結論から: 全国の病院数は8,060施設(厚生労働省「令和6年医療施設(動態)調査」令和6年10月1日時点、前年比▲62)で、うち一般病院7,003・精神科病院1,057という構成です。東京商工リサーチ「全国『病院経営』動向調査(2024年度)」によれば、営業赤字病院の割合は61.0%(前年54.8%から+6.2pt)に達し、過去20年で最悪の水準です。診療所の赤字率38.4%と比べても病院の方が深刻で、債務超過病院も13.6%(前年比+3.7pt)に拡大、全体の営業利益率は▲1.76%(前年▲1.07%)まで悪化しました。2024年度診療報酬改定で本体部分が+0.88%となったにもかかわらず「増収減益」に陥る病院が多いのが実情です。2024年の医療機関倒産・休廃業解散動向でも病院の倒産6件・休廃業17件が発生し、負債総額は282億4,200万円(前年比+11.3%)に達しています。本記事では病院経営に特有の経営課題を6パターンに整理し、商談前リサーチで着目すべきポイントを出典付きで解説します。

病院経営を、診療所・クリニックの経営課題と分けて見る必要がある理由

中小企業に共通する経営課題の型(人手不足・後継者不在・DXの遅れなど)は経営課題の見つけ方|中小企業10パターンで整理した通りです。ただし「病院」は医療法上、病床数20床以上の医療機関を指し、無床〜19床が中心の診療所・クリニック(一般診療所105,207施設)とは、統計の集計系統そのものが異なる別枠です。厚生労働省の統計でも病院(8,060施設)と一般診療所(105,207施設)は別区分で集計されており、経営指標を混同すると実態を見誤ります。東京商工リサーチの調査でも病院の営業赤字率61.0%は診療所の38.4%を大きく上回っており、「病床を持ち、入院機能・救急機能・高額医療機器への投資を抱える病院」の方が、固定費構造の重さゆえに経営の逆風をより強く受けている点が、病院経営の経営課題を読み解くうえでの出発点になります。

病院の全体像を数字で見る

個別の課題に入る前に、業界全体の構造を確認します。厚生労働省「令和6年医療施設(動態)調査」によると、令和6年10月1日時点の病院数は8,060施設で、前年から62施設減少しました。内訳は一般病院7,003施設(前年比▲62)、精神科病院1,057施設(増減なし)です。施設数が緩やかに減少するなかで、東京商工リサーチ「全国『病院経営』動向調査(2024年度)」は、営業赤字病院の割合が61.0%(前年54.8%、+6.2pt)に達し、過去20年で最も悪い水準になったと報告しています。全体の営業利益率も▲1.76%(前年▲1.07%)まで悪化し、債務超過に陥っている病院も13.6%(前年比+3.7pt)に拡大しました。2024年度診療報酬改定で本体部分は+0.88%のプラス改定となったものの、人件費・光熱費・材料費の上昇が上回り「増収減益」に陥る病院が多く見られる、という構造がこの1年で顕著になっています。

病院経営の課題、主要な6パターン

ここからは、病院経営に特有の経営課題を6パターンに整理します。それぞれ、公開情報のどこにサインが出やすいかもあわせて紹介します。

①赤字構造の悪化(過去20年で最悪水準)

東京商工リサーチ「全国『病院経営』動向調査(2024年度)」(2025年12月4日発表)によれば、2024年度の営業赤字病院は61.0%で、前年の54.8%から6.2ポイント上昇し、過去20年で最悪の水準となりました。診療所の赤字率38.4%と比べても病院の方が深刻です。全体の営業利益率は▲1.76%(前年▲1.07%)まで悪化し、債務超過病院も13.6%(前年比+3.7pt)に拡大しています。2024年度診療報酬改定では本体部分が+0.88%のプラス改定となりましたが、人件費・光熱費・材料費の上昇が改定効果を上回り、「増収減益」に陥る病院が多く発生しました。単年度の赤字だけでなく、複数年の決算推移・自己資本比率の変化を確認することが、赤字の深刻度を見立てる手がかりになります。

②地域による経営格差

東京商工リサーチの同調査では、地域別の赤字病院比率にも大きな差があり、最も高い四国地方で72.3%、最も低い中部地方でも49.3%と、いずれの地域でも半数前後〜7割超が赤字という水準です。地域医療の担い手が限られる地方では、患者数の減少・医師偏在・救急体制の維持コストが経営を圧迫しやすい一方、都市部でも競合病院との患者獲得競争や人件費水準の高さが収益を圧迫する要因になり得ます。対象病院がどの地域に立地し、近隣にどのような競合医療機関・診療科の重複があるかを確認することが、地域特性による経営難易度を見立てる手がかりになります。

③医師偏在と働き方改革対応コスト

厚生労働省の制度により2024年4月から、すべての勤務医師に時間外労働の上限規制が適用され、原則(A水準)年960時間・月100時間未満、地域医療確保のための暫定特例(B水準)・集中研修(C水準)では年1,860時間(B水準は2035年度末終了目標)となっています。月100時間超の医師には面接指導など追加的健康確保措置の実施が義務化されました。病院は診療所以上に当直・オンコール体制を多数の診療科で維持する必要があり、タスクシフト/シェア(業務の一部を看護師・薬剤師・医療事務等へ移管する対応)やICT導入への投資コストが発生しています。診療科の数、救急指定の有無、当直体制の規模は、この課題への負担度を推測する手がかりになります。

④地域医療構想による再編・統合圧力

厚生労働省は2019年に、診療実績が少ない・類似機能の病院が近接しているなどの基準に基づき、再編統合の検討が必要とされる公立・公的病院を約440病院公表し、2025年度末を対応目標としてきました。ただし、このリストの対応がどこまで進んでいるかという進捗の現状値は、本記事執筆時点の一次情報では確認できておらず、要検証として扱います。対象病院に指定されていた実績があるか、統合・再編に関する報道・自治体発表があるかは、地域医療構想への対応圧力を見立てる手がかりになりますが、断定的な進捗評価は避け、個別に一次情報を確認する必要があります。

⑤後継者難と事業承継/M&A

帝国データバンク「後継者不在率動向調査」によれば、医療業全体の後継者不在率は61.8%です。ただしこの数値は病院固有の統計ではなく医療業全体(病院・診療所・歯科を含む)の値である点に注意が必要です。東京商工リサーチ「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」によれば、2024年は病院の倒産が6件、休廃業・解散が17件発生し、医療機関全体の負債総額は282億4,200万円(前年比+11.3%)に達しました。病院の平均負債額は8億7,100万円と、診療所・歯科医院を大きく上回る規模です。倒産の主因は「収入減少」が64.1%を占めており、赤字構造の悪化がそのまま存続困難につながっている構図がうかがえます。病院単体のM&A件数や病院特化の後継者不在率を示す一次データは今回確認できなかったため、本記事では数値化せず「要確認事項」として扱います。理事長・院長の年齢、分院・関連施設の展開状況は、承継の緊急度を見立てる手がかりになります。

⑥建替え・設備投資の重さ

病院は診療所と異なり、病棟・手術室・高額医療機器(CT・MRI等)といった大規模な設備投資を抱えます。東京商工リサーチの調査で示された債務超過病院13.6%(前年比+3.7pt)・営業利益率▲1.76%という数字は、赤字と債務超過が同時進行するなかで、建替えや医療機器更新のための新規借入・資金調達の難度が上がっていることを示唆しています。老朽化した建物・設備を更新できないまま診療を続けることは、患者離れや職員の離職リスクにもつながりかねません。直近の施設概要・病棟の築年数・大型設備投資に関する報道の有無は、投資余力を見立てる手がかりになります。

商談前リサーチ、会社名だけで10分

会社名を入れるだけで、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きでAIが自動リサーチします。

1社無料でお試しする

商談前に見ておきたい病院特有の公開情報

病院をリサーチする際は、中小企業に共通する求人票・決算・ニュースリリースに加えて、次のような業種特有の情報源も確認しておくと、経営課題の当たりをつけやすくなります。

  • 医療情報ネット(ナビイ): 2024年4月1日から厚生労働省が運用する全国統一の医療機能情報提供制度の検索システム。診療科目・病床数・対応疾患・救急指定の有無等を医療機関単位で確認できる。
  • 公立病院・公的病院の経営情報: 自治体(病院事業管理者)が公表する病院事業会計決算・経営強化プランは、公立病院であれば財務状況を確認できる貴重な一次情報になる。
  • 地域医療構想調整会議の資料: 都道府県が公表する調整会議の議事録・資料には、地域の病床機能報告や再編統合に関する議論が含まれる場合がある。
  • 医師・歯科医師・薬剤師統計: 厚生労働省が医師数・診療科・年齢構成等を公表しており、医師偏在の状況把握に使える。

これらを一件ずつ手作業で調べるとかなりの時間がかかりますが、会社名を入力するだけで公開情報を横断し、経営課題・提案システム・ROI・想定反論まで出典付きで自動リサーチできるZEROSYSリサーチのようなツールを使えば、当たりをつける作業そのものを効率化できます。病院経営の課題は診療所・クリニックの経営課題6選や訪問看護ステーションの経営課題6選で扱った業種とも、診療報酬という公定価格ゆえの価格転嫁の難しさ・医師や看護師の人手不足という点で通じる部分がありますが、病床規模に応じた設備投資負担や地域医療構想への対応が求められる点は病院特有の特徴です。具体的な質問への落とし込み方は初回商談の質問リスト30選【業種別】で解説していますので、あわせて活用してください。

よくある質問

病院と診療所の経営課題は同じですか

いいえ、統計・法令上の区分が異なります。病院は医療法上、病床数20床以上の医療機関(全国8,060施設)を指し、無床〜19床が中心の一般診療所(105,207施設)とは別の統計系統で集計されます。東京商工リサーチの調査でも病院の営業赤字率61.0%は診療所の38.4%を大きく上回っており、病床・入院機能を抱える病院の方が固定費構造の重さゆえに経営の逆風をより強く受けている傾向があります。

病院の何割が赤字ですか

東京商工リサーチ「全国『病院経営』動向調査(2024年度)」によれば、2024年度の営業赤字病院は61.0%(前年54.8%から+6.2pt)で、過去20年で最も悪い水準です。全体の営業利益率は▲1.76%(前年▲1.07%)まで悪化し、債務超過病院も13.6%(前年比+3.7pt)に拡大しています。

公立病院の再編統合はどこまで進んでいますか

厚生労働省は2019年に、再編統合の検討が必要とされる公立・公的病院を約440病院公表し、2025年度末を対応目標としてきましたが、対応がどこまで進んでいるかという進捗の現状値は本記事執筆時点の一次情報では確認できておらず、要検証として扱っています。個別病院の状況は自治体発表や地域医療構想調整会議の資料で確認する必要があります。

病院の後継者不在率はどのくらいですか

帝国データバンクの調査では医療業全体の後継者不在率は61.8%ですが、これは病院・診療所・歯科を含む医療業全体の値で、病院固有の統計ではありません。病院単体の後継者不在率やM&A件数を示す一次データは今回確認できなかったため、参考値として扱う必要があります。一方で東京商工リサーチの調査では2024年に病院の倒産6件・休廃業17件が発生しており、負債総額は282億4,200万円(前年比+11.3%)、平均負債額は8億7,100万円に達しています。

まとめ

病院経営の課題は、①赤字構造の悪化(過去20年で最悪水準)②地域による経営格差③医師偏在と働き方改革対応コスト④地域医療構想による再編・統合圧力⑤後継者難と事業承継/M&A⑥建替え・設備投資の重さ、という6パターンが相互に絡み合う構造にあります。特に営業赤字病院61.0%・債務超過13.6%という直近の収益悪化データと、診療所(38.4%)を大きく上回る赤字率が同時に存在する点が、病院経営特有の切迫感を生んでいます。病院は病床数20床以上という医療法上の区分により診療所・クリニックとは統計・制度が別枠であるため、商談前リサーチでは病院と診療所を混同せず、医療情報ネットや公立病院の経営情報、地域医療構想調整会議の資料といった病院特有の公開情報源を確認することが有効です。個社の状況を決めつけず、一次情報で仮説を検証しながら商談準備を進めることが、決裁者に届く提案につながります。