結論から: 税関が公表している通関業者一覧表(令和8年6月1日時点)には、営業所単位で2,036行、法人番号ベースで997の通関業者が掲載されています。うち約65%の650法人は掲載行が1行だけで、東京都・大阪府・神奈川県の3都府県に約49%が所在します。通関業は財務大臣の許可制で、営業所ごとに通関士を置くことが原則です(通関業法第3条・第13条)。通関士になるための試験は、令和7年(第59回)が願書提出者8,205人・受験者6,322人・合格者954人・合格率15.1%で、願書提出者は平成20年の13,267人から約38%減っています。この記事では、通関業者を商談前に調べるときの経営課題を、公開情報から6パターンに整理します。

通関業者を「運送業」「倉庫業」と同じ型で見ない理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし通関業者は、運送業や倉庫業と同じ物流の周辺にありながら、事業の前提が異なります。通関業法第2条では、他人の依頼によって輸出入の申告などの手続を代理・代行する事務を通関業務と定め、第3条で、通関業を営むには財務大臣の許可が必要としています。許可の審査では、経営の基礎が確実であること、人的構成に照らして業務を適正に遂行できる能力と社会的信用があること、営業所ごとに通関士を置くことが求められます(第5条)。つまり通関業者の経営は、運ぶ・保管するという設備や車両の稼働よりも、許可・営業所・通関士という「人と拠点の資格要件」が土台になっています。商談前には、相手が営業所ごとに通関士をどう確保しているか、貨物の種類を限定した許可か、運送・倉庫・フォワーディングを併営しているか、という点から確認するのが出発点です。

業界の全体像を数字で見る

通関業者の一覧と通関士試験の結果は、いずれも財務省関税局・税関が公表しています。確認できた一次情報から、次の数字が分かります。

  • 通関業者一覧表(令和8年6月1日時点): 掲載行(営業所単位)2,036行、法人番号ベース997法人(当社集計)。1法人あたりの掲載行数は、1行が650法人(65.2%)、2〜5行が297法人、6行以上が50法人、最大は81行でした。
  • 所在地(法人の所在地): 東京都242法人(24.3%)、大阪府127(12.7%)、神奈川県118(11.8%)、兵庫県71、福岡県53、愛知県49、北海道30。上位3都府県の合計は487法人(48.9%)です(当社集計)。
  • 貨物限定の許可: 「許可に付する条件」に貨物の限定が記載されているのは155行・81法人(8.1%)。うち「コンテナ」を含む記載が113行・51法人です。
  • 通関士試験(第59回・令和7年10月5日実施): 願書提出者8,205人、受験者6,322人、合格者954人、合格率15.1%。令和6年は受験者6,135人・合格者759人・12.4%、令和5年は受験者6,332人・合格者1,534人・24.2%でした。

なお、通関業者数の前年以前との比較は、過去の一覧表を取得できていないため扱いません。一覧表は営業所単位の掲載行であり、法人の数と営業所の数は別物です。また、通関士の人数や、通関業者の売上・取扱件数・料金水準は、今回確認した公開資料には含まれていません(要検証)。

通関業者の経営課題、主要な6パターン

ここからは、通関業者に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①営業所ごとの通関士設置と、拠点を増やすときの許可

通関業者は、通関業務を行う営業所ごとに通関士を置かなければなりません(通関業法第13条)。ただし、その営業所で扱う貨物が許可条件により一定の種類に限られている場合は、この限りではありません。置くべき員数は、施行令第5条で、取り扱う貨物の数量・種類と、通関書類の数・種類・内容に応じた必要数とされています。拠点を広げるには、営業所の新設に財務大臣の許可が必要で(第8条)、認定通関業者(関税法第79条第1項の認定を受けた者)は届出で足ります(第9条)。許可の審査対象には、人的構成や社会的信用、営業所ごとの通関士要件が含まれます。営業所数が多い法人ほど、通関士の確保と異動の管理が固定的な負担になる構造です。税関の一覧表では、50法人が6行以上を掲載し、最多の法人は81行にのぼります。一方で650法人は掲載行が1行だけです。商談では、相手が多拠点型か単独拠点型かによって、課題(拠点間の人員配置と届出の管理か、少人数でのバックアップ体制か)が変わります。

②通関士という人材の希少性と、試験の合格者が年によって大きく動く構造

通関士になるには通関士試験に合格し(第23条)、さらに通関業者が氏名や従事させる営業所などを財務大臣に届け出て、欠格に当たらないことの確認を受ける必要があります(第31条)。試験の願書提出者は平成20年(第42回)の13,267人から令和7年(第59回)の8,205人へ約38%減り、受験者は10,390人から6,322人へ約39%減りました(当社計算)。合格者は1,847人から954人で約48%減ですが、近年も年ごとの振れが大きく、令和5年1,534人(合格率24.2%)、令和6年759人(12.4%)、令和7年954人(15.1%)と、合格者数は令和5年から6年で半分近くに減った後、令和7年に約26%増えています。合格率は令和3年から7年の5回で12.4%〜24.2%の範囲です。合格基準は3科目とも満点の60%以上で、令和7年の全科目受験者は5,584人中777人(13.9%)が合格しました。通関業法第24条には、通関業務等に一定期間従事した者の科目免除があり、令和7年の「1科目受験者」は177人中119人(67.2%)が合格しています(この区分と免除制度の対応は当社の読みであり、要確認)。新規の通関士を毎年一定数確保できる前提は置きにくく、採用・育成・退職時のバックアップが経営課題になりやすい領域と読めます。

③小規模・単独営業所が多数を占める事業者構成

一覧表の997法人のうち、掲載行が1行の法人は650(65.2%)、2〜5行の法人は297(29.8%)、6行以上は50(5.0%)です(当社計算)。多数を占める小規模な事業者は、営業所に配置できる通関士の人数が限られ、通関士1人の退職・休職が営業所の業務に直結しやすいと推測されます(通関士の人数は一覧表に含まれないため、実際の配置人数は確認できていません)。第13条の趣旨からは、営業所ごとの通関士の存在は許可要件の一部ですから、人員が薄い拠点ほど、通関士の確保が事業継続の条件になります。公式サイトでは、営業所の数、通関士・有資格者の人数や採用ページの記載、倉庫・運送・フォワーディングなど他事業の併営がサインになります。

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④東京・大阪・神奈川への集中と、港湾・空港ごとの競争

通関業者の所在地は、東京都・大阪府・神奈川県の3都府県で487法人(48.9%)と、約半数が集まっています。通関士試験の実施税関別でも、東京税関の受験者が2,254人と全国(6,322人)の約35.7%を占め、大阪税関1,095人、名古屋税関887人、横浜税関695人と続きます。港湾や空港の所在地ごとに事業者が集まるため、同じ地域の事業者どうしで取引先(荷主・フォワーダー)や人材を取り合う構図になります。一覧表では、営業所名に「空港」を含む行が117行あり、空港周辺にも拠点が置かれています。一方で、地方の港湾や空港では、事業者数が限られ、貨物の種類や取扱量の変動が事業に直結しやすい面もあります。商談では、主たる拠点の港湾・空港と、取引先の業種(輸入中心か輸出中心か)を確認すると、課題の当たりがつけやすくなります。

⑤貨物限定の許可と、特定の荷主・貨物への依存

通関業の許可には条件を付すことができ(第3条第2項)、貨物の種類が限定された許可もあります。一覧表で貨物限定が記載されているのは155行・81法人で、「コンテナー及びその修理用部分品」に関する記載が中心です(コンテナを含む記載113行・51法人)。そのほか、石油類・石炭・液化天然ガス・糖みつ・飼料原料・鉄鋼・木材など、特定の貨物や荷主向けと読める記載もあります。全掲載行が貨物限定の法人は32社でした。貨物限定の事業者は、営業所に通関士を置く義務が一部適用されない場合がある(第13条ただし書)一方、取り扱える貨物の範囲が許可で固定されるため、取引先や貨物の種類の変化への対応余地は限られると読めます。条件の変更には、許可の承継や変更の手続が関わる場合があります(第11条の2第6項)。「許可の期限」欄に日付が入っている行も31行(30法人)あり、許可の内容や期限の確認も商談前の観点になります(期限欄の趣旨は一次資料で細部未確認)。

⑥通関書類の審査・記名、帳簿と報告、承継など、守るべき規律

通関業者には、通関士による審査・記名(第14条)、名義貸しの禁止(第17条・第33条)、料金の掲示(第18条)、秘密保持(第19条)、信用失墜行為の禁止(第20条)、帳簿の作成と書類の保存・従業者の氏名と異動の届出・毎年1回の報告書提出(第22条)など、継続的な義務があります。違反した場合、財務大臣は1年以内の期間を定めた通関業務の全部または一部の停止、または許可の取消しを命じることができ(第34条)、通関士にも戒告・業務停止・業務禁止の懲戒があります(第35条)。許可は、通関業の廃止・法人の解散・破産などで消滅します(第10条)。代表者が亡くなった場合は、死亡後60日以内に承継の承認を申請しないと許可が消滅し(第10条第1項第2号・第11条の2)、合併・分割・事業譲渡は事前の承認が条件で(第11条の2)、事業承継の局面では手続の期限管理が加わります。事業者の公式サイトでは、料金の掲示、認定通関業者(AEO)の取得、個人情報・秘密保持の方針、ISOなどの認証、代表者の年齢や承継の記載がサインになります。

商談前に見ておきたい通関業者特有の公開情報

通関業者をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 許可と拠点: 税関の通関業者一覧表で、法人番号・営業所の数と所在地・貨物限定や許可の期限の有無。各税関の通関業に関する公告。
  • 通関士・人材: 採用ページの通関士・有資格者の募集、営業所ごとの配置の記載、通関士試験(例年10月実施)に向けた社内支援や資格手当の有無。
  • 併営事業: 運送・倉庫・フォワーディング・保税蔵置場など、どの事業と一体で提供しているか。
  • 認定・制度対応: 認定通関業者(AEO)の取得、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)の利用、電子化への対応状況。
  • 取引先と取扱貨物: 主要な荷主・フォワーダー、輸入中心か輸出中心か、貨物の種類(コンテナ貨物・石油類・食品など)。
  • 承継: 代表者の経歴・年齢、後継者や合併・事業譲渡の情報。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。隣接する分野の運送業、倉庫業、司法書士・行政書士・弁理士の記事もあわせて確認すると整理しやすくなります。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。決算書から利益率の傾向を掴む視点は決算書の読み方|営業が5分で掴む3指標を参照してください。

よくある質問

通関業者はどのくらいありますか?

税関が公表する通関業者一覧表(令和8年6月1日時点)には、営業所単位で2,036行、法人番号ベースで997法人が掲載されています。法人の所在地は東京都が242、大阪府が127、神奈川県が118です(当社集計)。前年以前の一覧表との比較は取得できていないため、増減は確認できていません。

通関士試験の合格率はどれくらいですか?

税関の結果によると、第59回(令和7年)は受験者6,322人に対し合格者954人で、合格率は15.1%でした。令和6年(第58回)は12.4%、令和5年(第57回)は24.2%と、年によって幅があります。合格基準は3科目とも満点の60%以上です。第60回は令和8年10月4日に実施され、合格発表は11月10日(火)とされています(結果は本記事の確認時点では未公表です)。

通関業を営むには何が必要ですか?

通関業法第3条により、財務大臣の許可が必要です。許可の審査では、経営の基礎が確実であること、人的構成に照らして業務を適正に遂行できる能力と社会的信用があること、営業所ごとの通関士の設置などの要件が見られます(第5条)。欠格事由は第6条に定められています。個別の要件や手続は、条文と所管の税関の案内でご確認ください。

営業所を増やすには許可が必要ですか?

通関業務を行う営業所を新たに設ける場合は、財務大臣の許可が必要です(第8条)。認定通関業者(関税法第79条第1項の認定を受けた者)は、許可に代えて届出で足ります(第9条)。個別の取扱いは所管の税関に確認してください。

まとめ

通関業者の経営課題は、①営業所ごとの通関士設置と拠点増設時の許可②通関士の希少性と試験の合格者数の振れ③小規模・単独営業所が多数を占める事業者構成④東京・大阪・神奈川への集中と港湾・空港ごとの競争⑤貨物限定の許可と特定の荷主・貨物への依存⑥通関書類の審査・帳簿と報告・承継など守るべき規律、の6パターンに整理すると、公開情報から当たりをつけやすくなります。税関の一覧表(令和8年6月1日時点)では997法人・2,036営業所行が掲載され、うち650法人は掲載行が1行、東京・大阪・神奈川に約49%が集まります。通関士試験は令和7年に受験者6,322人・合格者954人(15.1%)で、願書提出者は平成20年から約38%減っています。通関士の人数・売上・取扱件数・料金水準・認定通関業者の数など確認できていない部分は決めつけず、許可と拠点・通関士・併営事業・取扱貨物・承継の状況といった一次情報を確認しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。