放課後児童クラブは、障害福祉の「放課後等デイサービス」でも「放課後子供教室」でもない
中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。この記事で扱うのは、いわゆる学童保育にあたる放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)です。名前が似た制度が複数あるため、先に区別します。ひとり親家庭の入所施設である母子生活支援施設は母子生活支援施設の経営課題で扱っています。
児童福祉法第6条の3第2項は、放課後児童健全育成事業を、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業と定めています。障害のある学齢児を対象に都道府県知事等の指定を受けて行う放課後等デイサービス(障害児通所支援)とは、根拠となる条文も、事業者の立場(指定か届出か)も異なります。また、こども家庭庁の資料の注によると、放課後子供教室は文部科学省が実施する、放課後等に全ての児童を対象に学習や体験・交流活動などを行う事業で、放課後児童クラブとは別の事業です(同一小学校内で両方を行う「校内交流型」のクラブは令和6年に5,660か所あります)。就学前の児童が対象の保育所や認定こども園は保育園・幼稚園の経営課題で扱っています。
業界の全体像を数字で見る
こども家庭庁の「令和6年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」(令和6年5月1日現在)から、次の数字が分かります。調査は全国1,741市町村が記入する全数調査で、令和2年のみ7月1日現在です。
- 登録児童数: 令和元年1,299,307人、令和2年1,311,008人、令和3年1,348,275人、令和4年1,392,158人、令和5年1,457,384人、令和6年1,519,952人です。令和6年は前年から62,568人(約4.3%)増えて過去最高を更新し、令和元年からは220,645人(約17.0%)増えました(当社計算)。
- クラブ数: 令和元年25,881か所、令和2年26,625か所、令和3年26,925か所、令和4年26,683か所、令和5年25,807か所、令和6年25,635か所です。令和6年は前年から172か所減りましたが、資料は、昨年度まで支援の単位数をクラブ数として報告していた自治体がその是正を行ったことが減少の大きな要因だと注記しています。このため、クラブが実際にそれだけ閉鎖されたと読むのは適切ではありません。
- 支援の単位数: 令和元年33,090、令和2年34,577、令和3年35,398、令和4年36,209、令和5年37,034、令和6年38,122です。資料の注によると、支援の単位は設備運営基準が児童の集団の規模を示す基準として平成27年度から導入したもので、児童の活動はこの単位を基本として行われます。令和元年からは5,032単位(約15.2%)増えており、登録児童の増加(約17.0%)とほぼ歩調を合わせています(当社計算)。
- 1クラブ・1支援の単位当たりの登録児童(当社計算の参考値): 登録児童数をクラブ数で割ると令和元年約50.2人、令和6年約59.3人です。支援の単位数で割ると令和元年約39.3人、令和6年約39.9人で、ほぼ横ばいです。基準は1つの支援の単位を構成する児童の数を「おおむね40人以下」としているため、増えた児童は単位の増加と、1クラブ内の単位数の増加(大規模化)で受け止められている構図です。登録児童数が41人以上の支援の単位は15,887単位(約41.7%)で、令和5年の14,877単位(約40.2%)から増えました。
- 利用定員: 令和6年は1,616,782人で、登録児童数(1,519,952人)は全国合計では利用定員の約94.0%です(当社計算)。ただし待機児童は特定の地域に集中しており、全国合計の数字から地域ごとの需給は読めません。
- 実施市町村: 1,631市町村(全1,741市町村の93.7%)、実施小学校区は16,560(全18,376小学校区)です。
- 5月1日と10月1日の差: 同じ調査の参考値(速報値で確報値とする予定はないと明記)では、令和6年10月1日時点の登録児童数は1,471,315人で、5月1日より48,637人少なく、待機児童数は8,794人(同8,892人減)でした。年度の途中で数字が大きく動くため、どの時点の数字かを必ず確認する必要があります。
数字の読み方には注意が必要です。この調査は市町村が記入する全数調査ですが、報告の仕方の違い(クラブ数と支援の単位数の扱いなど)が数字に影響しうることを、資料自身が注記しています。運営費の補助・委託の水準、収支、運営法人の数、1クラブ当たりの職員数、待機児童が発生している具体的な市町村ごとの理由は今回確認した資料からは把握できず、要検証です。
放課後児童クラブの経営課題、主要な6パターン
ここからは、上の数字と法令の条文を踏まえ、経営課題を整理します。補助金や委託費といった細かい条件は今回確認できていないため、確認できた範囲に絞り、断定を避けます。個々のクラブの状況は個別に確認が必要です。
①登録児童は約17.0%増えたのにクラブ数は増えていない:「集団の数」と大規模化で受け止める構図をどう運営するか
登録児童数は令和元年から令和6年で約17.0%増えた一方、クラブ数は約1.0%減(報告方法の是正を含む)、支援の単位数は約15.2%増でした。1クラブ当たりの登録児童は平均で約50.2人から約59.3人に増えた計算で、クラブ数でみると71人以上のクラブは令和5年の6,109か所(23.7%)から令和6年は6,828か所(26.6%)に増えています。基準第10条第2項は、放課後児童支援員を支援の単位ごとに2人以上置くこととし、第5項は支援員と補助員を支援の単位ごとに専ら当該支援の提供に当たる者とする(利用者が20人未満の事業所などの例外あり)としています。つまり、児童が増えると、1クラブの中の単位の数に応じて配置を増やす必要があります。大規模なクラブでは、単位ごとの職員配置、利用者管理、保護者連絡などの事務が重くなりうる一方、数字から分かるのはクラブ全体の平均で、個々の運営上の負担の大きさは分かりません(要検証)。
②待機児童は17,686人で小学4年生が最多:高学年の利用拡大と、都市部への集中をどう読むか
待機児童は令和5年の16,276人から1,410人増え、令和6年は17,686人でした。学年別では小学4年生が5,707人(32.3%)で最も多く、小学4年生から6年生の合計は9,482人で全体の約53.6%、令和5年の約50.7%から上がりました(当社計算)。登録児童でも小学4年生から6年生は323,937人(約21.3%)で、令和5年の294,499人から約10.0%増え、小学1年生から3年生の約2.8%増を上回っています(当社計算)。平成27年4月施行の子ども・子育て支援新制度で、対象児童が「おおむね10歳未満」から小学6年生までと明確化されたことは、こども家庭庁の資料にも注記されています。都道府県別では東京都3,731人、埼玉県2,132人、千葉県1,181人で全体の約4割を占めます。待機児童が多い市町村では、施設の確保と人員の確保が同時に課題になりますが、全国では利用定員の方が登録児童より多いため(約94.0%)、地域ごとの需給の差がどこから生じているかは、統計だけでは判断できません(要検証)。
③運営主体は公立公営が減り、株式会社が増えている:公立民営の51.0%、指定管理者制度、民立民営の使い分け
設置・運営主体別では、公立公営が6,176か所(24.1%)で前年から531か所減り、公立民営が13,076か所(51.0%)、民立民営が6,383か所(24.9%)でした。株式会社が運営するクラブは、公立民営3,554か所と民立民営591か所の合計4,145か所(約16.2%)で、令和5年の3,654か所(約14.2%)から491か所増えています(当社計算)。社会福祉法人は5,247か所(令和5年5,370か所)、NPO法人は2,889か所(同2,869か所)、運営委員会・保護者会は3,733か所(同3,929か所)で、運営委員会・保護者会は減っています(いずれも公立民営と民立民営の合計、当社計算)。公立民営のうち3,770か所(28.8%)が指定管理者制度で実施されています。市町村が施設を持ち民間が運営する形と、民間が自ら施設を設けて市町村へ届け出る形では、契約の相手方、更新の仕組み、費用負担の考え方が異なると考えられますが、委託費や補助金の水準・期間は今回の資料からは分からず、要検証です。
④職員の約3分の2は常勤以外:放課後児童支援員の資格と認定資格研修、2人以上配置の基準
職員数は令和6年に200,787人(前年比+8,643人、約4.5%増)で、放課後児童支援員112,327人、補助員83,345人、育成支援の周辺業務を行う職員5,115人の内訳です。常勤は65,440人(32.6%)、常勤以外は135,347人(67.4%)で、支援員でも常勤は約48.7%、補助員の常勤は約11.6%です(当社計算)。支援員の資格は、保育士が23.1%、高校卒業者等で2年以上児童福祉事業に従事した者が35.7%、教員免許を有する者が21.9%、高校卒業者等で2年以上類似の事業に従事して市町村長が適当と認めた者が12.2%などです。基準第10条第3項は、これらのいずれかに該当する者であって、都道府県知事等が行う研修を修了したものでなければならないと定めており、認定資格研修を修了した支援員は105,238人(支援員の93.7%)でした。修了していない支援員(差の7,089人)の内訳は調査から分からず、要検証です。担い手の確保と、シフト・研修・資格の管理が運営の中心的な課題になりうることは、数字から読み取れます。
⑤開設は指定ではなく届出、基準は市町村の条例:同じ事業でも自治体ごとに基準・申込手続が異なる
児童福祉法第34条の8は、市町村が放課後児童健全育成事業を行うことができ、国・都道府県・市町村以外の者は、あらかじめ市町村長に届け出て事業を行うことができると定めています。変更は変更の日から一月以内、廃止・休止はあらかじめ届出が必要です。障害福祉サービスや放課後等デイサービスのような都道府県知事等の「指定」ではなく、条文は届出と書いています。第34条の8の2は、市町村が事業の設備及び運営について条例で基準を定めなければならないとし、条例を定める際は内閣府令で定める基準を参酌するものとしています(e-Govで取得した基準の法令番号は平成26年厚生労働省令第63号で、所管の整理は要検証)。事業を行う者は条例の基準を遵守する必要があり、第34条の8の3は、市町村長が報告を求め、立入検査を行い、基準に適合しないときは必要な措置を命じ、不当な行為があるときは事業の制限又は停止を命じることができると定めています。利用手続きでも、令和6年は、利用申込みの受付を市町村のみ(513市町村)、クラブのみ(529市町村)、両方(589市町村)で行う自治体に分かれ、利用手続きの一部又は全部をオンライン化している市町村は233市町村(14.3%、前年138市町村・8.5%)でした。複数の市町村にまたがって運営する事業者は、市町村ごとに条例・申込手続・報告書式が異なる前提で管理する必要があります。
⑥開所時間・安全・利用料・評価:運営管理の項目が多く、第三者評価は14.6%にとどまる
基準第18条は、開所時間を原則として休業日は1日8時間以上、休業日以外は1日3時間以上、開所日数を年250日以上としたうえで、地域の実情に応じて事業所ごとに定めるとしています。平日の終了時刻は18時31分以降が15,818か所(約61.7%)、19時1分以降が1,896か所(7.4%)、年間開所日数が250日未満のクラブは2,869か所(約11.2%)でした(当社計算)。基準は、安全計画の策定(第6条の2)、自動車運行時の所在確認(第6条の3)、運営規程(第14条)、帳簿の整備(第15条)、苦情対応(第17条)を定め、業務継続計画は努力義務(第12条の2)で、策定したクラブは15,327か所(59.8%、前年49.7%)に増えました。利用料は97.7%のクラブが徴収し、月額4,000円以上6,000円未満が27.8%で最多、8,000円以上は約33.2%(当社計算)です。減免は徴収しているクラブの88.3%が行っています。運営内容の自己評価は59.0%、第三者評価は14.6%(前年16.5%)でした。障害児を受け入れているクラブは63.1%で、障害児の登録児童は65,570人(全登録児童の4.3%)です。これらを複数のクラブでそろえて管理し、市町村へ報告・説明するための事務は、法人の規模が大きいほど重くなると考えられますが、実際の負担は個別に確認が必要です(要検証)。
商談前に見ておきたい放課後児童クラブ特有の公開情報
放課後児童クラブの運営法人に営業やヒアリングを行う前に、次のような公開情報を確認しておくと、論点を絞りやすくなります。
- 運営形態と契約の相手方: 公立公営、公立民営(委託・指定管理者)、民立民営(届出による開設)のどれか。市町村の公表資料、募集要項、指定管理者の公募情報で確認します。
- 運営している市町村と数: 受託・届出をしている市町村の数、クラブ数、支援の単位数と登録児童数。市町村ごとに条例・申込手続・報告書式が異なります。
- 職員の体制: 放課後児童支援員と補助員の人数、常勤の割合、認定資格研修の修了状況、求人の状況。
- 実施場所: 小学校の余裕教室・敷地内の専用施設、児童館、民間の施設のどれか。施設の確保と契約の形が異なります。
- 利用申込・利用料・減免の運用: 申込受付の窓口(市町村かクラブか)、オンライン化の有無、利用料の請求・収納と減免の管理方法。
- 開所時間・日数、安全計画、業務継続計画、自己評価・第三者評価の公表状況: クラブや法人のウェブサイトで確認します。
これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで調べられるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。調査は1社あたり10〜15分程度で、そのまま提案書のたたき台にできる形で出力されます。
よくある質問
放課後児童クラブは全国にいくつありますか?
こども家庭庁の令和6年の調査(令和6年5月1日現在)では、25,635か所で、支援の単位数は38,122、登録児童数は1,519,952人です。クラブ数は前年から172か所減りましたが、資料は、昨年度まで支援の単位数をクラブ数として報告していた自治体がその是正を行ったことが大きな要因と注記しています。
放課後児童クラブとは何ですか?
児童福祉法第6条の3第2項は、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業と定めています。こども家庭庁の資料は、共働き家庭など留守家庭の小学校に就学している児童に対し、学校の余裕教室や児童館、公民館などで放課後に適切な遊び、生活の場を与える事業と説明しています。
放課後等デイサービスや放課後子供教室とどう違いますか?
放課後等デイサービスは児童福祉法の障害児通所支援で、障害のある児童を対象に都道府県知事等の指定を受けて行います(放課後等デイサービスの経営課題を参照)。放課後子供教室は文部科学省が実施する事業で、全ての児童を対象に学習や体験・交流活動などを行うもの(資料の注)です。放課後児童クラブは、保護者が労働等で昼間家庭にいない小学生の生活の場を提供する事業で、根拠・対象・事業者の立場が異なります。
放課後児童クラブの人員基準はどうなっていますか?
設備運営基準第10条は、事業所ごとに放課後児童支援員を置き、その数を支援の単位ごとに2人以上とし、1人を除いて補助員で代えることができると定めています。支援員は、保育士、社会福祉士、高校卒業者等で2年以上児童福祉事業に従事した者、教員免許を有する者などのいずれかに該当し、都道府県知事等が行う研修を修了した者である必要があります。1つの支援の単位を構成する児童の数はおおむね40人以下です。基準は市町村が条例を定める際に参酌するものとされており、具体的な条件は市町村の条例で確認が必要です。
民間事業者が放課後児童クラブを開設するには何が必要ですか?
児童福祉法第34条の8は、国・都道府県・市町村以外の者が、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ内閣府令で定める事項を市町村長に届け出て事業を行うことができると定めています。変更は変更の日から一月以内に、廃止・休止はあらかじめ届け出ます。この届出とは別に、市町村の条例が定める設備・運営の基準を遵守する必要があり(第34条の8の2第3項)、市町村長は報告の求めや立入検査、基準に適合させるための命令を行えます(第34条の8の3)。運営費の補助・委託の条件や、市町村との契約の有無は今回確認しておらず、要検証です。
待機児童はどのくらいいますか?
令和6年5月1日現在で17,686人(前年比1,410人増)です。学年別では小学4年生が5,707人で最も多く、東京都・埼玉県・千葉県で全体の約4割を占めます。同じ調査の参考値(速報値)では、令和6年10月1日時点の待機児童数は8,794人でした。
放課後児童クラブの利用料はいくらですか?
令和6年の調査では、25,054か所(97.7%)が利用料を徴収しており、月額は4,000円以上6,000円未満が6,956か所(27.8%)で最も多く、8,000円以上のクラブは約33.2%(当社計算)でした。おやつ代等の実費のみを徴収するクラブは473か所です。減免は徴収しているクラブの88.3%が行っています。具体的な料金と減免の条件は、市町村・クラブごとに異なるため個別に確認が必要です。
まとめ
放課後児童クラブの経営課題は、①登録児童が令和元年から約17.0%増える一方でクラブ数は増えず、支援の単位の増加と1クラブ当たりの大規模化で受け止められていること②待機児童17,686人の約53.6%が小学4年生から6年生で、東京都・埼玉県・千葉県に約4割が集中していること③公立公営が減り株式会社が運営するクラブが増える中で、公立民営・指定管理者・民立民営の契約形態の違いを確認すること④職員の約67.4%が常勤以外で、放課後児童支援員の資格と認定資格研修、2人以上配置の基準を満たす担い手の確保が必要なこと⑤開設は指定ではなく市町村長への届出で、基準は市町村の条例で定まり、申込手続や報告書式も自治体ごとに異なること⑥開所時間、安全計画、業務継続計画、利用料と減免、自己評価・第三者評価など運営管理の項目が多いこと、の6つです。営業やヒアリングの前に、運営法人の運営形態、受託・届出をしている市町村、職員体制、申込・利用料の運用を公開情報で確認しておくと、論点を絞って話ができます。補助・委託の水準や収支など今回確認できなかった項目は、公的な一次情報で必ずご確認ください。