法担当職員の配置、求人の状況。
  • 自治体の情報提供: 児童福祉法第23条第5項に基づき、都道府県等が公表している施設の一覧や設備・運営の状況。
  • 併設・受託事業: 入所以外に、自治体から受託している事業や併設している事業があるか(法人の事業報告や自治体の公募情報で確認します)。
  • 情報の管理と記録: 世帯ごとの支援計画、関係機関とのやり取り、出納管理の方法(紙かデジタルか)。ただし内部の運用は公開されないことが多く、ヒアリングで確認する項目です。
  • 施設の評価・点検の公表: 第三者評価や自己評価の公表、監査の指摘事項(自治体のウェブサイトで確認します)。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。

よくある質問

母子生活支援施設は全国にいくつありますか?

厚生労働省の令和6年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)では202施設です。令和2年(212施設)から約4.7%減っています。定員は4,183世帯(定員は世帯数)、在所者は7,332人(世帯人員)です。

母子生活支援施設とは何ですか?

児童福祉法第38条の児童福祉施設の一つで、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子とその児童を入所させて保護し、自立の促進のために生活を支援し、退所した後の相談などの援助も行う施設です。母と子が一緒に入所し、母子室で世帯ごとに暮らします。

入所の理由で最も多いのは何ですか?

こども家庭庁の児童養護施設入所児童等調査(令和5年2月1日現在、全数調査)では、入所理由の50.3%が「配偶者からの暴力」でした。次いで住宅事情による15.8%、経済的理由による10.6%です。最新年の割合は今回確認しておらず、要検証です。

母子支援員になるには資格が必要ですか?

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第28条が、母子支援員の資格を列挙しています。都道府県知事の指定する養成施設の卒業者、保育士、社会福祉士、精神保健福祉士、こども家庭ソーシャルワーカー、高校卒業者等で2年以上児童福祉事業に従事した者などです。具体的な採用条件は設置者や都道府県の条例で異なるため、個別に確認が必要です。

民間事業者が母子生活支援施設を設置できますか?

児童福祉法第35条第4項により、国・都道府県・市町村以外の者の設置には都道府県知事の認可が必要です。さらに社会福祉法上は第一種社会福祉事業で、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することが原則とされ(第60条)、それ以外の者が設置するには都道府県知事の許可が必要です(第62条第2項)。実際の審査や運用は都道府県ごとに異なる可能性があり、要検証です。

入所は施設に直接申し込むのですか?

児童福祉法第23条では、保護者が入所を希望する施設などを記載した申込書を都道府県等に提出する仕組みです。施設は保護者の依頼を受けて、申込書の提出を代わって行うことができます。入所の可否は都道府県等が保護の実施として判断します。具体的な手続は自治体の窓口で確認してください。

まとめ

母子生活支援施設の経営課題は、①施設数が令和2年から約4.7%減、定員が約6.4%減と縮小する中で、在所者は令和5年から約0.7%増えていること②入所は児童福祉法第23条に基づく行政の保護の実施で、関係機関との連携が運営の中心になること③入所理由の約半数(50.3%)が配偶者からの暴力で、個別対応や情報の管理が前提になること④母子支援員が約6.8%減る中、員数は世帯数で決まり、実際の数は都道府県の条例で確認すること⑤母子室は1世帯1室以上・30平方メートル以上など住まいとしての設備の維持管理が必要なこと⑥開設は都道府県知事の認可に加えて第一種社会福祉事業で、民間の参入は限られること、の6つです。営業やヒアリングの前に、運営法人の種類、定員、職員体制、自治体の公表情報を公開情報で確認しておくと、論点を絞って話ができます。措置費や定員の充足率など今回確認できなかった項目は、公的な一次情報で必ずご確認ください。